第二十三話
そして、週末…。
「さすがは劣等種だな…」
緊張するハヤタを、ミミミツは卑下した視線を浴びせながら言うが、ハヤタにとっては初めての宇宙船なのだから、無理も無い。
地球人、当然、こういう場合、キョロキョロする。
「ハヤタ様、何だか可愛いです」
そのナタルの言葉に、顔が真っ赤になってようやく平静を取り戻す。
「仕方ないだろう。
俺は飛行機ですら、修学旅行で一回しか、乗った事がないんだ」
するとミミミはキョトンとして答える。
「飛行機、そんなのいつでも乗れるでしょう?」
大きな体格のための特別シートに乗ったリッカも答えた。
「私も仕事で、週末に乗った事があるぞ?」
そう言われて失礼だろうが、ハヤタはリッカに驚いていると、余計にミミミを呆れさせる。
「さすがは劣等種ね…」
その仕草は兄に似ていたが、ハヤタには、その言葉は届くことは無かった。
「おっ」
空を飛び、
「おお…」
雲を抜け、
「おおお…」
空が完全に夜になり。
つまり、宇宙に出たのだから。
そして、ハヤタは初めて宇宙から地球を眺めた宇宙飛行士の様に、
「この事ばかりは、地球が滅んでよかったと思う」
自然と言葉が漏れた。
「不謹慎すぎるわ」
さらに呆れるミミミだが、ハヤタは窓の景色を見る事に没頭していたので聞いてみた。
「星空なんて、そこまで珍しいモノでもないでしょう?」
「そりゃ、珍しくもないけど、別の角度から星空みる機会なんてないからな。
北極星を探して見たけど、ないもんだな?」
「それは私たちの惑星が、自転性がある惑星だからよ。
当然、宇宙に上がれば引力も無くなるから…」
途中で言葉を詰まらせたのは、自分も親に似たような質問をした事があったからだった。
彼女の場合『星座がどこにあって、どうして星座が消えてしまうのか?』という質問だったが…。
「どうした?」
「…とことんアンタが劣等種だって思っただけよ」
「しょうがないだろ?」
周囲の客も北極星を探しているのか、軽くキョロキョロするのを眺めていると、ナタルは何かに気づいた様に答えた。
「あ、ハヤタ様、もう少しで到着です」
「えっ、あっ、えっ?
そうなのか?」
感覚的に一時間足らずだった。
ハヤタにしても、曖昧な知識ではあるが、月に向かうのは一日では済まないと知っていたので、その余りにも早い到着に驚いていた。
それを見てミミミは呆れて言った。
「さすが劣等種ね…」
ちなみにこの時点でようやく呆れ方が、兄に似ている事にハヤタは気がついたが、
「ハヤタ様、ここからバス移動です」
ナタルが手を引っ張ってくれなければ、軽々と迷子になるほどテンションが上がっていた。
「ハヤタ様、ネクタイが曲がってます」
どこをどうやって、その目的地へと着いたのやら、半ば記憶がなかった。
ハヤタが何とか冷静を保てたのは、周辺の風景があまり変わりが無いからだった。
ミミミツが先立って、そこの例の生徒会長に挨拶をしていたのは幸いだった。
しかし、ハヤタは何となく察していたトコロもあった。
「やっぱり、こうなるんだよな…」
「なんだよ、予想出来ただろ?」
一変して、ハヤタはうんざりとしながら、周囲を眺める事が出来た。
そこにはナタル達の姿はいない。
つまり自分たちは別室に通され案内されていたのである。
「どおりでリッカも、俺やリッカも参加出来るワケだと思った」
「お前な、ナタルはそう考えてはないけど、ミミミツはそうは考えてない事くらい目に見えていただろう?」
リッカはむかつきながら、作業を始めるので、ハヤタも続いた。
配布用のプリントの整理、経費の計算…。
自分たちのする仕事は、いつもとは代わりはしなかった。
のだが…。
「ベリル、これで良いか?」
リッカは、もう一方に視線を向けていた。
「うん、良い仕事をしてる」
褐色肌で自分たちより…。
「なんだ?」
「うん、キミと比べてはならんね」
まあ、ナタルやミミミほど低い身長の…。
「同級生だよな?」
ハヤタが思わず、リッカに聞いてしまうほどの少女が、そこにいた。




