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黒毛玉発見

 慌てて追いかける。


 森の入り口、フィオが茂みの前にしゃがみこんでいた。


「どうしたんだ?」


 フィオが立ち上がって振り返る。


 その腕に、黒い毛玉が抱かれていた。


ノアが「わっ!」と驚き、アシュリーが「なにそれー!」と歓声を上げる。


「わんちゃん……」

「きゃん、きゃん!」


 毛玉が甲高い声で吠えた。


 目をこらすと、なるほど、耳としっぽが生えている。


「まあ、かわいい」

「野犬かな? それとも迷子?」


 ノアが首を傾げる。


 あたりを見回すが、母犬の姿はない。


 子犬がくぅん、と鼻を鳴らした。


「おなかへってるのかなー?」

「いま、ミルクを持ってきましょうね」


 ヤギのミルクを与えると、器に鼻を突っ込んで飲み始める。


「かわいいねー!」

「これも食べるかな?」


 ノアが干し肉をちぎって差し出すと、小さな口でかぶりついた。


「よっぽど空腹だったんだな」


 子犬はおなかいっぱいになったのか、今度はフィオたちに飛びついて顔を舐めはじめた。


「ふぁ……くすぐったい……」

「ねーねー、いっしょにあそぼー!」


 アシュリーが元気よく枝を投げる。


「とっておいでー!」

「わん!」


子犬はすっ飛んでいって枝をくわえると、小さな足で戻ってきた。


「わー、偉いね!」

「いいこ、いいこ……」


 子犬はもみくちゃになでられて嬉しそうだ。


「それにしても、本当に、いったいどこから来たんだろうね?」


 しっぽをちぎれんばかりに振っている子犬を、ノアが興味深そうにのぞき込む。


「そうだなぁ」


 周りは森だ。

 こんな小さな子犬が、どうやって迷い込んだのだろう。


 と、木々が不穏にざわめいた。

 茂みの奥に、まがまがしい気配が生まれる。


「! 下がれ!」


 子どもたちを退かせて身構える。


 茂みをなぎ倒して、黒い影が飛び出した。


『キキイイイイイイ!』


「!」


 目の前に長い影がそびえる。


 ノアが叫ぶ。


「サーペント……!」


 それは、巨大な蛇だった。

 ぬめる鱗が緑色に光り、生白い腹が不気味にうねっている。

 真横に裂けた口から、細い舌がのぞいた。

 黄色い眼が、子犬をとらえる。


『キシイイイイイイイイイ!』

「!」


 フィオが子犬を抱きしめ、かばう。


 その頭めがけて、蛇が太い胴をたわませ、殺到した。


「フィオ!」


『シャァァァア!』


 真っ赤な口蓋が開き、鋭い牙がフィオに迫る。


「……!」


 おれはとっさに魔術のイメージを練った。


 手をかざして発動させようとした、瞬間。


「ウォォ―――――――!」


 空を裂くような遠吠えがとどろいた。




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