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うちの息子は、いつから 頭が花畑になったんだ。確かに宰相として忙しくしていて 子育ては、
妻に任せていたのは、私の落ち度だ。兄のアンソニーは、しっかりしているのに。
あの男爵令嬢は、なんだ。あんな高価なドレスにネックレス学生が身に着けるものではない。
高ければ良いといったものでない。品性が無い。今日の研修生の方が、美しい。本当に情けない。
家に向かおうと会場を出ると
「お父さん あんまりじゃないか ダイアナがかわいそうだよ。 僕の婚約者なのに」
「申し訳ありません・・うぅ・・」ダイアナは、目にハンカチをあてる。
「泣かないで、母さんならわかってくれるから お父さん馬車貸して 家に帰るから」
思わず息子を殴ってしまった。息子を引きずり馬車に乗り家に連れて帰った。
「あなた おかえりなさい ずいぶん早いわね あら セドリックその服装は、何?」
「こいつは、今日のパーティーにその格好で、前から話していた学生に高価なドレスを着せて
乗り込んできたんだ」
「セドリック あなたは、今日のパーティーの意味わかっていなかったの」
「お母さま 僕は、ダイアナを早く紹介したかったんだ。婚約もしたい それがなぜ悪いんだ
ただの学生のパーティーがなんだ。ダイアナの方が大切だよ 俺は、宰相になるんだから」
言い終わらないうちに妻は、セドリックの頬をなぐった。
「なぜ・・」
母に殴られたことのないセドリックは、茫然とした。そのまま妻に連れていかれた。
普段は、しおらしい公爵夫人だが、元は、女性騎士なのだ。子供たちは知らない。まあ 自業自得だ。
それにしても、こんなに女性に振り回されるのは、セドリックとしても不思議だ。
身にそぐわないドレスや宝飾品も気にかかる。少し調べてみるか。
宰相がいなくなった後 あちこちでダイアナの話で盛りあがった。噂雀の話のほとんどが、
ダイアナの事だった。モンゴメリー男爵家は経済的に困窮しているのに あのドレスや宝飾品は、
貢いでもらった物だろうか。マリーの婚約者もその一人かもしれない。
研修の合間にエマの店を訪れた。
「エマさん 魅了の腕輪ってありますか」
「どうしたの ずいぶん突然ね」
それから 母の事、継母の事、魅了の腕輪の事、ダイアナの事、思いつくままに話をした。
「ソフィー お伽噺の 女神の加護 というの知ってる?」
「はい 母に読んでもらいました。 女神が、助けてくれた娘に加護を与えて、その娘は、
求婚者の中から正直者を見分けて 幸せになった?かな」
「そう その話は、実話らしいの ソフィーは、その子孫じゃないかな。そしてその加護は、
使いすぎると命の火を短くしてしまうらしい。だって お話でもお婿さん選びの時しか使っていない。
それと 魅了の魔法は、今は、使える魔法使いがいない。それは、確かなの。
魔石に縁結びの魔法を込めたものが売っているの。売っているけど おまじないみたいなもの。
ただ 中には、自分の魔力を糧にして 弱い魅了を増幅するものもあるらしいの。
自分の魔力量にもよるし 魔石が消耗してしまうので、1年もてばいいそうよ。ただ 古い貴族の持つ魔道具の中には、古の魔女が作った本当の魅了のものがあるらしいの。めったに外には、出ないわね。
使える物はないんじゃない。骨董品ね。お伽噺では、魅了がとけるとおばあさんになるらしいわ」
「ソフィー!加護を使ってはだめよ。結婚相手をえらぶ時だけ」
「まあ 選ぶほど求婚者は、いないわね。彼氏もいないのに ところで 魅了にかかってると
判断できる方法がありますか?」
「簡単よ 鑑定の魔法を使えばいいのよ。 お城には、いるはずよ。ただ 一度魅了に深くかかると
なかなか解除できなくて 中には、廃人になる人もいるの。だから 魅了なんか使ったら
大罪に処されるね。 軽い人は、魔法から遠ざかると 徐々に解除されるわね。魅了といっても
誰かれかかるわけではないわよ。相手に好意が無いとダメなの 嫌いな人を魅了はできないわ」
父は母に好意はなかった。いくら 魅了の魔道具があっても 父には効果がないことがわかった。
母の報われない思いが つらかった。
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