第十四話
「当然だ。
特に劣等種なりたてのヤツらというのは、格上げにやっきになる傾向があるのでな。
だからこそ、立場の確立が必要不可欠なのだ」
さすがにここまで毛嫌いぶりを発揮されたので、ハヤタは肩を竦めて答えた。
「あのな、俺はそんなモン、興味がない」
「ふん、口先だけではどうとでも言える。
現にお前は、こんな食事会を開いているではないか?」
『考えている事くらい、お見通しだ』と言わんばかりの態度だったが…。
「あの、これは私がハヤタ様をお誘いしたのですが?」
「ナタルさん、何も、こんな劣等種を…」
「なんでしょう?」
ナタルのにこやかな天然が、この男を黙らせるには十分だったので、ハヤタは聞いた。
「ナタル、聞きたいけどさ。
どうして、こんな事を言われてる俺に、生徒会に入らないかと誘おうと思ったんだ?」
「それはですね…」
ナタルの話に、先ほどの男が割って入った。
「お前が、この学校を変える人材だからだそうだ」
そして、嫌味たらしくこうも言う。
「まあ、お前が、そんな大層なヤツには見えんがな。
見るからに品性もなければ、礼儀もなってないじゃないか?」
「そうか?
確かに俺は、劣等種と呼ばれたてで、礼儀や品性がなってないかも知れんがな。
礼儀がなってないのは、お前も同じ事が言えるだろう?」
「私がか?
は、それはおかしい事を言ってくれるな。
一体、私の『どこが』品性もないのか『どこが』礼儀がなっていないのか、言って見るが良い劣等種?」
張り合うつもりは無いが、ハヤタは答えた。
「お前、名前、なんて言うんだ?
俺の名前は知ってるみたいだけど、お前の名前、俺、知らないんだよな?
お前がどんな人物か知らないけど、普通、自己紹介はするモンだろ。
文化保有種?」
『ぷっ』
どこからか噴き出すような声が聞こえるほどの間があったので、ハヤタはダメ押す事にする。
「礼儀うんぬんの前に、こういう事って大事じゃないのか?」
見る見る、この男の顔が真っ赤になり…。
「し、失礼する!!」
その場を、走り去って行くのを見送って、ハヤタは悪態をつく。
「そして、廊下を走るなという張り紙も読めないとわな」
それに微笑むナタルに、ハヤタはナタルに顔を向ける。
「まあ、ナタル、どこに何の教室があるのかも、知らないのが現状なんだ。
そんな俺が、生徒会に相応しいと思うか?」
「でしたら、ご案内いたします」
「い、いや、そういう意味じゃないくてだな」
困るハヤタに彼女の視力を補う機械が『キュルル…』と見つめて、ナタルは答えた。
「はい、何でしょう?」
天然の意図を理解していない彼女に、ハヤタの先ほどの悪態も通用するワケがなかった。
「…とりあえずメシを食った後、案内してくれ」
……。
「それで生徒会にも、入る事になった。
て、ハヤタ君、アナタね…」
そして、ハヤタが家に帰り、そういう事を話していると同棲中のヒルデに呆れられていた。
「べ、別に衝動的に請け負ったワケじゃないぞ」
「言っておくけど、アナタ、数ヶ月前まで入院してた身なのよ。
文化を理解して切れてない事、忘れて無いでしょうね?」
「おいおい」
その呆れたヒルデをなだめるのは、ハヤタの作ったフライドポテトを摘まむクオウだった。
「今、言っただろう衝動的じゃないって。
言い訳くらい、聞いてみたらどうだ?」
そうはクオウは言うが、気を使った言葉が見つからなかったからだった。
おかげでハヤタの反応を待つことになった。
「予想以上に酷かった…からだよ…」
ハヤタの落胆に、クオウを含める大人二人組は理由を聞くことになる。
「酷いとは?」