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第3章

「いやーお母さん美味いっす!店出せますよこれ!」


「あらぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃない♪褒めたって何も出ないわよ〜?」


 と言いつつ、おばさんは新しく作った卵焼きをタイセイの皿に盛った。満更でもない顔で。



 遡ること2時間ほど前。


「泊まるって...、僕んちに?」


「そうだよ。他にどの宿があるんだよ」


「僕の家勝手に宿にしないで」


「しょうがねぇじゃん金持ってないんだし」


「さっきの報酬があるじゃん」


「さっき宿の料金見たけど安いところでも1泊10G(ゴールド)だったぞ?」


「確認早!?」


 ちなみにさっきの報酬はタイセイと山分けしたので、現在タイセイの所持金は5G(ゴールド)である。

 とまあ、金のないタイセイを知らない馬小屋とかで寝かせるのもあれなので、結局うちに泊めることになったのだが...。


「お父さんすみませんが離してください!これ俺が取った唐揚げです!」


「若造が。母さんが作った唐揚げを食べようだなんて100年早いわ!」


 何故かおじさんとタイセイが唐揚げの争奪戦をやっているという謎展開になっている。

 てか僕のおじさんこんなキャラだったっけ?おばさんはおばさんで楽しそうに料理してるし。というか量がいつもの3倍くらいあるんだけど...。


「ほぉら、マイラもいっぱい食べな」


「あ、あぁうん。ありがとう」


 と、おばさんが僕の皿に出来たて料理を盛った。いやだから量が多いんだって。まあ、美味しいから結局食べるんだけど。

 テタルおばさんは昔料理人だったらしく、腕は一流だ。そしてカオルおじさんは、そんなおばさんの料理が好物だ。けど今日みたいに料理を死守するような感じは、今日まで見てなかった。ちょっと引いてる自分がいるのも事実である。



「あー食った食った」


 と、ご飯も食べ終え、文字通りお腹が膨れたタイセイが寝転びながらそんなことを言った。


「食べてすぐ寝ると太るよ?」


「うるしゃい!こんだけ食ったら寝るしかないでしょ」


「まあ、いいけど」


 と、膨らんだタイセイのお腹を擦りながらそう言った。

 しかしホントに丸いお腹だなぁ...。膨らみモンスターの「フグリー」にそっくりだ。


「ねぇ、俺の腹で遊ばないで。あ、おいそこ押すな。結構入ってるから。あ、待ってそこは...」


 なんか言ってるが気持ちいいので無視する。

 その後抵抗できないのをいいことに、思う存分ぷにぷにした。ちなみにすごい気持ち悪いことをしたと思ったのは翌日の早朝のことである。



 翌日。今日も今日とて僕らはクエストを受けにギルドに来ていたのだが...。


「「......」」


 なんだろう、すごい見られてる。後ろから。

 今日ギルドに入る時チラッと見えたけど、多分、服装的に魔法使いだと思う。女の子の。入った時からじっと見てたもん。今もだけど。

 そこから10分ぐらい僕たちの後ろにくっついてじっと見ている。

 とまあ、すごいやりにくいので、痺れを切らした僕はくるっと後ろに振り返って、


「何かごy」


「私を仲間に入れてください!!!」


 遮られてしまった。耳がキーンとするぐらいの声で。みんなびっくりしてこちらを見ている。


「えっと、僕たちのパーティー加入希望者...?」


「はいっ!!あなた方のパーティーに入れて欲しいのです!!」


「うんわかったから一旦ボリュームを抑えて?」


「無理です!!」


「どうして?」


「だってこれだけ大きな声で言わないと気が抜けて倒れます!!」


「...はい?」


「でも要件は伝えたので倒れますね!!」


 そう言った直後、その子の身体は重力にしたがって後ろに倒れた。

 ...大丈夫かな?かなり痛そうな音立てたけど。



「ほら、大丈夫?」


「はい、すみません...」


 とりあえずその子をベンチに寝かせ、色々応急処置をした。


「私、内気な性格でして、こう大きな声で言わないと自分のことを伝えられなくて...」


「なるほど。いわゆるコミュ障的な感じか」


「こみゅしょうが何なのか知りませんが、多分そんなのだと思います」


「ところで、僕たちのパーティーに入りたいって言ってたけど、それはどうして?」


「巨大モグラーと戦ったということを聞いたからです。実は私、モンスターの生体を見るのが好きで...」


「それじゃあ、君は動物魔法が使えるの?」


「いえ!あの、自分の魔法と全然関係がない趣味なんです...。そのせいか、魔法も1種類しか使えなくて...」


「種類?」


 と、タイセイが僕に目で訴えかけてたので、


「魔法使いの人は、()()()に多種多様な魔法を使うことができるんだ。魔法使い以外人は基本魔法っていうのしか使えない仕組みなんだ」


「へぇ〜。...ん?基本的...?」


「魔法使いの中にも、特定な魔法しか使えない者もいるんだ。そういう人たちは、普通の魔法使いより魔力が高かったり、その特定な魔法の威力が高かったりするんだ」


「そうなんです。そしてそれが私なんです...」


「「え?」」


 するとその子は服の第1ボタンを外して...。


「いや待て待て!」


 と、慌てて止めようとしたがもう外し終えていて、


「これが証拠です」


 と、首筋を見せてきた。見ると、かなり特殊なあざがある。これって...。


「もしかして君、色魔族...?」


 その問いに対し、その子はコクンと頷いた。


「なんだ色魔族って?」


「色魔族っていうのは、色に関する魔法が使える種族だよ。そしてその色魔族は、首筋に特殊なあざがあるんだ」


「じゃあ、さっき言ってた特殊な魔法使いってやつ?」


「そういうこと」


 へぇ〜っとタイセイは声を漏らした。


「あの...。それで私は入っていいのでしょうか...?」


 と、遠慮がちにその子は質問した。

 そうだったと本来の話の内容を思い出し、


「じゃあ、採用」


 と言った。



「ほ、ホントにいいんですか!?ホントにいいんですよね!?」


「いいって何度も言ってるじゃん!マイラも承諾してたし。大丈夫だよ置いてったりとかしないから!」


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 また新たなクエストを受け、タースト草原に移動する最中、新たにパーティーに加わった「ルイ・ルイ」は結構しつこく確認を取っている。

 ルイは、ジョの森という魔法使いが多く住んでいる森からやってきたそう。ちなみにレベルは24だそうだ。


「なぁ、まだ着かねぇの?」


「まだ先だよ。というかタースト草原にすら着いていないでしょ?」


「タースト草原でクエストするんじゃないのか?」


「タイセイ、クエスト内容よく見てなかったでしょ?」


「悪ぃ...」


 というわけで説明。


「今僕らが向かってるのはタースト草原の中心にあるマの館。そしてマンドラゴラの討伐だよ」


「ちょっと待ったマンドラゴラって言った今!?」


「そうだけど?」


「そうだけどじゃねーよ!マンドラゴラっつったら叫び声聞いただけで死ぬやつじゃん!いけるの!?」


「大丈夫だよ。引っこ抜かなきゃいいだけの話だから。遠くから燃やせばいいだけだから。それに、ルイが居るし」


「あぁ...、まあ、そうだな。うん」


「......」


「どうしたルイ?」


「あ...いえ、なんでも....」


「...そっか」



 その後、何体かモンスターと対峙し、その度倒して目的地まで進んだ。と言っても、タイセイが先にみんな矢で撃ち抜いただけなんだけども。(ちなみに僕も協力した)

 そして、


「なぁんで野宿なんだよぉ」


「仕方ないじゃん。今回のクエストは野宿なきゃ行けない所なんだから」


「聞いてねぇよ。あでも俺がクエスト内容見てなかっただけか?それだったら何も言えねぇ...」


「あはは。それじゃあ、タイセイ。セットした薪に火を灯して」


「いつの間にセットしたんだ...。あ、でも俺今日の分の魔力使っちまったからもう魔法使えないぞ?」


「え。じ、じゃあルイ、火を付けてくれない?」


「......」


「ルイ...?」


「ごめんなさい!!」


 と、いきなり頭を下げた。


「実は私...、白色の魔法しか使えないんです...」


「「え?」」


「本当にごめんなさい!!」


 な、なるほどねぇ...。だからさっきあんなにもタイセイに確認とってたわけだ。


「色魔族は1番少なくても基礎3色と言われる、赤、青、黄の3色は使えるはずなんです...。でも私は落ちこぼれで、どれにも当てはまらない白色しか使えなくて...」


「「......」」


「やっぱり、私じゃダメですよね...。すみませんでした...」


 と、この場を去ろうとしたので僕は、


「別に悪いことじゃないよ」


 と言った。


「え...?」


「誰だってさ、できないこと苦手なことってあるじゃん?それに、正直言えば僕も似たような境遇だし」


 と、僕は続けて自分の身の上のことを話した。


「レ、レベル99のバグですか...」


「そう。だから僕も同じような感じ。だからここに居ていいよ。タイセイもOKしたしね」


 そういうとルイは、泣きそうな顔をして、


「っ...!ありがとうございます!」


 と、深々と頭を下げた。

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