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今朝外出届を出して街に向かった。入学前に足りないものを購入しなければならない。
さすがに学園の周りには学生が喜ぶ店がひしめいていた。カフェにレストラン、文具屋、
洋服屋、雑貨屋、本屋、鞄屋、靴屋、店舗が店構えや取扱商品を変えて立ち並ぶ。
野菜やお肉屋、果物店も多くはないが店を開いていた。
メリーに連れて行ってもらった街よりおしゃれな気がする。
私が街に出たもう一つの理由は魔法の本を探すためだ。
母の手帳だけでは分からないことも多い。本から基礎を学ばないと理解できない。
あと薬草魔女になるためには薬草の本も欲しい。
そんなことを思いつつ本屋を探しているとある店の看板が輝いていた。
店先には日用品や女の子が喜ぶリボンや髪飾りなどの雑貨も置いてあった。
「いらっしゃい お嬢さん何が欲しいの」と声をかけられた。
声を掛けたのは太陽のように明るい40歳ぐらいの落ち着いた女性だった。
「えっなんとなく。お店に惹かれて入ってしまいました」
「あなた可愛いわね。もう少し髪型変えて服を明るい色にしたらもっと素敵よ」
「そんなことないです。瘦せて、小さくて、可愛くないし、影薄いし・・・」
「そこまで⁻負の感情に支配されているの久しぶりだわ。貴女ここの店の看板どうだった」
「キラキラしていました」
「そう それに気付くのは特別なことよ。それだけで素敵こと。
お茶しながら お話しする時間あるかしら」
「まだ買いたいものがあるので少しの時間なら。遅くなく寮に帰らないと」
「学生さん?」
「今年入学です」
「大丈夫 そんなに時間かからないわ。 ごめん奥に入るからお店お願いね」
そう言って店番を頼むと店の奥に歩きだした。私は誘われるまま女性の後についていった。
店の奥には部屋でなく広い庭が広がっていた。
「わっ すごく綺麗 あれ? 部屋の奥ですよね」
「そうよ ここは私の庭なの。私の好きな花を少しずつ植えていったら ・・・」
四季の花が季節に関係なく咲きほこっている。薬草でさえ花の一部になっていた。
「そこの椅子に座って 今 お茶を用意するわね」
「あなた 魔法使えるわよね。気配隠しとても上手ね。でもあなた一人の力でないわね。
誰かあなたに守りの魔法かけてたみたい。
だいぶ弱くなっているから魔法かけて時間たっているわね」
「私は魔法使えません。使えたらいいなと思っています。魔法の本を買おうと思っています」
「ん?魔法使っているよ。知らなかった?訳ありね。残念だけど魔法の本は売っていないわよ」
「えっ 売っていないんですか。どうやって魔法を学ぶんですか?」
「貴族なら家庭教師に、または魔導師に弟子入りして学ぶ。親から子に伝えるの。魔法使うだけの魔力持ちは貴族がほとんどだから街の本屋には売っていないわ。
庶民の中には魔力があっても魔力量が少なくて魔法が使えない人も多いの。
中には魔力を持っていることも知らない人もいるからね」
母の手帳だけが頼りか。ちょっぴり残念だが何もないよりましかもしれない。
魔法が少しでも使えるならいい。そんなことを思っていたら
「あなた魔法使えるわよ。話によっては相談にのれるかも」
花の香りと優しい声にいつの間にか母の死や父の事、継母と義妹、魅了の魔法、
家からの絶縁、進学、仕事探し。私のつたない話を急かさず店主の女性は聞いてくれていた。
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