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2年になり 文官コースを取ったソフィーとマリーは、勉学に励んでいた。
近隣国の中でも帝国語は必須。毎日寮で 帝国語会話に明け暮れる。各領地の貴族の名前に 特産品
主要産業 地方の言葉 お茶会に 貴族マナーにダンスまで、基礎講座として習うことが多すぎる。
エマさんの魔法指導は生活魔法に進み、細やかな魔力操作で、2属性を同時に使うことができた。
とても珍しいことらしい。強力な魔法を使えないが とても便利な魔法だった。
これが使えれば お掃除が簡単に仕上がり洗濯も楽にできる。貴族の屋敷のメイドにも成れそうだ。
高位貴族なら高賃金で雇ってもらえる。自活の道が広がった。
ある日 エマのお店に青年がやって来た。その青年から黒い霧が見えた。エマさんは、その青年と
商売の話をしていた。黒い霧がさらに濃くなっていく。
「エマさん あの人 黒い霧に包まれてる?」と 耳元でささやいた。
「えっ ちょっと待って。商品を全部確認させてもらうわね」
「2回目の取引なのに 心配性ですね。大丈夫ですよ。こんないい商品他には もうありませんよ」
「わかっている でも もう一度」
そう言って箱から商品を出すと 品質の悪い物が底に隠してあった。
「もう 取引しないから来なくていいよ」真っ青な顔をして逃げていった。
「ソフィー どうしてわかったの」
「さっきの人 来た時から黒っぽい霧に包まれていたし 嫌な匂いがしたの」
「人の悪意が目に見える・・・・あなた 特別な力があるのかも 誰にも知られてはいけないわよ。
もしかして あなたのお母さんも この力を持っていたかも?」
「私は、わからない」
「あの手帳から見ても あなたのお母さんは、貴族だと思う。今は、身内がいないということね。
お母さんは、この能力を使って男爵家を支えていた。考えられない?男爵家の先代が、
身元がわからない あなたのお母さんを嫁に望んだ。それだけ優秀だったということだね。
とりあえず気をつけなさい」
ソフィーは、新しい力に驚いていた。人の悪意がわかるなんて、人の悪意は、善意より多い。
ソフィーを帰してからエマは、気にかかることを 調べることにした。
エマは、街で 店を経営しているが、実家は、少しは名の知れた魔法貴族だった。
父は、魔力が少ない。それが劣等感になって、魔力の高い母と結婚した。そして私と兄が生まれた。
兄も私も 父よりも魔力がある。家は、兄が継ぐことになっている。
私は、魔力のための政略結婚が嫌で 家を飛び出した。兄も父も 母の苦労を知っているので、
私を自由にさせてくれている。
子供の頃 絵本で、女神の加護というお話を読んだことがある。
``むかし 女神が悪魔に襲われた時 命に代えてその攻撃を受け、女神を助けた村娘がいた。
女神は、娘の勇気に感謝した。娘と娘の子孫に幸せになってもらいたいと
女神は、悪意がわかる加護を授けたという。加護を使って 娘の子孫は、幸せをつかんだ``
悪意がある者とは、結婚しても幸せにならない。それに反して 人の好意を増幅する魔法がある。
俗にいう魅了の魔法である。これもお伽噺の世界だ。魔法で、魅了して結婚しても魔法がとけたら
愛はなくなる。どちらが幸せになるのだろう。魔石に恋の魔力を込めて 魅了のリングとして
売られることもあるが おまじない程度だ。
ソフィーは、その女神の加護の系譜の娘かもしれない。
この加護が 彼女を助けてくれると いいけど 悪意がわかることで 人を信じられなくなったら
生きづらいだろう。エマは、ソフィーの行末が心配になった。
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