第二十四話
「リッカ、コイツ誰?」
見る限りだと、リッカと旧知の仲らしく、この褐色少女の視線がリッカに『紹介しろ』と促した。
「コバヤシ・ハヤタ。
私たちと同級で、二級劣等種だ」
すると少女はじっと見るので、一旦、視線が合うと、他には、ちょっと突き出した唇が特徴だった。
「よろしくな」
彼女に挨拶すると、視線をそらして、
「ベ、ベリル・マー二…」
少し照れながら答えた、どうやら人見知りする性格らしい。
「ねえ、リッカ、もしかしてコイツが前に言ってた変わり者?」
そして、失礼な言い方をするのも性格らしい。
つい、ハヤタは不機嫌そうにリッカを見るが、当のリッカはにやにやして答えた。
「ああ、あのクオウが認めるほどの、変わりモンだ」
「クオウが…」
ベリルが驚き、ハヤタをまじまじと見るが、ハヤタは少し気づきながら驚く。
「あの人、星を飛び越えても、悪名高いのか?」
ベリルが頷いて話す。
「クオウが殴り合いで、打ち負けたトコロ、見たことが無い」
ハヤタはいつぞやの様に、
「あのな、アレはスポーツだぞ?」
と説明するが、
「いじめを行うヤツは、大体、そんな言い訳をする」
どこでもマイナースポーツへの理解は難しく、ベリルも理解されてないようだった。
「でも、お前はそんなヤツらを手なづけてるじゃねえか?」
「リッカ、そんなんじゃねえよ。
隣人同士、それなりの付き合いをしてるだけだ」
「『それなり』で、学費を全額負担してくれるかよ?」
「それはありがたかったけどさ…」
リッカにとって、この解答は、笑いぐさだった。
「それが変わり者なんだよ。
普通は、
『俺は、クオウの知り合いだ』
とか、
『自分が酷い目に合えば、クオウだけじゃなく、数十人が俺を助けてくれる』
てな感じでな、権力みないなモンを自慢するように出来てんだよ。
一回くらい、そんな事をしてくるかなと思ったんだけどな。
してこなかっただろ?
それを変わり者って、言うんだよ」
「そんなモン、自慢になるか。
事あることに、呼び出すなんて事をしてみろ。
そういうのを、格好悪いって言うんだよ」
それを聞いた二人は、
「……」
黙っていた。
「な、変わり者だろ?」
「うん、変わり者だ?」
「うん、キミたちは失礼だな」
おかげでハヤタは機嫌悪く、作業を再開するので没頭する事もあって、昼前には、その作業は大体片付いていた。
「リッカ、これで終わりか?」
「うん、まあな」
「これから、どうするんだ?」
「夕方まで、ミミミツ達を待つだけだな?」
リッカの返答に、ベリルも頷く。
「待つって、ここで?」
頷く二人。
「昼までだろ?」
「あまり、外部の生徒がウロウロするのは、良くないだろ?」
と、軽い調子で、頷く二人。
「昼飯は?」
「ランチの注文は、済ませている」
と、頷く二人を見て、ハヤタは素直に答えた。
「えっ、軟禁?」
「言うなし…」
やっぱり、その点は自覚があったらしく、リッカはイラつきながら、自分のカバンから何やらを取り出した。
それがお菓子だと、ハヤタは反応が遅れながら言った。
「おいおい、こんなトコロで、食い物を出すなよ」
「うるせえな、小腹が空いたんだよ。
ハヤタ、お前、あたしらにお茶を用意しろよ」
「なんで、俺がお前の茶を用意しなきゃならん?」
それにはリッカが『にやついて』答えた。
「こういう時が、お前のナノマシンの出番なんだよ」
「あのな、俺のナノマシンの促進機能は『料理』であってだな。
『お茶の煎れ方』なんて…」
その言うとおり、ハヤタの生涯に、大げさかも知れないが、お茶を煎れる事はした事が無い。
しかし、そのナノマシンは、その『単語』に反応して脳裏に経験のした事の無い、作り方、礼儀、礼節が脳裏をよぎった。
「で、出来るのか、俺に…」
「はよ、煎れろや」
リッカはハヤタをからかいながら、ベリルに視線を向けた。
「べ、ベリル!?」
だが、ベリルがうずくまっていた。
「おい、どうした!?」
「わかんねえよ。
おい、しっかりしろ、ベリル!?」
身体を揺さぶるが、ベリルの脂汗を掻いた表情を見て、さらに動揺が広がっていくので、
「ちょっと、先生を探してくる」
「おい、勝手にウロウロするのは…」
「言ってる場合か!?」
そう言って、ハヤタは教室のドアを開けた。




