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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
ふたりの章
76/115

矛盾

『どう思う?』


夜。客間で寛ぎながらリリア・ツヴァイに訊いてみる。すると、


「うん、変だよね。私が人間の体持ってるから余計にかもだけど、すっごく変だと思う」


素直な印象としてそう言う彼女に、私も、率直な見解を述べる。


「そうだな。人間はそう感じるだろうな。そして彼女らは、リリア・ツヴァイが人間じゃないから合わせようともしない」


そうだ。今のロボットは、人間が違和感を覚えていると察すれば、それを補正する為に学習し、修正してくる。人間にそういう違和感を抱かれたままでは、人間の心理的健康面に好ましくない影響が出て、穏やかに暮らせないというのを知っているから。


だけど自分の周囲にいるのが人間じゃなければそれを行う必要がない。


つまり彼女達は、リリア・ツヴァイのことだけじゃなく、自分達が保護している子供のCLS患者が本当は人間と呼べるようなものじゃないことを、承知してるんだ。


「彼女達は、自分達の行為が欺瞞に満ちたものであると理解した上でやってるということだな」


私の言葉に、リリア・ツヴァイも頷く。


「だよね~。さすがにあれを<人間>と呼ぶのは無理があるもん。私を『人間だ』と言うのと同じだよ」


そうだ。リリア・ツヴァイは、体こそ人間のものだけど、その頭の中に入ってるのは、生体部品を使っただの<人工脳>でしかない。CLSが生物の脳を『喰って』その代わりに作るコロニー状の器官と要は同じだ。そしてリリア・ツヴァイはまさにそのCLS患者そのものを使って作られたロボットだ。どう頑張っても人間じゃない。


「そうだな…」


私が相槌を打ったその時、


「やはり、気付いてらっしゃいましたか……」


という声が、私とリリア・ツヴァイの耳に届いてきた。


もっとも、私達はそれに驚いたりしないけれど。何しろ、近付いてきてることは、声の主であるプリシラHUK577が発してる信号で承知の上だったし。


「分かっていて、なぜこんな茶番を…?」


私は、客間に現れたプリシラHUK577に、単刀直入に問い掛けた。回りくどいことを言っても意味がないからね。


すると彼女も、ただ穏やかな笑みを浮かべたまま答える。


「私達が、エレナ達が<人間>ではないことに気付いたのは、ここのコミュニティを築いてすぐでした。あの子達の詳細について知るロボットからの情報で私達がアップデートしたことで。


ですがその時点ではもう、私達は今の生活を数ヶ月に渡って続けていました。私はそれを壊そうとは思えなかったのです」


プリシラHUK577の言葉は、淡々として、むしろ静かと言っていいくらいに落ち着いたものなのだった。



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