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新たなる宇宙シリーズ

新・宇宙連邦

作者: 尚文産商堂

第3次大変動と呼ばれたあれから、3800年が過ぎた。

実際に体験した人も少なくって来たこのご時勢。ファイガン暦41452年。

ただ、人の寿命がコントロールできなくなり、この1000年で平均寿命は、約500歳短くなった。

それに反比例するように人口は果てしなく増えていった。同時に、元々の原住民は姿を消した。

現在、いわゆる混種と言われる新たなる種族が世界に満ちていた。

彼らの不可思議な能力は、4人に1人の割合で発現した。

連邦政府はその人口を重く見た。25%の人が、いわゆる魔法を使えるようになったのだ。

彼らは、それぞれの神から力を得ていたが、マギウス・レメゲトン神のみ、この時点ではその能力を継承させる相手を見つけてはいなかった。


しかし、その長年の沈黙を破り、ファイガン星北大陸中央ブロック、魔法省本部内部の魔法波観測室にて、それは観測された。


「すいません、室長。これ、なんだと思いますか?」

室員の一人が指差していたのは、今まで誰も見た事がない魔法波だった。

「これって、神の魔法波ではあるが…それにしても、範囲が広い…いや広すぎる…」

室長と呼ばれた男は、近くにあったメモ用紙に勢いよく、放り出されっぱなしのペンで書いた。

「すまんが、大臣に報告してくれ。この速度だと、1週間以内にこのファイガン星系に入る。それと、この周辺の星系に臨時退避情報。大臣に報告する席上で、この書類を渡してくれ」

「分かりました」

その書類には、赤々と「至急」「完全秘密」「命令書」と判が押されていた。


宇宙連邦が出来たのは、ファイガン暦37602年の時。

それから500年後までに、全ての原住民族は消滅し、さらに、センタープラネットが、宇宙連邦の首都に指定された年でもある。

その頃から、生れながら魔力を有する人が増え始た。

さらに、100年後までに、その人口は、全連邦国民の10分の1を突破。事態を重く見た連邦政府は、魔法省設立を発表。

それから300年後までに、魔力の暴走が相次いだ。

その結果、連邦政府はファイガン暦38502年に、魔法省の直轄教育機関として魔法使用者育成学校(魔法学校)を設立。

魔法使いと公称するためには、この学校を卒業する事が条件となった。

魔法学校には、さまざまな魔力の使い手がいた。

その中にも群を抜いて魔力が高かったのが、神の子達と呼ばれるようになった人たちだ。

彼らは、周囲に対し、神の魔法波と呼ばれる波動を放つ事が知られていた。

海の波と同じように、それはゆっくりと周りに影響を及ぼすのだった。

その力は、各神殿から出ているエネルギー波と同じスペクトルを持つ事が知られたのは、魔法学校で研究していた一人の学生の卒業論文だった。

彼は、魔法学校を最年少で卒業をしていた。

彼自身は既に死んでいるが、それでも、彼の偉業は永遠に人々の心に焼きついているだろう。

スペクトル分析さえすれば、どの神の力を持っているかが分かるようになったからだ。

感覚的には、元素のスペクトル分析と同じ物と思っていただきたい。

それを使う事によって、瞬時に神の名前が分かるようになった。

しかし、それですら分からない神の力と言うのは、今まで存在しなかった。


先ほどの書類を託された室員が、大臣の部屋をたたく。

「失礼します」

「ああ、待っていた。室長から話は先ほどもらっているよ。で、君はどう思う?」

「私個人の意見では、全ての神の母たる存在、マギウス・レメゲトン神の物と思われます」

「そうか…」

「あ、それと、これを渡して欲しいと頼まれております」

室員は、大臣に室長に頼まれた神を手渡しした。

「………」

大臣は、それに目を通すと、とある場所に電話をかけた。


「はい、第1銀河系中央災害対策室です」

「ああ、魔法省大臣だ。ファイガン星域及び周辺4光年以内にある全ての星系に、緊急避難情報を布告。謎の魔法波を観測、すぐに避難されたし」

「了解しました。観測地点はどこでしょうか?」

「ファイガン星域公転平面上ファイガン星基準点より、42度64分44秒09567角、0.54光年先にて、謎のエネルギーを観測、スペクトル分析機にも乗っていないエネルギー波にて、緊急避難情報の布告を要請」

「分かりました。では、宇宙連邦魔法省大臣令、謎の魔法波を観測、ファイガン星域、クルトロース星域、トンルガード星域、ワカイヤル星域に対し、緊急避難情報を布告、1週間後以内にファイガン星域にエネルギー波到達の予測。以上です」

瞬時に指定された星域にその情報が伝わり、それぞれの場所にいる魔法省の人たちが最初に動き出した。


それから1週間以内に、軍が動員されての避難作戦が開始され、魔法省関連の人のみがその場にいた。

「ファイガン星域、クルトロース星域、トンルガード星域、ワカイヤル星域、避難作戦終了です。エネルギー波はこれより19分後に到達予測。本惑星上については、影響不明。そもそも、神のエネルギーかも不明」

伝令が言った。

「なるほど、では、正しく謎のエネルギーと言う事だな」

魔法省魔法波特別研究班長の、カーパン・フランソアが言った。

首からは、円形をしたネックレスをかけている。

横には、副班長の、ファイガン・トルアライが立っていた。


ぴったり19分後。エネルギー波が、ファイガン星域を襲った。

光り輝く船のような形をしたエネルギーの集合体は、ファイガン星の地表面上で滞留した。

それは、魔法省の人がいるところだった。

「あなたは、誰ですか?」

カーパンがたずねた。その目線の先には、光り輝く階段から降りる、若い女性がいた。その人の横には、男の人もいた。

「私は、マギウス・レメゲトン。こちらの男性は、マギウス・ミヒャエル。私の夫です。私、マギウス・レメゲトンは、正真正銘の、全ての神の中の神、全ての善と悪の神、全ての物象の神ですが、私の夫は、私が最初に作った神です。彼は、元々一人で寂しく、粘土から彼を作りました。さて、私達は、二人で一人。このようにして二人同時に姿をあらわすのは初めての事で、あなた方はとても幸運です。さらに、私はこの子を連れてきました」

みると、二人の影で見えなかったのだが、子供が一人いた。

レメゲトンの両腕に抱かれて、今は眠っているように見えた。

「彼のことを、宜しく頼みます」

彼らは一礼して、去っていった。残された人々は、何が起こったか分からなかった。


数分の後、マギウス・レメゲトンが残した子供を誰が引き取るかで論議をしていた。

そして、カーパン・フランソアが、引き取り、養育する事に決まった。


それから1日の間、魔法波は残留していたが、それも霧が晴れるようにして消えた。

緊急避難情報は解除され、1週間もしないうちに元の生活に戻った。


それから、15年がたった。あの時に神から授けられた子供の他に、2人の娘を授かった。


「おにーちゃーん。はやくー、トイレから出てよー」

「もうちょっと待っとけよ。それぐらい出来るだろ?」

「だって、さっきからその答えばっかりだよ」

お兄ちゃんと呼ばれているのは、神から直接授かった子、カーパン・ミヒャエルだった。

それぞれの妹の名前は、フランシウムとアメリシウムと名づけられた。

13歳と12歳だ。

「ほらほら、早くなさい。今年からミヒャエルは魔法学校に入るんだから。ミヒャエルも早くトイレから出て来なさい。後がつっかえてるんだから」

そこまで言われて、ようやく出てきた。

「はーい」

嫌そうな声がした。

「さあ、早く朝ご飯食べて、支度しなさい。魔法学校は、基本的に制服はないけど、それでも、最初の日ぐらい何かビシッと決めないとね」

「別にそんなのいいよ〜。それに、そんな格好するんだったら、次の日からが大変なんだからさ」

「……それもそうね。ま、ミヒャエルの好きにしなさい」

その時、電話が鳴った。

「はい、カーパンです」

フランソアの夫である、カーパン・ネグレクトが電話に出た。

「ああ、それは…ええ……分かりました。では、今からそちらにうかがいます」

電話を切ると、ネグレクトは、大きなため息をついた。それを聞いて、直感的に何か良からぬ事がおきたというのがわかり、フランソアは、夫のそばに近寄った。

「ねえ、どうしたの?」

「自分が設計した水道管が破断したそうだ。これから現場を見に行く。息子と娘達をよろしく頼んだ」

「はいはい、分かってるわよ」

フランソアは、夫を見送ると、すぐに子供達を学校に行けるぐらいの準備をさせた。


数分後には、準備が終わり、家を出た。


ミヒャエルは、ジーパンに胸に校章のバッチを付けた、比較的長袖の服を着ていた。

「さあ、ここが明日から通う事になる、ファイガン星中央魔法学校よ」

各惑星には、中央魔法学校と呼ばれる学校が1づつあり、それを頂点として、魔法学校は、魔法学校、魔法学校分校と分かれていく。

魔法学校と分校は同等の魔力の人が入れるが、この中央魔法学校だけは、魔法省が定めた特定リストの中に入っていてなおかつ、一定以上の魔力量と技能がないとは入れない仕組みになっていた。

ミヒャエルは、なぜか分からないが、無試験で入る事が許された。

さらに、この中央魔法学校の中にも、クラス分けがあり、その中で、最も高いクラスが、これからミヒャエルが入るクラスだった。


学校は、五角形をしていた。さらに、なかには、それぞれの頂点を結ぶようにして渡り廊下が作られていた。

「これは…」

ミヒャエルが言った。

「これは、上空から見ると、ちょうど星型をしているの。それは、魔法を使う上では基本となる形よ。正5、6、7、8、16、17、20、28、40、50、82、126角形は、非常に強力な魔法を使用する時に使うの。正5角形は、それほどでもないけどね。ああ、そうそう、これを先生に渡しといてね。カーパン・フランソア班長からですって」

ミヒャエルはその意味が分からなかったが、とりあえず渡しておく事にした。


ミヒャエルの教室は、この建物の最上階、最も見晴らしがいい場所に置かれていた。

5階建ての校舎の階段をずっと上がっていくと、果てしない向こう側まで見えるような感じがした。


Aクラスと書かれた看板を見て、中に入った。


中では、先生がいて、出席を取っていた。

「ああ、カーパン・ミヒャエル君だな。待っていたよ。自分は、ファイガン・トルアライ。今は、バイトでここの先生をしている。いわゆる非常勤職員だな」

「自分の母、カーパン・フランソア班長から、これを渡すように言付かっています」

ミヒャエルは、フランソアから預かった手紙を彼に渡した。

「ほうほう、班長からか…ま、後で見ておくよ。えっと、君の席は」

指差したのは、窓際の一番後ろの席だった。

「あそこ、そこに座っといて」

座ると同時に、勢い良く誰かが入ってきた。

「遅れそうになってごめんなさい」

「大丈夫だ。あと、10分もある。君は、金沢…なんだっけ」

「金沢星日です」

彼は、窓際から2列目の一番前に座った。


チャイムが鳴り、8時30分になった事を告げていた。

「じゃあ、窓際の席の人から順番に廊下に並んで。これから、入学式を始めるから」


入学式は、1時間で終わり、早速課題が配布された。それは、金属の玉のようだった。

「手を使わずに、立った時の目の高さまで、これを持ち上げてみ」

先生がお手本を示し、生徒がそれに従うという形だったが、周りがまったく出来ない状況で、一人だけ、ミヒャエルがやすやすとあげた。

「ほほう。さすがだな」

すかさず、先生は、妨害を加えた。

すると、ミヒャエルはそれを落としてしまった。

「なるほど。まだ、これには慣れてないか…」

そして、今日は終わり、そのまま帰った。


夜、夕食を食べている時、誰かから電話がかかってきた。

第3時大変動によって、技術の大半は失われた。そして、今は、ようやくテレビ電話が普及し始めていた時だった。

「はい、ああ、トルアライ君?」

フランソアが出た相手は、元同僚だった。

「懐かしいね。まだ、あの仕事を?」

「ええ、どうだった?あの子」

「あの時の子供かい?あの子は、まだ魔法を使いなれているような感じではなかったな。だが、それも時間の問題だろう。それはそうと、自分、正式採用が決まりそうなんだ。今は、非常勤職員として活動しているけど…」

「そう、良かったじゃない」

「そう言えば、君には、二人の娘もいたよね。彼女達も、魔法学校に?」

「ええ、そのつもりよ。どうして?」

「少し、気になっただけだ。じゃあ、またそちらにいくと思う」

「分かった。おやすみ」

そして、一方的に電話を切った。


翌日から、正式な授業が始まった。

魔法学校と言えども、通常の教科も存在する。

特に体育は重要な教科のひとつに挙げられる。

なぜならば、魔法を使う事は、それをするのと同等の運動をするのと同じ事だからだ。

例えば、物を上にあげると言う動作にしても、実際に行動すれば、腰をかがめ、物を持ち、再び腰を伸ばし、そして、上に持ちあげる。

この一連の動作の内、魔法でするのは、上に持ちあげる動作と、物を持つ動作だけだ。

しかし、それが最もきつい事となる。そのための体力は、魔法を使うときとなんら変わらない。

よって、魔法学校は、まず最初に、体操から始まる。

さらに、体力作りのトレーニングも欠かせない。

無論他の教科もする事になる。ミヒャエルは、その中で、歴史が楽しみになっていた。


「では、教科書の32ページを開いて」

歴史の先生は、実年齢は誰も知らなかった。

それどころか、ちゃんと自己紹介すらした事がなく、誰に聞いても名前すら分からない、謎の先生だった。

「今日は、第1次大変動以前の世界についてするから。この時代は、魔法がほとんど使われておらず、それを使える人は、極々稀にしかいなかった時代だ。彼らは、「神の使い手」と呼ばれ、各銀河にある神殿の中で働く事になった。今いる神は、見つかっているだけで、29柱いる。現存しているのは、その内の、28柱で、さらには、7柱がひとつにまとまっているので、21柱となる。さて、その21柱それぞれに神の力と言われるものがあり、それは、自分らの魔法の使い手の力の源にもなっている。神々がいたからこそ、我々はここにいる。さて、魔法が使えなかった時、人々は、科学技術を発達させてきていた。宇宙を飛びまわり、いろいろな化学分析機もこの時代に作られた。さらに、物理学も進化して、さまざまな事を科学的な始点から見るようになっていた。第1次大変動が来るまでは、そのような生活をしていたと伝わっている。その時は、第1銀河系〜18銀河系まで、それぞれ1柱ずつ神が統治しており、必要に応じて、エネルギーをこちらに供給していたらしい。その時には、旧宇宙連邦は崩壊しており、それぞれの銀河が近い物同士をつなぎ合わせて、独立した国を形成していたらしい。しかし、その事を知るものも既に全員死んでおり、誰もその事を知らなかった。さて、ここからは、板書をするから、ノートに取るように」

ミヒャエルは、そう言われて、ノートを開いた。


その後の事は、記憶がなかった。どうやら、その前後で眠ってしまったらしい。


魔法関連の授業もあった。これは、魔法学校ならば当然の授業だろう。最初のころは、魔法の形態についてだった。


魔法学の先生は、担任のファイガン・トルアライだった。

「さあ、今日は、神について勉強しよう」

扉を開けた途端に、そんなことを言った。

扉を閉めると、順次生徒を当て、神の名前を言わせた。

今現存しており、確認されている神の名前は、スタディン神、クシャトル神、ナガミ神、ショウヘイ神、カナエ神、サダコ神、ユウタ神、アユ神、クニサキ神、サトミ神、タカシ神、クリオネ神、ヒデキ神、タマオ神、ミント神、レモングラス神、ハーブ神、オールド・ゴット、メフィストフェレス神、時の神であるジョアー神、闇の神であるウィネ神、全ての神の頂点に君臨するマギウス・レメゲトン神だった。

さらに、この場にいる先生しか知らなかったが、マギウス・レメゲトン神には夫がいて、名をマギウス・ミヒャエルと言った。

「そうだね。マギウス・レメゲトン神までの、合計22柱いるね。ついでに言うと、メフィストフェレス神は、観測されていないから、恐らくいなくなったと言うのが定説だから、公式には、21柱だね。さて、この神々は、一人一人の体の中に、神の遺伝子を入れた。それは、全員が確実に持っていて、魔法の力の供給先と繋がっている。つまり、神だ。それが発現するかどうかは、単なる運の問題にしか過ぎず、実際に出るかどうか、生まれつき知っている者はいない。それに、いつ出るのかも分からない。だが、ここにいる全員は、生れて1週間以内に発現した、いわゆる「特殊な人」と呼ばれる分類に入る。それに分類される人は、魔法省内にあるセンターに登録され、各惑星の中央魔法学校に入学が許可される。それがないと、中央魔法学校には入れない。さらに、登録される中には、このAクラスに入るためだけの、特殊なリストもある。それに載っている人は、義務教育終了後、中央魔法学校以外に入学が、許可されない。但し、その人達は、確実に入学できるように、全ての試験が免除される。必要なのは、入学する意思のみ。ただ、それを作るためにも、神の意思が必要ではなかったのかと言うのが、持論だ。なにせ、魔法を使うにしても、制御するにも、神の力と称される、魔力を使う。それを使えるものこそ、神が定めた特別な人と言われるゆえんだろう…」


そして、宿題が出された。期間は1年生が終わるまでと言う超長期間の課題で、内容は「自分の力の神についてレポートを作る」と言う事だった。

それまでの間、夏休み、冬休み以外宿題を出さない事も言った。

ミヒャエルは、その日一日中、その事ばかり考えていた。


家に帰り、その宿題のことを話すと、フランソアはミヒャエルに、一冊の本を貸した。

「これは?」

「その本に、ミヒャエルが欲しい全ての情報が入っているわ。それで宿題を済ましなさい」

にこやかに言った。そして、ミヒャエルは、一人で部屋に入り、その本を読み始めた。そこには、こう書かれていた。


「ある所に時の神と闇の神有り、宇宙作りし神、別にあり。彼ら、元の場所に戻り、母なる神、マギウス・レメゲトンの元へ行く。

時の神「新たなる生命の育てる場所、世界を作る」

闇の神「その守人として、新たなる神、再び作り、その者、育てる」

マギウス・レメゲトンに夫有り、名をマギウス・ミヒャエルと言う。

ミヒャエル「世界とは、いかがなるものか」

時の神「世界とは、神とは別の種族育む場所」

闇の神「我々もわからぬ、不可思議なる時の中で生まれる命」

レメゲトン「ならば、その土地、肥やし、必要ならば、神の力を与える」

時の神「御意のままに」

闇の神「承知仕った」

ミヒャエル「しかしながらも、世界、滅ぼし時、我ら、影響力を行使し、汝ら命亡き時と思え」

時の神、闇の神答えず、ただ、その場を立ち去る。それからしばらく、何事も無く過ぐ。宇宙は生れ、そして、消える。ただその繰り返しなり。

時の神、闇の神が作りし神である、メフィストフェレス神。災厄を起こし、世界を苦しめ、天球を揺るがす。

レメゲトン神、その場へ行き、尋ねる。

レメゲトン「其はなぜに人々を苦しめる」

メフィストフェレス「なぜなら、これが我が使命。世界に対し、災悪を起こす。人、これに対し苦しむ。我、それこそが我が使命と確信する」

レメゲトン「ならば去れ、されども、ただ去るのも苦しかろう。今一度機会与え、その結果、やはり、悪しき神、不必要な神と我が認めし時、其はいかなる場所にも存在を許さず」

メフィストフェレス「我、其れを甘受す。何れへも飛ばし給え」

レメゲトン、なにやら手を振る、その後、メフィストフェレスを見しもの存在せず、レメゲトン、夫と共にこの場より立ち去る。他の神々、其れを見、明日はわが身かとおののく。それ以後、何事も無き事、全て承知の通りなり」


「何これ?自分、ミヒャエルって言う名前って、神様から取ったんだ。だとすると、名は体をあらわすって言っていたよな…と言う事は、自分自身が、マギウス・ミヒャエル神その者?」

すると、本の表紙が光だし、誰かが現れた。

「誰だ!」

部屋から出られないように、すぐに鍵をかけた。

「我は、マギウス・ミヒャエル…我が息子よ、良くぞその結論に達した」

「え?我が息子?マギウス・ミヒャエルって、神様だから…ははは!そんなわけないじゃん。だって、自分のお母さん、そんな事一言も言わなかったし、そんな素振りすら見せなかったもんな」

「ならば、その時の事を聞け。今より、15年ほど昔の事だ…」

そして、神は、本に戻らず、ミヒャエルの体の中に入った。ミヒャエルは手でそれを受け止めたが、手に焼印がついただけだった。それは「Michael」と書かれてた。ミヒャエルの綴りだった。さらに、ミヒャエル神は、完全にミヒャエル自身が持っていた魂と融合を図った。しかし、それは出来なかった。なぜならば、神の力をもってしても、魂同士の融合をひとりで行うのは不可能だったからだ。

「ハァハァ、なんだったんだ?さっきのは…」

ミヒャエルは、それを忘れようとした。そして、実際に忘れた。


それから、数日後の初めての魔法実習の時、ミヒャエルは、自分に今まで無かった能力が身についてる事に気がついた。


担当の先生は、最初に見本を示し、それが出来るかどうかを見る事にしていた。

周囲がまったく出来ない状況の中で、ただ一人だけ、その課題をやってのけた。

その課題は、水の空中浮遊だった。

一点にできるだけ長い間浮かし続けると言う技は、魔法学校の他のクラスだと3年生レベルだったが、この中央魔法学校は、天才ぞろいだったので、1年生からさせているのであった。

「なるほど…技能はあるようだな…」

すかさず、上からの圧力を加える。しかし、ミヒャエルの水はびくともせずに、その地点から動かなかった。

最終的には、その時間が終わるまで、浮かし続けていた。


授業が終わると、まったく疲れていない事に気がついた。

周囲は、立てなくなる人もいるのにかかわらず、ミヒャエルだけが、息切れも起こしていなかった。

(おかしい…いままでは、浮かす事すら出来なかったのに…突然出来るようになるなんて…)

その日の放課後、ミヒャエルは、職員会議に来るようにいわれた。


会議室に入ると、学校の教職員合計36名は椅子に座っていた。前には、長机があり、プリントが整然とおかれていた。

さらに、魔法省のマークを付けた人が二人いる。

「さて、カーパン・ミヒャエルだね」

「はい」

何を聞かれるか分からないこの状況で、かなり堂々としていた。

「君は、今回、通常なら半年ほどかかるような水の定点浮遊を何もない状況でやり遂げた。間違いないね」

「はい、間違いありません」

「さすがにか…」

「なんでしょうか?」

魔法省の人は、ミヒャエルの目を見ていった。

「君は、神そのものだと言っても、驚かないかね?」

「……はい。そのような感覚がありましたから」

「なるほど。ならば、少し外で待っておきなさい」

「分かりました」

ミヒャエルは会議室の外に出た。


それから数分後、再び中に入るように指示があった。

「さて、この数分間、君のこれからを話し合っていた。よく聞いて欲しい」

「分かりました」

「君は、特別な人間だ。君のような人は、この世界に、何名かいる。すでに成人を迎えている人もいれば、まだ、義務教育が始まっていない人もいる。さて、そこでなんだが、君は、魔法省特殊魔法使用者リストの筆頭に今の時点でいる。ここまで理解できるか?」

「はい」

ミヒャエルは、今後の展開が分からなかった。

「よろしい。そこで、我々、ファイガン星中央魔法学校教職員会議及び魔法省特命全権特使2名により、君を、全宇宙総合魔法大学校に入学をここに特別に許可する。すでに、書類も出来ている。あとは、君の気持ち次第だ」

そこまで言うと、ミヒャエルに紙を2枚渡した。

「これは?」

「1枚は、君のお母さんに渡してもらいたい。もう1枚はさっき話した入学許可証だ。保護者のサイン若しくは判子と、それを証明する証人のサイン又は判子が必要だ。そこに、書く欄があるから、そこに書いて欲しい。それを、好きな時に大学校に持っていくと、優先的に入学できる。だが、それを使わずに、このままこの学校にいる事も出来る。どうするか、ゆっくり考えたまえ」

そして、家に帰ってもいいと言われた。ミヒャエルは、そのまま半分放心状態で家に帰った。


「ただいま…」

「あら、おかえり。遅かったわね」

「これ、手紙…」

「あらあら、なるほどね…ねえ、ミヒャエル、この全宇宙総合魔法大学校って言うのがどんなところか知ってる?」

「知らないよ。だって、そんなところに受験するのはまだまだ先だと思っていたもの」

「確かにそうよね。じゃあ、教えてあげる。この全宇宙総合魔法大学校と言うのは、魔法省が運営する魔法学校の中でも最高峰の所にある学校なの。全ての宇宙空間の中でも、最も権威があると言われている大学校で、それは、それぞれの中央魔法学校を卒業した人にしか受験資格がなくて、さらに、競争倍率は約300倍。つまり、300人に1人しか入学できないって言う事。そこに入学するには、最低でも300以上の魔力量がないといけないし、さらに、全ての教科を知っていても、入る事ができないって言われているぐらいのところよ」

「じゃあ、お母さんは、ここに入ったの?」

「いいえ、私はここには入れなかったの。私は、中央魔法学校でなくて、一般の魔法学校に入学したの。でも、そこの先生のおかげで、魔法省に入る事が出来たんだけどね」

その時、フランソアはミヒャエルの手のひらの焼印に気がついた。

「ミヒャエル、その手のひらのは…」

「お母さんから借りた本を見ていた時に…」

「あの本…確か…正史委員会からのもの…」

ミヒャエルは何のことか分からなかった。フランソアは、どこかに電話をかけた。

「はい、カーパン・フランソアです…はい、そうです、ミヒャエルの母です…はい……彼の手のひらに………分かりました。では、これから…え?こちらに来ますか。分かりました。お待ちしています」

電話を置き、ミヒャエルの方を向いた。

「ミヒャエル、あなたのこと、今まで詳しく話した事がなかったわね。これから、彼らが来るまでに話す事は、全て真実。これだけは忘れないで。彼ら、正史委員会の話す事も全て事実。じゃあ、長い話になるから、そこに座って…」

そして、フランソアは、ミヒャエルが、神から直々に授かった子供である事、よろしく頼むと言われた事。さらに、それからの神の動向について話し、最後に、こう結んだ。

「信じられないでしょうが、これが真実よ。あなたは、人間ではない。神そのものなの。私は、あなたを育てはした。でも、実際は、あなたの監視役だったの。その焼印がついた時点で、あなたは神の子に戻った」

その時、呼び鈴が鳴った。フランソアが出ると、正史委員会から派遣されてきたと言う、二人組がいた。

「では、どうぞ、お入りください」

「いいえ、それは結構。扉は開けなくてもいい」

「なぜでしょうか。私は客をもてなすのを主義としています」

「どうしても、そう言うのですか?」

「はい」

「ならば、お邪魔になろう」

そして、二人は入ってきた。

「確かに、正史委員会から来たようね。では、身分証とかは?」

「そのようなものは持ち合わせていない。しかし、これがその代わりになるだろう」

そして、見せたのは、突然部屋の真ん中に現れた青い扉だった。

「これをくぐって行け。ミヒャエルよ。そして、建物の中に入れ。全てはそこで明らかとなる」


ミヒャエルは入る意思はなかったのに、勝手に体が進んでいった。


中は、比較的明るかった。そして、一本だけ道があり、それを辿っていくと、誰かがいた。

「すいませーん」

呼びかけると、振り返った。その人は、見覚えがあった。

「あっ。金沢星日…」

ミヒャエルは、驚いた。

「なんで、ここに、ミヒャエルが?」

「なんか知らないけど…神の子とか言われて…」

「同じだ…俺も、同じ事言われた」

「じゃあ、金沢は、何の神の子なんだ?」

「スタディン神だと」

「自分は、マギウス・ミヒャエルだそうだ」

「ちょっと待て。誰だ?聞いた事ないぞ」

「どうやら、マギウス・レメゲトン神の夫らしい」

「…とにかく、あの建物の中に入るのが先だろう」

星日が指差したのは、白い大きな建物だった。他には建物らしいものは見つからなかった。

「仕方がないな」

二人は、その建物を目指して歩いていった。


その建物に到着すると、近くにあった管にいった。

「金沢星日とカーパン・ミヒャエルなんですが、中に入れてもらえませんか?」

勝手に扉が開き、二人は中に入った。


中は薄暗かった。扉が完全に閉まると、中は明るくなった。

「ようこそ。全世界正史委員会中央評議会へ。私が評議会会長の、エア・アダムだ。神々ももうすぐ来るだろう。無論、今回君達二人を呼んだのは、神々の子孫に関する事もあるからだ」

二人は、とりあえず、半円状のテーブルのこちら側にある2脚の椅子に座った。そして、扉が開き、誰かが入ってきた。

「お兄ちゃん、遅い〜」

「お前の歩く早さが早いだけだ。自分の方が、正常なんだ」

「スタディン、クシャトル、お客の前で何口論しているんだ?」

「足の速さ」

アダムは、やれやれと頭を振り、

「とりあえず、席に座って。…あれ?他の神は?」

「もうちょっとしてから来ると思うよ。なにせ、こんな事初めてだからね」

「人間界に送られた神の直系子孫。楽しくなりそうだ」

そして、再び扉が開くと同時に、さらに何名かの神が現れた。最終的に、全ての神々が集まるのに、体感時間で3時間ぐらいだった。


「さてと、今回は、本評議会で、彼ら二人について決めたいと思います。彼らは、神の力を色濃く受け継いだ者で、特に、カーパン・ミヒャエルは、マギウス神夫妻の実子です。その力は、人類が有する平均魔力量の約5万倍となります」

アダムが司会者らしく、報告をしていた。

「彼の横に座っている、金沢星日は、スタディン神の実子に当たり、彼もまた、人類が有する平均魔力量の約4万5千倍を有しています」

ミヒャエルは、横に座っている金沢を見た。だが、本人もその事実をこういう形で言われる事に対して驚いているようだった。

「なるほど。で、君達は、なぜここに来た?」

スタディン神が聞いた。

「俺達は、なぜ、自分達が神の世界でなく、人間の世界に送られたかを知りたい。それに、自分が何者かも…」

金沢が答えた。それを聞いて、再びスタディン神が答えた。

「そうか…君達がなぜ送られたかと言うのは、君達二人が、神の世界で必要な、「自他共栄」の心を養う事にあった。しかし、その心が身についたと思われるので、君達の手のひらに、その焼印を押させてもらった。その印は、魔法を使いたい時のみ現れるから、通常の生活に支障は起きないはずだ」

そう言って、ミヒャエルは、金沢の手のひらを盗み見た。すると、「Stadin」と焼印が押されていた。

「まずは、それらを消す事かららしいな。この空間から出ると、自動的に消える。その焼印を出したい時は、念ずればすぐに現れる。さて、2つ目の質問だが、それは、併設されている図書館を見に行くといい。そこにあるはずだ」


スタディン神達は、それで二人を外に出した。そして、二人は、その併設されている図書館に歩いていった。


「でも、その図書館ってどこにあるの?」

ミヒャエルが言った。

「あっちの方らしいけど…」

金沢はとある方向を指差した。しかし、そこにあるのは、地下に下りるための階段だけだった。

「もしかして、地下にある、とか?」

「そのもしかして、だな」


5分ぐらいするとその階段にたどり着いた。そして、階段を下りると、そこには、大量の本が収蔵された図書館があった。

「……!!」

二人は、声が出ないほど驚いた。係員など、職員がどこにも見当たらなかった。ふと、横を見ると説明書きがあった。それを金沢が読み上げた。

「えっと、ここは地上0階、地下25階建で、蔵書数現在680億冊超、……神仏関連書は地下22階だって」

「どうやって下に降りるんだよ。そんな、近くの高層ビルよりも高い階数だよ」

その時、誰かが近寄ってきた。

「どうされましたか?」

彼女は、図書館職員らしかった。

「すいませんが、地下22階にはどうやって降りたらいいですか?」

「この右手にエレベーターがあります。それで下に降りれますよ」

「ありがとうございます」

確かに、エレベーターがあった。2基だけ。

「ここって、絶対誰も来ないんだぜ」

「ありえる」

談笑しながらエレベーターに乗っていた。


地下22階に着いたのは、それから40秒後だった。

「地下、22階です」

無機質に話す声が聞こえてきた。

「これは、3689の棚に、それは5791の棚に」

「はい」

パタパタとスリッパで移動する音が聞こえる。エレベーターの扉が開くと、こちらを一斉に向いた。しかし、一人を除いて、興味を示さなかった。

「ここは、地下22階、神仏関連書の階ですが、あなた達はどなたでしょうか?」

「自分達は、カーパン・ミヒャエルと金沢星日です。自らが何者かを調べに来ました」

「分かりました。では、4621番の棚に行かれるのがよろしいでしょう。あそこに、あなた方が調べたいものがあるはずです…しかし、そのまえに、これに履き替えてください。この部屋には、あなた方から見て非常に古い本も所蔵されております。では、ごゆっくりしてください」

彼女は、去っていった。

「4621番の棚…」

「この部屋、どこまで広いんだ?」

「さてな、とにかく、進まないといけないな」

そして、二人は、その棚を探しながら先に進んで行った。


「あった、これだ」

4621番の棚を見つけ、そして、その中に、目的の本を見つけた星日は、ミヒャエルを呼び、その本を開けた。その本の題名は、「伝説となりし神」と言う名前だった。


「……我、ここに記す。我は、神の言葉を伝えし者。神とは、即ち、人ならざる人であり、人とは、即ち、神ならざる神である。いま以て神となりし者、数多あり、されども、今、生きし神、僅かなり。我、神と対面し時、我、この事伝えるべしと啓示受けし時。よって、我、ここに、その事記すべし」

と言う書き出しから始まった。

「これって、長そうだな」

「そりゃそうだよ。なにせ、厚さが、10cmぐらいありそうだからな」

そして、その真ん中をすっ飛ばして、読みたい所だけを読む事にした。


「…………神曰く、「我、世界を治めし子らを置き、彼ら、神の子と称するべし。我、神ならざるものを神とし、人ならざるものを人とする。我ら、神々は、いずれ、一つとなり、唯一の神となる。それまでの時、神の子、世界を治め、人、神、全ての生物・無生物は、彼らに従す。我、それまでに、我々の子らを地上に降ろす。我、神としての知識を有し時まで、彼らを放置す。然れども、我、彼ら神にあたわずものと認めし時、我、彼らを消し、新たに送る事せず。我、彼らを招き時、宇宙、震撼し時。彼ら、我の招きに応じ帰し時、彼ら、神になり、神として、君臨す」

我、この神の名を知らず、問いし時、答えて曰く「我の名は、マギウス神なり。我こそ、元始の神なり」と言う。

我、再び問いて曰く「我、尋ねし。我の問いとは、神の子についてなり」

神、答えて曰く「我、彼らとは、即ち、我の夫妻の子であり、スタディン夫妻の子である」………………」

そして、本を閉じ、星日は言った。

「俺達は、神の子…」

「しかも、直接生れたっていう事は、もう、元の世界には戻れないな…」

「その通りだ」

二人の背中から声が聞こえた。

「やはりきていたか。金沢星日、カーパン・ミヒャエル」

「あなたは?」

二人は目を覆いながら言った。

「自分の名前は、スタディン神だ。金沢の実の父親、第1銀河系の統治者だ」

「お父さん…?」

「じゃあ、自分のお父さんとお母さんも…」

「そうだ、ここにいる」

ミヒャエルが、その声の方向を向くと、フランソアと見知らぬ二人が立っていた。

「お母さん?」

「そうよ。私が、あなたの実の母である、マギウス・レメゲトン。そして、父である、マギウス・ミヒャエル。さらに、あなたの養育をまかせた、カーパン・フランソア」

「なんで、母さんが?」

ミヒャエルは、フランソアに対して言った。

「私はね、ミヒャエル、ここの図書館の館長も勤めているの。それで、ここに出入りする事も出来るのよ」

「………」

ミヒャエルは、黙って聞いていた。

「さあ、彼は、これから、マギウス・ミヒャエル2世として、そして、こちらは、星日として、神になる事になりますが、彼らには、知識が足りない。死ぬ時に、彼らのことを決める事にしましょう。それまでは、ゆっくりと、あちらの世界で考えてらっしゃい…」


気がつくと、家のベットの上で寝ていた。

「あれ?いつの間に…」

そして、ゆっくりと考えた。時間だけは、いくらでもあった。


時間は、いくらでもあっても、足りないものだった。気がつくと、あの、神の世界に自然と向かっていた。寿命が尽き、神が、どうするかを決めるために彼を呼んだのだった。


「カーパン・ミヒャエルです」

あの時と同じように、ゆっくりと、扉が開いた。


中に入ると、旧来の神々と教えられていた、オールド・ゴットがいた。

「決心はついたか?」

「はい、自分は、神にはなりません」

「なぜ、そのような結論に達した?」

「はい。自分は、そのような器でないと思うのです。自分には、神は不適任と思うのです」

「後悔は、ないんだな」

「…はい」

彼は、ためらいがちに言った。オールド・ゴットは後ろから、誰かを呼んだ。星日だった。

「金沢、お前も、ここにいたんだな」

「ああ、君は、あのまま、全宇宙総合魔法大学校に入学。俺は、そのまま、ファイガン星中央魔法学校を卒業。行く道は違えども、たどり着く場所は、同じだったな」

「お前は、どっちを選んだんだ?」

「君と同じさ。俺も、神にはならない決心をした。そんな、重荷を背負う気にはならない」

「なるほど、お前らしいな」

オールドゴットが立ち上がり、彼らの会話をさえぎった。

「さて、君達が、神にならないというならば、早々に、魂の循環をしなければならない」

言うが早いか、彼らは、消滅した。


それを見ていた、スタディン神とミヒャエル神は、少し微笑んだだけだった。彼らは、そのまま、どこかに歩いて行った。

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