第5部分
作戦はこうだ。僕が虫眼鏡を大きくし、屋敷の黒い部分に光が行くよう定める。次に、ルイが虫眼鏡に向かって『フラッシュ』を放ち、屋敷に火をつける。以上。
【よぉし、みんな準備はいい?】
【いつでも】
【大丈夫ですよ!】
じゃ、始めようか。
「『ビッグ』」
と、虫眼鏡に向けて魔法を放った。これは、文字通り物を大きくする魔法だ。
そうしてぐんぐん虫眼鏡が大きくなっていき...、
【...でかくしすぎじゃない?】
【やりすぎちゃった...】
大きくなりすぎた。多分、高さ4mはある。
【ま、まあ、大丈夫でしょ。ルイ、フラッシュお願い】
【わかりました】「『フラッシュ』」!!
瞬間。光が現れ、虫眼鏡を通して屋敷の壁に一点の光が出来た。しばらくすると、煙を上げ、やがて小さな火が出てきた。が、
「「「はぁ...?」」」
なんと、マンドラゴラが屋敷の外に出てきて火を消し始めた。しかも器用に水を使って。なにこれ。
【...マンドラゴラにこんな知性あったっけ?】
【ないはずです...。というか、自立して動くこともないはずですが...】
【だよね...】
【...なぁ、なんかこっち見てない?】
【【え?】】
見ると、確かにこっちを見ていた。しかも血眼になって。
あれこれって...。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「「「うぎゃああああああああああ!?」」」
案の定というか、マンドラゴラたちが襲ってきた。そしてこっちもこっちで叫び声をあげながら僕たちは退散した。
「ダメだったな...」
「ま、まあ、他の人に先越されない限りこのクエストが終わることは無いから...」
あの後慌てて街に戻り、受付のお姉さんに事情を説明し、ここで待機してくださいと言われたので現在待機中である。
なんでも、ここ最近僕たちのパーティーが不可思議な現象に遭遇することが多いので、僕たちを守るため王都から優秀な人材を一定期間僕たちのパーティーに入れるというのだ。ちなみに、期間は僕たちが強くなれるまで、だそうだ。
すごい高飛車な人が来るのではと、僕たちは怯えている。
「一体誰が来るんでしょう...」
と、さっきからルイはそればっか言っている。相当脅えているようだ。
「きっと怖い人だよ」
「誰が怖い人だって?」
その声を聞いた瞬間、全員が背筋を伸ばした。振り向くと、まあお手本のような女戦士が立っていた。言葉から察するに、この人がさっき話してた王都からの派遣者だろう。
「私はマールル・ティファナ。マールルでいい。クルセイダーだ」
「僕はマイラ。冒険者だよ。こっちがアーチャーのタイセイで、ウィザードのルイ」
「知ってるよ。変な現象に結構巻き込まれてるんだって?」
「そうなんだよ。助けてくれよマールル」
と、まるで昔からの友だちのように接するタイセイ。まあ、僕の時もそうだったけど。
「おいおい、タイセイって言ったけ?頼み方の態度ってもんがあるんじゃないのかい?」
「俺フレンドリーな人間なんで」
「まったく...。本当だったら無礼討ちで切り刻んでいるところだけど、まあ、今回は特別だ。屋敷に案内してもらおうか?」
今とんでもないことを聞いた気がしたけど、全力で気づかないフリをして僕たちは屋敷へと向かった。
「ここかい?」
「はいそうです。それと、やっぱり耳栓しなくても大丈夫なんですね」
「当たり前さ。私はレベル50だからね。まあ、レベルMAXのマイラには負けるけど」
「あはは...。これで強かったら文句なしなんですけどね...」
相変わらずつんざくほどの音量がする館に戻ってきたが、流石というか、マールルさんは耳栓なしで立っていた。
「さあ、始めようか!」
と、マールルさんは意気揚々と剣を持って正面の扉を開けた。
まあ、その後がすごいことすごいこと。次々と襲いかかってくるマンドラゴラを1匹1匹確実に、しかもすごい速度で斬っていく。あっという間に全部倒してしまった。ついでに近くをついてきたタイセイたちのレベルも少し上がった。
「いや〜お疲れさん!今日は飲もう飲もう!」
「やっふ〜!」
と、酒を片手にそんなことを言うマールルさん。それにノリノリなタイセイ。
そして若干このノリに押され気味な僕とルイ。
「ほらほらどうした!酒は飲んでなんぼだろ?全然飲んでないじゃないか!」
「いや、あの私まだお酒飲めない歳で...」
「大丈夫大丈夫!少しなら大丈夫だって!」
などと無理やりルイに酒飲ませようとするし、この人絶対酒癖悪いしめんどくさい人だ...。
そんなこんなで、また新しいパーティメンバーが増えたとさ。