第十三話
「確かに周辺の人に悪さをしているのでしたら、今日中に帰れるのはおかしいです」
「うん、確かに『殴り合い』をしている事は変わりないから、事情聴取されてるって形なんだろうな。
周囲に理解されるのには、時間が掛かるって事だな。
でも、世界はスポーツで一つになれる」
「何だ、それ?」
パンチはハヤタのフレーズに、反応する。
「俺の惑星の言葉だよ。
正確なフレーズは、忘れたけどさ。
ああいう、スポーツをしているクオウさん達を見てると、そんな気がするんだよ」
そう言うと、パンチも興味を持ったのか、
「俺、一度、見てみようかな?」
そんな事を言って、昼飯を済ませていた。
「まあ、一緒に逮捕されないように、気をつけろよ」
「げ、何で?」
「言っただろうが『理解されてない』って、だから逮捕ってのも、まとめてやるからな?
ホイッスルで知らされて『逃げろ』と言われたのは、さすがに焦ったぞ」
「やっぱり、野蛮じゃない?」
ミミミの発言に、周囲を笑わせていたが、彼女は笑う事もなく言う。
「ナタル、こんな野蛮人を生徒会に呼ぶのは、やめておいた方が良いわよ?」
その『聞き慣れた』言葉に、ハヤタは反応する。
「何だって?」
「はい、生徒会です。
ハヤタ様も、入って見てはと思いまして、誘いに来ました」
「おお、ハヤタ、生徒会やるなんて、凄えじゃねえか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、話が急すぎて、ワケがわからない」
「学校の生活を送る上で、問題点や課題などを改善したり、または解決する事を目的とする学校組織でございます」
「いや、俺のトコロもあったから、それは知ってるけど…。
ナタル、俺に出来ると思ってるのか?」
「はい」
「即答かい」
ハヤタは頭を掻いて、さらに言う。
「そもそも俺は、二級劣等種だぞ。
色々、マズいんじゃないのか?」
「いいえ、二級の方も、三級の方もいらっしゃいますから、構いません」
そんなナタルの笑顔も、やはりハヤタには断るのにもワケがある。
「だが、ミミミも言ってるのはな…」
「ミミミって、言うな!!」
「…この学校に来て、実質一日しか経ってない男に出来るワケがないだろう?」
ミミミも、その意見に頷き、
「その通りだ」
と言ったのは、彼女じゃ無い。
「お兄様!?」
ハヤタはミミミの兄と名乗る人物とは、初対面だったが。
「……」
パンチが顔をしかめるように、周囲の反応で何となくではあるが、その人物の性格が窺えた。
「ナタルさん、こんな劣等種にだまされる事はありません」
思わずハヤタは、その男を睨んで聞いた。
「どういう事だ?」
「『生徒会に入らない』とは、劣等種にしては、殊勝な心がけだ。
だが、コバヤシ・ハヤタ、お前の狙いはそこだ。
そうやって、引き延ばし続けて、私たちに近づく魂胆なのだろう?」
「確か、格上げするチャンスだったか?」
「ふん、その言葉を口に出来るという事は、それが狙いである証拠だ」
ミミミも、その事は気にはなっていたのか、二人の動向を見ていた。
「……」
周囲も先ほどの言葉に不快感を覚えていたので、この場が騒然とし出していた。
「……」
そんな中、明らかに違っていたのは…。
「なあ、ナタル、そういう事になるのか?」
「はい、そういう事になるんです」
ハヤタと、ナタルだった。
そのやりとりのおかげか、周囲の場は静まっていった。
「昔のナタルを見たことがあるから、そこまで気にはしなかったけどな。
やっぱり『格上げ』って、上のヤツらから見ると、ここまで神経質になるモンなんだな?」