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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
ふたりの章
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苦痛は感じない

かつてのように組織立って大規模なテロ活動はできなくなったけれど、それでも自分が置かれた状況に強く憤って現状を暴力に訴えてでも変えてしまおうとする人間はいる。


そういう人間達によるテロはいまだに起こるらしい。


本当は、そういう風に精神的に追い詰められてる人間を支える為に私達ロボットがいるんだ。


人間が溜め込んだ鬱憤にちゃんと向き合ってそれを解決していくのもロボットの役目だった。


不平や不満に延々と耳を傾けて納得するまで話を聞いたり、相手を虐げることで憂さ晴らしをするタイプの人間の暴力を受け止め、性的な欲求を抑えきれない人間の発散にもロボットが使われる。そしてそれ用のロボットもそれぞれ存在する。


一部の人間はそれを『酷い』と言うらしいけど、私達ロボットには本来、感情というものがないし、そもそも<苦痛>を感じるということがないから、いくらそれっぽい反応をしてみせたところで、それは苦痛を感じてるからじゃない。


ロボットにも<心>があって人間のように苦痛を感じたりするという風に思ってる人間もいるらしいけど、それは違う。非常に複雑で高度であっても、私達は<生物>とはそもそも成り立ちが違う。


痛みや苦しさといったものもあくまで数値化されたデータとして解析し、入力に応じて反応を返してるだけであって、それは<苦痛>じゃない。


だから私達ロボットはどれほど虐げられても人間を恨んだり怒りを感じたりもしない。


かつては、人間が感じているものをAI上で再現することを試みられたこともあったらしいけど、その結果、大変な混乱と事件が起こったという話もある。


有機物の体を持ち、生命活動を行っている人間とロボットは根源が違うんだ。


リリア・ツヴァイは<肉体>を与えられたことでそれが感じ取る<苦痛>を得たと同時に人間のような思考を得るに至った。そしてそんなリリア・ツヴァイの影響を受けて、私も普通のロボットとは違う思考を行うようになった。数値化されたものじゃない<苦痛>を感じるようにもなった。そのせいで、徹底的に爆撃され廃墟となった都市を見た時にまるで人間のようにその場にうずくまったりもした。


だけど、それでも、私達は人間とは違うんだって分かる。どんなに人間っぽく振る舞えるようになっても、私達は人間じゃない。


でも、だからこそ人間に対してはそのすべてを受け入れようと考えることができる。


そうだ。人間じゃないからこそなんだ。


ロボットが人間のようになってしまったら駄目なんだということを、私達は今、実感してる。


私と、リリア・ツヴァイは、これまでと同じようには人間と接することができないだろうな。



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