第三十三話
「まさか!!」
その人物が手にしていたのは、ナノマシンの制御装置だった。
「おやめなさい、こんな勝負など、あって良いわけがありませんわ!!」
ミスティは、試合を止めて一歩、客席へと踏み出そうとする。
「待てよ!!」
だが、止めたのは。
「どこに行こうって言うんだ?」
ハヤタだった。
「勝負は、まだ着いていないだろ?」
明らかに虚勢だった、それが見てわかるほどハヤタは衰弱していた。
「な、何を言ってますの?」
「終わってないだろうが!!」
そう叫び、ハヤタは飛び込む。
先ほどよりか、勢いがある攻撃だった。
しかし、ミスティにとっては他愛も無く。
「こんな状態で、私に勝てると思ってますの!!」
感情を逆撫で、彼女の身体の使い方で、軽々と体勢を崩されて一撃が決まった。
歓声が上がる。
だが、こんなポイントの入り方など、彼女は納得出来るわけがなく。
「貴方は、わたくしに侮辱をするつもり!?」
ミスティは片ひざを着いたハヤタに激昂するが、ハヤタは怯む事なく必死に叫ぶ。
「まだまだぁ!!」
その形相に逆にミスティが、怯んで戸惑う。
「な、何がそこまで…。
勝負は着いてますわ。
私はこんな勝負、続ける必要など…」
「お前がベリルにやった事は、こういう事だぞ!?」
ミスティは『はっ』として、ハヤタから視線を外した。
ハヤタはその視線の先を、追うほどの余裕はもうなかったが、ミスティに叫ぶ。
「何があの子は、スタミナもないだ。
目を張る技術ないだと?
こんな事を、アイツにさせておいて、よくもそんな事をほざけるな!?
いいか、こんな勝負、アイツも望んでねえんだよ!?
なんでかわかるか!?
アンタを尊敬してるからだ!!
最後まで『やめてくれ』って、言ってたぞ!?
こんな目にあってもな、アンタと練習が出来なくなる方をとるほどな!!
お前は!!
アイツの何を見てたんだ!!」
歓声が止まった。
周囲も、何かしらの異変に気づきだし、静かになった。
ハヤタはミスティの後ろを見た。
その見知らぬ男はまだニヤついていた。
おそらく、その手には忌々しい制御装置を握っているのだろう。
何とか取り上げてやりたかったが、もうハヤタも限界が来ていた。
「もう、ケリくらい、着けてくれよ…」
再度、ミスティを見ると、戸惑いが簡単にわかるほど動揺していたので、ハヤタは『ワザ』と…。
「らー!!」
奇声を上げ、最後の力で踏ん張り、『大きく構えて』飛び込んだ。
彼女は完全に反応が遅れていた。
彼が叫ばなければ、どうなっていたのだろう。
ポイントが加算された。
それとほぼ同時に試合終了のブザーが鳴った。
勝負はポイント差で、ミスティの勝利だった。
歓声が湧き上がるが、勝利者のミスティは呆然として、リッカに担ぎ込まれるハヤタの姿を見送る事しか出来なかった。




