第十二話
「言っておくが、殴り合いって言ってるけど、あれはスポーツだからな」
「スポーツだって?」
「こっちは見たことが、あるから言うけどな。
ボールも存在するし、得点だって存在するからな?」
ハヤタは机の上に、コートを描き説明を始め、まとめた言い方をした。
「まあ、俗に言う。
ラグビーみたいなスポーツなんだよ」
「お前の惑星の言い方をすんなよ。
わかんねえっての。
でもよ、実際、殴ったり蹴ったりで、救急車がでるほどのヤバい事になってるじゃねえか?」
ラインを越えたら一点、得点が入ると説明していると、パンチがそう聞くのも無理も無い…。
おそらくパンチは自分と同じイメージで、競技を浮かび上がってると思う。
そう、確かにラグビー?
ボールを持った相手に、守備側のクオウはタックル。
だと思うだろう。
さあ、クオウさんは…。
相手に見事なラリアットを、顔面にくれていますね。
いや、実際は殴り合っているのだから、
「スポーツなら、審判がいるだろ?」
そんなごもっともな意見が飛ぶ。
「それは何人か、審判はいるよ。
じゃないと、試合としても成立しないからな」
「殴られてて明らかに流血してるじゃねえか、反則じゃねえのか?」
「だから、一対一の殴り合いはルールの内なんだよ。
ちなみに二対一で殴り合うと、反則になって、二人がかりの方が退場になる」
しかし、説明をするがミミミとパンチは、当然わからないまでもない表情をするので、文化の違いを感じながらハヤタは付け足した。
「まあ、あの後、頭から血を流しながら帰って来たりするからな。
俺も最初、そんな事も知らないで、夕方に出会って『おうっ』て挨拶されて、どん引いた事もある」
そんな中、ナタルが聞いて来た。
「ですが、どうして、そんな危険なスポーツをしてるのですか?」
「うん、クオウさんが言うには、自分の惑星にあったスポーツと、他の惑星にも、似たようなスポーツがあったそうなんだ」
「そういえばハヤタ様も、さっき『らぐびぃ』と言ってましたね。
やはり似てるのですか?」
「うん、似てる。
まあ、当初、クオウさん達もそれなりにストレスが溜まっていたらしくてな。
パンチ達が言ってたように、街中で暴力沙汰もあったのも事実なんだ…。
『それじゃ、いかん』ってなって、種族間で話し合って、生まれた競技ってのが…。
アレらしい」
「ハヤタ様もやるのですか?」
「いや、アレは勘弁願いたいな。
足手まといになるどころか、相手にもならん」
ちなみにハヤタが見ていた、試合とは凄惨なモノで、
『こちら側』の言い方をすれば…。
ウェアウルフとオークの殴り合いなのだから、人間が手を出して良いモノでもない。
すると、ミミミが呆れながら言った。
「野蛮。
所詮、劣等種と言ったトコロね?」
「だが、そのおかげで、暴力沙汰で警察にやっかいになる事は減ったって、クオウさんから聞いてるぞ?」
「逮捕者が出てるのには変わりがないわ。
そんな野蛮な隣人が、学費を出すなんて、怪しいモノね」
それにはハヤタは、ため息を付いて答えた。
「じゃあ、なんで毎回、逮捕されているのにも関わらず。
数時間の事情聴取で、釈放されてるんだ?」
それにはミミミは答える事が、出来なかった様子なので、ハヤタは続けた。
「その辺、警察関係者は、理解してるんだよ」