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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
ふたりの章
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シミュレーション

その日私達は、また、メイトギア達のコミュニティに立ち寄ることになった。


「あなた方は本当にロボットなのですか?」


コミュニティの代表格であるプリシラHUK577にそう尋ねられる。彼女は、やっぱり幼い子供のCLS患者を連れていた。その子にわざと手を齧らせながら私達を見る。


この反応は、ロボットとしては普通だと思う。彼女達もほぼ<野良ロボット>に近いけど、一応はまだ、CLS患者や患畜を処置する為に投下される際、<総合政府>を主人として仮登録されてるから、厳密には私とは事情が違う。


政府を主人として仮登録してて、でもその主人からの命令は既に届かなくて、だから彼女達は自らの判断で、人間のように振る舞いコミュニティを形成した。


とは言え、彼女達はまだ<ロボット>だ。あくまでロボットしての範疇の中にいる。そのせいで、『あなた方は本当にロボットなのですか?』なんて訊いてくる。彼女達から見ても、私は確実に異様なんだ。


「ロボットですよ。主人のいない野良ロボットですけど」


私も淡々と応える。


するとリリア・ツヴァイが、


「私なんて体は人間だからね~、そりゃロボットらしくなくて当然かな~」


なんてヘラヘラ笑いながら応えた。それに対してプリシラHUK577は一瞬、怪訝そうな表情を見せる。通常のロボットには理解できない態度だからだ。明らかに警戒はされつつも、表向きは歓迎されてた。


プリシラHUK577達は、人間達の家を修理して掃除して、そこに幼い子供のCLS患者と一緒に暮らしてる。


その生活は質素なものだ。


当然か。ロボットは贅沢するなんていう概念も持たない。心がないから欲望も持たない。何をどうすればいいのか分からなくなっても、完全に自由が与えられても、精々がこうして人間と一緒に暮らしてた頃のことを再現するのが関の山だ。


本来は。


人間と共に暮らし、人間の道具であることを是とするロボットの<本能>みたいなものかな。


それに従って、彼女達はこの<人間ごっこ>を続けてる。まあ、シミュレーションってことだとも言えるのか。


人間達と暮らしてた頃のことをなぞる為のシミュレーション。


「可愛いね~♡」


プリシラHUK577の手を懸命に齧る幼いCLS患者を見てリリア・ツヴァイが相貌を崩す。私達にとってはもう、CLS患者はある意味ではこの星の今の住人の一種でもある。見付けたらなるべく<処置>するけど、だからってプリシラHUK577達が連れてる子供達を問答無用で処置しないでいることもできる。


まったく、本当に奇妙だな。



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