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長らくお休みしていました
完結まで あと少し よろしくお願いします。
ダイアナは、第二王子の婚約者になれると信じていた。離宮で大切にされ、妃教育も受けていた。
講師は、すべて女性だったのが残念だが、未来の王太子妃だからといわれれば仕方ないと納得した。
殿下は、地方に視察に陛下の代わりに出かけたため会えないと言われた。その代わり、
「これをぼくだと思って待って居てほしい」
カードを添えて大粒のダイアモンドが付いたネックレスを贈ってくれた。それだけでダイアナは、殿下から愛されていると信じた。この美貌と妖艶な肢体には、誰もが夢中になると絶対の自信があった。
陛下の代わりに地方に行くなら、陛下の覚えめでたく立太子するのも近いと確信した。
だから自分が、隔離されているとは思わなかった。離宮は庭も美しく、お部屋も素敵な作りになっていた。食事は美味しく、侍女たちも彼女を満足させた。守る騎士は見目麗しい青年たちだった。すべて満たされていた。彼女は、気が付かなかった。見目麗しい青年騎士が、誰も彼女に、焦がれることが無いことを。
楽しい時間が半年ほど過ぎた頃、腕輪にひびが入っていた。心配になり母に手紙を出した。返事は返ってこない。なんだか最近思うように事が運ばない。髪や肌の艶が、落ちてきている気がする。侍女たちが、手を抜いているのではと怒鳴り散らした。マッサージや高級な香油を使っても良くはならない。
半年たっても殿下は、離宮に訪れなかった。
妃教育は難しくなかなか進まない。教師に暴言を吐き、侍女には八つ当たりをした。誰もダイアナに歯向かう者はいなかった。ただ教師が変わり侍女が変わるだけだった。 ダイアナの苛立ちは募ってきた。胸に手を当てれば、殿下から贈られた大粒のダイアモンドが触れるので安心できた。鏡の向こうのダイアモンドが、殿下の瞳の紺色に変わっていた。色が変わる宝石など聞いたことが無い。
特別な物だと思うと、毎日鏡に映して色の変わるのを眺めた。ダイアナの腕から魅了の腕輪が、ボロボロになって、外れたことにダイアナは気が付かなかった。
ソフィーが、財務部の仕事と それに伴う備品の開発品は、国中に広がった。もちろん彼女一人ではない。同僚の助けも多かった。商業ギルドに通ううちにソフィーは、担当のクラウスと親しくなっていった。あくまで、ギルド担当と講師の関係であった。世間知らずのソフィーに付き添い、講習会の移動や会場、運営を手伝ってくれていた。
街に出た時にエマさんの店に寄った。クラウスさんは、エマさんの知り合いであった。
商業ギルドの関係かと思っていたら、クラウスも輝く看板に惹かれた一人だった。
「ソフィーさん、クラウスさんは、物の鑑定魔法が使えるの。だから商業ギルドで活躍しているの」
と教えられた。彼もこの街に来るまで、鑑定は使えなかった。エマの手ほどきで使えるようになった。
魔導師ほどの力はないが、商品の鑑定には充分であった。ギルドの上層部しか知られていない。
鑑定に頼れば、商品を見る目は養えないからと多用していないらしい。
クラウスは、魔法の使い方を間違えると身を亡ぼすと思っていた。
ソフィーが生活魔法が使えることをクラウスにエマは、話していた。ソフィーには心から頼り、頼られる人がいないのがエマには心配だった。
「お互い秘密があるんだね。君は君の力で頑張っている。僕も見習わないと」
ソフィーは、女性として財務部で頑張っている。仕事にも慣れてきて、商品の企画もしている。
クラウスはソフィーを尊敬した。そしてソフィーも真摯に仕事に向かう彼を尊敬していた。
エマの所に来た時の心細げな姿は、少しずつ影を消してる。
働いて1年がたった頃、財務部長に呼ばれ王宮はずれの離宮に出向いた。
バラの花が咲き春の香りが舞う庭園を横に見ながら、石づくりの渡り廊下を歩いて離宮に入った。
大きな窓からふりそそぐ光は、部屋の中に暖かな空気を生んでいた。
呼び出しの内容は分からない。案内された部屋に財務部長と共に入り、用意された紅茶を飲みながら時間をつぶしていた。しばらくして扉の開く音がした。目を向けるとモンゴメリー男爵夫妻が侍従に案内されて入ってきた。父は、私を見たが気が付かなかった。二人は、ずいぶん老けたように見えた。
宰相閣下と臙脂のマントを羽織った男性が、第二王子殿下を連れて入ってきた。もう一つのドアから
春らしい薄ピンクのドレスを着た老女が、侍女に連れられ現れた。彼女の胸には、真っ黒な宝石が ギラギラと輝いていた。
ありがとうございました。