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新たな大地に花束を  作者: 高速左フック
第二章 ハヤタ学園で何をする?
19/87

新十九話


 「正直な話、転入時にその雰囲気は感じてたよ。


 確信に至ったのは、今日なんだけど」


 そのハヤタの態度を見て、オオカミ男たちの一人がなんとなく聞く。


 「もしかして、ハヤタ、怒ってるのか?」


 「怒ってない…。


 確かに今日は、危ない目にあいそうになったからな」


 そう言った途端、オオカミ男達の目つきが変わったので、ハヤタは慌てて言った。


 「あいそうになっただけ!!


 でも、こういう感じで過保護になるなって事だよ!!」


 「カホゴ?」


 「クオウさんでもさ、何かする度に、人から色々言われるのは嫌だろ?」


 「確かにそうだけどよ…。


 だが、オレ等はお前を評価してるぞ?」


 「それで事あるごとに、クオウさんの名前を出して、虎の威を借りるのは良くない」


 「俺はオオカミだが?」


 「モノの例えだよ。


 強力な後ろ盾を利用して、威張ることを言うんだ。


 俺は、今まさに、そういう状態なんだよ。


 そんなのクオウさんにしても、みんなにしても嫌だろ?」


 ハヤタの指摘に、クオウはなるほどと答えた。


 「つまり、やりすぎたと言う事か?」


 「まあ、実際、ああいう事もあったからな。


 十分な効果はあったと思うよ。


 でも、ずっとこんな事を続けてたら、効果も薄くなると思うんだ。


 だから、もうみんなも、やらないでほしい」


 ハヤタはコレで納得するか、疑問にも思いもしたが、


 「まあ、ハヤタがそういうなら…なあ…?」


 オオカミ男達が仲間同士、顔を見合わせて頷いたのでハヤタは頷いて答えた。


 「じゃあ、ご飯にしますか?」


 「もう怒って無いのか?」


 「もうやった事だからな。


 みんなだって、俺の事を思ってやったってのはわかったからさ。


 もう立っていいよ」


 「やった!!」


 現金な態度だと思いもしたが、オオカミ男達は構わず聞いて来た。


 「ハヤタ、今日のご飯は何だ?」


 「イモです」


 「また、イモかよ!!」


 ブーイングしながら、ハヤタにオオカミ男の一人が聞いて来た。


 「昨日、肉を送っただろう。


 あれ、どうしたんだよ!?」


 「それはその肉は使うよ。


 けどさ、その肉よりイモの方が圧倒的に多くてな…」


 「誰だよ、イモだけ大量に送るヤツは?」


 ハヤタは、その意見に黙って視線を送ると、ちょうど『くい~』と首を曲げるオオカミがいた。


 「お頭~!!」


 「うるせえ!!


 ハヤタの作ったモンなら、何でもうめえんだよ!!


 嫌なら、食うな!!」


 「え~、それはないですよ~」



 コバヤシ・ハヤタという男は、クオウを手なづけているだけでなく、その血の気の多い種族を統括しているらしい。



 ちなみにこれはハヤタに関して『噂』である。


 当然、それはあくまで『噂』である。


 疑われもする。


 だからこそ、先ほどの『根回し』というのは、広まりもすれば、確かめもするモノもいた。


 それは掃除したときに出会った、カラス男達だった。


 彼は種族上の関係、視力はとてもよかった。


 『あいそうになっただけ!!


 でも、こういう感じで過保護になるなって事だよ!!』


 会話の内容は聞こえはしなかったが、あのオオカミ男達を怒鳴りつけ…。


 『誰だよ、イモだけ大量に送るヤツは?』


 その意見に黙って、ハヤタは黙ってクオウを睨み付ける様を…。


 会話無しの動作は、彼らに、


 「マジや、あの人、マジや…」


 「噂、ホンマやった!!」


 あらぬ方向に向いたのは、ハヤタは知るよしもなかった。



 次の日の早朝…。


 

 ハヤタ達は、校門の前に集まっていた。


 どうやら、挨拶運動のためなのだが…。


 「生徒会長、おはようございます」


 そう挨拶を受けるのはミミミツやミミミ、ナタルだけ、ハヤタやリッカ、二級劣等種以下には一切の挨拶はない。


 ようするに見せつけである。


 ミミミツは『どうだ』と嫌味たらしく見ている。


 そんな中…。


 「おはようございます、ハヤタさん!!」


 『ビシッ』と身体が90度に折り曲げすぎる挨拶をする生徒がいた。


 ハヤタにしても挨拶をされるとは思いもしなかったので驚いていると、その人物は顔を上げた。


 「ああ、昨日の…」


 カラス男だった。


 「本日は挨拶まわりだと聞いたので、あの、代表して来ました。


 あの時は、ホントにすいませんでした」


 45(ビシッ)、90(ビシッ)と頭を下げて、そのまま去って行くので、ハヤタは戸惑うしかなかった。


 「おい、校門はこっちだろ?」


 「いえ、自分、三級なので、別校門なので、失礼します!!」


 あまりの態度に、周囲がざわめき出したが、それが皮切りだった。


 「おはようございます!!」


 同じようにハヤタに挨拶をしてくる人が、続出してきたのだ。


 「凄いです、ほとんどの方が、ハヤタ様に、ご挨拶をしてます」


 ナタルは感心するが、ほとんどがガラの悪い連中がばかりである。


 だが次々に挨拶を始めるので、明らかに劣等種劣等種でない生徒たちも雰囲気で挨拶をし始めていた。


 「そ、そうか…?」


 ハヤタは『小細工』はでは無いかと疑いもしたが、昨日の手前なので戸惑うしかなかった。


 「お、おのれ、劣等種が・・・」


 ミミミツが悔しがるように、これがハヤタが生徒会への正式入会になるきっかけとなったのは言うまでも無い。


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