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海と私の御伽噺  作者: 花冷え
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第2話 儀式

新幹線で西へ向かうこと数時間。更に公共交通機関を乗り継ぎ、到着したのは、海!...に囲まれた素敵な島。凪いだ海面に時折聞こえる穏やかな波の音。心が洗われるとは正にこの事だろう。私が身近に見る煩くて汚い海とは正反対である。



「本当に綺麗な海ねぇ~。私も見とれちゃうわ。」


私と一緒に立ち止まって海を眺めるお母さん。他のツアー客より遅れている私を急かすことなく、一緒にいてくれる優しい母だ。



「うん、ホントに綺麗。来れてよかったよ、この島に。母さん、ありがと。」


ちょっと照れ臭くて、はにかむような笑顔になる。でも、気持ちを素直に伝えるのは大切だと思う。特に、大好きな人には。



私達家族はホテルが主催する島内自然体験ツアーに参加していた。虫が大の苦手、というか最早ヘイトしている私としては正直参加したくなかったのだが、これもいい体験、と言う両親についていく形で不本意ながら参加することになった。


しかし、今は参加して良かったと思っていた。虫がいなかったわけではないが、森よりは海に関する自然体験が多く、普段は見ることの出来ない美しい海を全身で堪能することが出来たからだ。現在は最後の自然体験ポイントに向けて、島の外周を移動している。



っと、立ち止まる。目の前にツアー参加者の人だかりがあった。どうやらここが体験ポイントの終着点のようだ。人だかりの中心には木の(ろう)、と言っていいのだろうか。高さ2mほどの空間が木の幹に覆われるように存在していた。その周りには今日一日島内を案内してくれた地元の方々。表情がわからない程しわくちゃな顔の老婆と幾人かの少女、同年代だろう、はこの島の伝統衣装らしき草を編んで作ったような服を着ている。


すると突然、しわくちゃな顔の老婆が声を張り上げた。

「今から儀式を行う」


は?と思った私は悪くない。儀式と言われて、はいそうですか。と思える人の方が少ないだろう。だから、は?という気持ちが表情に出てしまったのもご愛嬌だ。



老婆は話し続ける。要約すると、4年に一度、選ばれた13から16歳の少女一人が海から力の一部を授かるらしい。海?sea?...その海で間違いないようだ。馬鹿馬鹿しい、とまでは言わないが、あまりその手の話を信じていないのは確かだ。



ムムム、と老婆が難しい顔をする。やがて、クワッと目を見開いて言った。


「今回母なる海に選ばれたのはお前だっ!」

大勢の視線が私に突き刺さる。老婆が私を指差しているからだ。そして驚くことに、私の右半身がドーム状の水、今日一日眺めていた海と同じ色だ、に覆われていた。



「えっ、はあ?」おい、あの民族衣装着た女の子達から選ばれるんじゃんねえの?何で俺なんだよ!


「今お前には、母なる海と意識の一部を共有する権利が与えらている。だが、儀式を行わなければ意識の共有は起きない。儀式を行って母なる海と意識を共有し、力を授かるか、今回の儀式を見送り、何も得ずに帰るか。お前は選ぶことができる。」



うぅん?めっちゃお前呼ばわりされてますねって、そんなことはどうでもいい。現状私は謎の儀式の主役となるか否かの選択を迫られているらしい。大勢のツアー参加者の好奇の視線を浴びながら。両親は参加を勧める。一生に一度しかないかもよ、と言われた。確かに折角“選ばれて”得た権利はそう容易く手放したくない。私は謎の儀式を行うことを承諾した。



木の洞のなかで膝立ちになり、海の方向に向かって手を合わせる。頭を垂れろと言われたので、その通りにする。島の端の岬にポツンとある洞。その中にいる私は海に包まれている状態、と言えるかもしれない。



老婆が呪文のようなものを唱え始めた。あーあ、こーゆーの信じらんねー。胡散臭くなって、下を向いていた顔を少し持ち上げた。



輝く少年?ヤバイやつじゃん。目、合っちゃったよ。それにしても美少年。よく見ると30センチ程浮いているのだが、それに気づくこともなく...。




ただ、欲しい、と思った。

一人称が“俺”の心の声も主人公の声です。わかりにくかったかもしれません。

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