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入学通知が届いた。初めて父が部屋を訪れた・
「ソフィー君ももう大人になったね 12歳から学園に行くことは君の母の願いだったからね
学費の心配はいらない。君の母との約束だから。
卒業までは学費は見るけど卒業後はここに戻ってこれないと思ってくれ。
君が2年になるころには、ダイアナが学園に入るけど 姉妹とは分からないように気を付けて
それが条件だ。だって可愛いダイアナにソフィーの様な姉がいてはダイアナが恥ずかしいだろう。
この家の一人娘として送り出し学園で楽しく学ばせたいんだ。分かるよね。
生活に必要なお金は金貨10枚ここに用意した。学費は3学年分収めてある。
十分足りると思う。私は、君を籍から抜くことはしないが、私の娘はダイアナだけなんだ」
笑顔で父は話していた。途中から父の言葉が頭の上を通り過ぎていった。
父の去った部屋の中で茫然とした。
父が言っていることが頭の中でぐるぐる回って意識が遠のいていった。
目を開けると見慣れたメリーが、私の顔を覗き込んでいた。
「ソフィー様 分かりますか?急に倒れた後高熱が出てびっくりしました」
「熱が出ていたのね。大丈夫よ。心配かけたわね。メリーにお願いがあるの」
「何ですか 私が出来る事ならソフィー様が学園にいかれる時私もここを辞めます。
出来る事は少ないと思いますけど何なりと」
「私ね 学園卒業したら独り立ちしなければならないの。お掃除や料理 街の暮らし方など
教えてほしいの。お嬢様ではいられないの」
「うっ お嬢様奥様が生きていればこんなことなかったのに ・・・」
「しょうがないじゃない。お父様には、新しい家族が出来ているんだから
学園に行かせてもらえるだけ感謝しないとね。それにメリーとセバスが居てくれたから
餓死することもなくここまでこれたのよ」
私の元気な様子にほっとしてメリーは、部屋を出っていった。
父の目を盗みつつ私の事を気遣ってくれていたのだろう。感謝しかない。
高熱後 私は父に見捨てられたことにくよくよすることもめそめそすることもなくなった。
北部屋に移っていたころがはるか昔の事のように思えた。
学園に通える4年間を有効に使って逞しく生きていかないと4年後に泣かなければならない。
父の元に戻る必要もないので、政略結婚で知らないおじ様やそぐわない人と添うこともない。
母の様な人生は送りたくないと思った。
それからは学園に行くまでに覚えることが沢山あった。
裏庭からメリーに連れられて街にも出た。街には多くの人がいてお店で買い物をしていた。
お金さえ知らなかった。小さな硬貨を握りしめ勇気を出して果物を購入した。
心臓がドキドキだった。横でメリーは、笑っていた。
洗濯や掃除、料理はメリーに覚えが早いと褒められた。
包丁で切った指の傷はひりひりしてなかなか治らなかった。
倒れてから 私は自分の中に勇気の塊を見つけた。
母が囚われたこの屋敷から旅立とうと思うようになった。
知らなかったことを知るのは本当に楽しくわくわくしていた。
明日王都に向かうという時 明日辞める老執事が、
「お嬢様、これを奥様から学園に向かう前に渡してほしいとことづかっていました。
旦那様には内緒だそうです。わたくしも明日でお暇します。何の力にもなれず
申し訳ありませんでした。この家のお嬢様はソフィー様だけです。
それだけは忘れないでください」そう言って丸くなった背を見せて部屋を出ていった。
手渡されたレースの縁取りがある可愛い袋だった。
中に手紙が入っていた。
愛するソフィーへ
元気にしていますか 学園に向かってここを立つのですね
貴方を見送りたかったが体がもたなかったの。つらい思いをしたでしょうね。
私はお父様を愛して結婚したのです。貴方が生まれてとても幸せでした。
ソフィーあなたが学園に向かうお祝いを用意してあるの
手紙の入っていた袋に手を入れて 出てこいと願ってください
出来たかしら。出来なかったらもう一度繰り返して
私が出来る準備で足りないかもしれないけどあなたの助けになればうれしい。
クローゼットの奥に茶色いカバンがあります。学園の荷物はこの中に入れて下さい。 ソフィーは、不思議に思うけど母は魔法が少し使えるのです。
この袋もカバンも魔法のカバンです。母が残せる力を練りこんであります。
大切にしてください。そしてあなたもきっと魔法が使えると思います。
でも この力は隠しておきなさい。人と違う力は畏怖されることがあるのです。
貴方が幸せであることを願っています
愛しています 母より
袋に手を入れて 書かれていたように願った 母の贈り物をわが手に
とても袋に入っている量でないものが溢れ出てきた。
普段着用のワンピースにお出かけ用の服に靴にバック、宝飾品、髪飾りに下着まで
ふわふわの紺色のドレスにハイヒールまで思わず袋から手を抜いてしまった。
見たことのないきれいな服には驚いてしまった。
母がいた時でも服など作ったことが無かったのにどうして準備が出来たのだろうか
袋に出てきた服を仕舞いながら 中の物の一覧表があったらいいのにと思っていたら
目の前に
日常品 石鹸 タオル 服 ・・・・
学用品 制服 カバン 靴 ・・・
母の大切にしていた宝石 母の好きだったドレス ・・・・
制服 3セット 靴 カバン ・・・
そして お金が入っていた。
いつから準備したのだろう。母の遺品なんて何も貰えなかった。
涙が頬をつたう。私が大きくなったら洋服が合わなくなってしまうのに。
どうにか袋に出てきたプレゼントを仕舞い終わった。
袋に手を入れて「タオル小1枚」と思うとタオルが出てきた。
そのタオルを手にして袋をもう片方の手に袋をもってタオルを仕舞うと願うとタオルは、
目の前から消えた。さっきの苦労は何だったのか
クローゼットの奥のカバンを取り出した。旅行カバンの様だ。
鍵はかかっていなかった。 ふたを開けるとカードが入っていた
ソフィーへ
カバンの中に私の手帳が入っています
時間を見ては勉強してください
魔女になりたくなかったら 手帳は開かずにいてください。
魔法カバンは、あなたしか開けることは出来ません
貴方の手助けになれば 母は、うれしいです。
お父様は、魔法の事は知りません。
生活魔法は、便利よ。母がソフィーに魔法を伝えたかった。
あなたに 幸せを
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