第二十六話
リッカもベリルを気遣うのを見て、ミスティは言った。
「騒がしいですわね、劣等種。
何かあったのかしら?」
白々しさも感じない態度に、ハヤタは苛立って答えた。
「お前、コレを見て何とも思わないのかよ?」
明らか悪そうな悪そうなベリルを、何も知らないナタル達一同は、表情を曇らせるが、
…そんな中、ミスティだけが態度を変えずに答えた。
「あら、私に何か不義があったとでも?
ただ、呼び出しただけでございますわ」
「そうだ、ここはお前の様な者がでしゃばるな」
ミミミツは、そんな態度をとってハヤタを制そうとするが、ハヤタはミスティを睨んだまま言った。
「お前、ベリルを呼び出す時『どうやって』呼び出したのか、言って見ろよ?」
その一言に、リッカも直感したのか殺気立つ。
だが、ミスティはそんな殺気を気にすること無く、手に装置を見せて答えた。
「あら、劣等種のこの様な装置は、こういう意味があるのではなくて?」
「お前…」
「ああ、もうっ、さっきから貴方は、何なのですの?」
「申し訳ありません、ミスティさん、この劣等種は、これでも私の学校の生徒会の者でもあるのです。
この事は、なにとぞ、穏便な対応をお願いします」
ミミミツの機嫌取りが、あまりにも見え透いたので、ハヤタはさすがに呆れて答えた。
「ミミミツ、お前、例え相手が劣等種でも呼び出すために、制御装置でも使うのか?」
それにはさすがにミミミツは黙る。
「確かに、防犯のために、その装置があるのは俺でも知ってるよ。
それを使ったらな、身体中に激痛が走る事くらい、お前も話を聞いたくらい事があるだろ?」
「で、でもな、劣等種がしゃしゃり出るのは…」
「いいか、今、お前が庇ってるやつはな。
お前でも、やらない事を平然とやってのける。
そんなヤツなんだぞ!?」
劣等種に『ヤツ』と言われたのが、ミスティは気に入らなかったらしい。
「さっきから聞いていれば、劣等種のクセに随分な態度をとりますのね?
おおよそ、貴方もこの劣等種のように、『格上げ』目当てで活動に参加してるのが目に見えてますのよ?」
その言葉にベリルが首を振ろうとしていたのを、
「中には真面目にやってるヤツだっていたはずだ」
ハヤタは見た。
「なら、お前はどうやったら、その考えを改めるんだ?」
おかげで少し冷静になって、ミスティを見据えた。
「私から、一本でも取れたら、その考えを改めてやっても構いませんわ」
ミスティは高慢な態度で手にした剣で示しながら答えた。
「私も『真面目』にやっていますので、もっとも、無理な話でしょうけど?」
明らかな挑発にリッカは止めに入る。
「やめとけよ、ハヤタ」
「こっちだって、あんな事を言われて引き下がるつもりはねえよ」
「いいか、ミスティってのはな。
全国大会に出れるくらい強いんだよ。
もともと優良種というのは、自分の得意なフィールドで戦う事しかしないんだよ。
負けたら何を要求されるか…」
「侮らないでくださります?」
ミスティが言葉を遮る用に答えた。
「劣等種はそう言って、逃げ出すから困りますわ。
確かに、私は勝った時の事を言いませんでしたが、これは劣等種と優良種の格の違いを見せるだけの勝負。
それ以上でも、それ以下でもございませんわ!!」
「やめときなさい」
強めに言われ、とうとう止められない状況と察したミミミは、リッカを止めに入った。
ハヤタも察し出したのか、ミミミに頷いて、掛けてある剣をとる。
「ハヤタ様…」
「ナタルさん、もう止められません。
こうなったら、状況に任せるしか…」
ミミミツはそう言って、ナタルを落ち着かせ自身も見守るのに…。
決め込んだのは。
ハヤタごときが太刀打ち出来る相手ではないとタカをくくって…。
恥を掻くがいい…。
そんな算段が隠しきれないのだから、何とも汚い顔をしていた。
それを察したハヤタと妹は渋い顔をしていたが、ハヤタは開始線に立って剣を両手に構えた。
「劣等種は構えも知らないのかしら?」
対し片手で構えたミスティはあざ笑うが、ハヤタは受け流すように答えた。
「悪いな、お前の競技も知らない劣等種なんでね」
強がりと踏んだのか、ミスティは余裕が出来たのだろう。
周囲に人が集まり出したのをみて、見せしめにもなるからこそ、勝負に受けて立つ。
「格の違い、教えてあげますわ」
余裕で勝つつもりでいた。
のだが、
ハヤタの構えを見て、ふとミスティが感じたのは、
『随分と慣れた構え』
だった。
「めー!!」
奇声にも驚いたのもあるが、もう遅い。
パシーン。
面あり一本、ハヤタは剣道経験者だった。
ハヤタはルールは知らない、だが結果は、この予想外の展開に表していた。
そして、唖然とするミスティにハヤタは言った。
「この程度で、全国大会に出場出来るんだったら、中学の時に地区予選一回戦敗退の俺は何なんだろうな?」
それが火に油を注いだのは、言うまでもなかった。




