第二話
転校独特、当たり前な注目を一身に浴びた、その休憩時間、話しかけて来た人は当然な話を切り出した。
「どうして、お前の星は滅んだの?」
「ああ、核戦争らしい…」
「随分と曖昧な言い方してるな。
てか、カクって何?」
「簡単に言ったら、凄い威力の爆弾かな。
それを各国が防衛のために持ってたんだけど…。
正直に言えば、どうして滅んだのかは、わかってないんだ」
自分にしても、とんでもない話をしていると思っている。
だが、『地球が滅んだ事は事実』なので、ハヤタにしてもこう言うしかないのが事実だった。
「えっ、何でだよ。
こういうのって、聞けるんじゃ無いのか?」
「いやさ、その辺は先生が言ってた。
『貴方の精神的な負担を考えれば、軽々と聞いて良いモノじゃ無い』ってね。
自分自身、今の状態は映画とか、物語で聞き及んだ『言葉』で傷口にフタを閉めている状態らしいから、自然と言葉が曖昧になるらしい」
そう軽く言うが、コレには実感があった。
その当時の担当女医が、自分の住んでいる場所を聞くと何やら検索を始め、荒廃した土地の映像を見せられた事がある。
最初は見たことがない映像だったが、人間、住んだ場所というのは原型を意外と留めていて…。
心臓の音が、今まで感じた事がないほど聞こえ、気絶しそうになったのを今でも覚えているからだ。
しかし、このサル顔の男は、軽い態度で返すのだ。
「ふうん、そっか~。
まあ、オレの惑星も、そんな感じで滅んだらしいからな」
自分の惑星が滅んだ事を普段通りに話していた。
惑星が滅ぶのは『どこにでもある話』らしい。
自分だって最初は、信じられなかった。
ニュースで『不穏な雰囲気』があったとはいえ、今、しかも、滅ぼうとする瞬間の実感なんて。
一般家庭に育った、一般人に何が出来るというのだろう。
自分に至っては気がついた時にはほぼ昏睡状態で、虫の息だった事だけが覚えている程度なのだ。
その中で、この惑星トランス=ハル。
地球を観察していた部隊に助けられ。
『見ろ、地球が滅ぶ』
そんな台詞の中、半分気絶している自分が見た地球は明らかに『青く』無かった。
……。
『めまい』で済んだ。
こういう回想をすると『痛み』が走るが、自分を担当していた先ほどの女医に告げられた言葉で、締めくくる。
「もうオレ等の星は、生命が活動出来る環境ではないらしい」
「ああ、そうだ、オレ、名前言ってなかったな。
パンチ。
パンチ・ザ・ルーム。
よろしくな、コバヤシ・ハヤタ」
「ああ、よろしく。
ハヤタで呼び捨てして良いよ」
「おう、じゃあ、ハヤタ。
他にも地球の人っているのか?」
「昏睡状態が長かったらしいから詳しくは分からないけど、聞く限り100人はいるらしい」
「知り合いとかいたの?」
パンチの指摘は、自分なりに調べて見たが、
「いなかった」
自分の虚しい結果だけを伝えると、このパンチは軽く答えた。
「まあ、劣等種同士さ。
上手くやって行こうぜ」
そう言われたのが、虚しさが軽くなった。
「劣等種か…」
知らない人が聞けば、さぞ気に障るだろうが、これはどうにもならない。
同じ惑星に住む者同士が、原因を作り、住んでいる惑星を滅ぼしたのだ。
『劣等』と呼ばれるのは、当たり前だろう。
そして、その惑星の住民を劣等種。
自分の場合は、第二級劣等種。
そう名付けられ、この惑星で生活を許可されているのだ。
「パンチも、そうなの?」
「うん、オレの場合は、もう随分と時間は経ってるからね。
曾、曾、曾、曾じいちゃんくらい前かな?」
「ふ~ん、やっぱり普通なんだな。
惑星が滅ぶって…」
自分で言ってて、莫大すぎる会話に頭が追いつかなくなりそうになるが、その上で聞いてみたい事もあった。
「あのさ、オレのとこの惑星が滅んで、次くらいに他の惑星も滅んだって聞いたけど、何か聞いた事は無いかな?」
「いや、それは悪いけどわかんねえ。
オレ、あんまりニュースとか見ないからさ。
て、お前のトコは、そこまで進んでいたのかよ?」
そう聞き返して来たが、それ以上に、人だかりが出来て来たので、注目は自然とそっちに言っていた。
「おい、ハヤタ、何だあれ?」