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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリアテレサの章
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メイトギア

そのモーテルは、飲料水は定期的に配達されるものを利用していたんだろうけど、それ以外は地下水を汲み上げて濾過して使っているようだったから、シャワーが出た。看板を照らす照明が点いていたことからも分かる通り、アミダ・リアクターが設置されているから電気はそれこそ問題なくてヒーターも生きてるからお湯も出る。


店舗を管理するAIが機能してなくても、それは人間の管理者のサポート役みたいなものだから、個々の機能にはそれほど影響しない。


そこで、数日ぶりにリリア・ツヴァイは体を洗うことにした。シャワーだけじゃなく、浴槽にも湯を溜めてゆっくりと浸かった。


その間、私は、部屋にはしっかりと鍵をかけて戸締りをして、客室とは別に設置されたロボット用のメンテナンスルームに入った。スチーム洗浄だけの簡易型のじゃなくて、ちゃんとメンテナンス用ナノマシンも使えるタイプだったのはありがたかった。


ちなみに現在では、私達人型のロボットだけでなく、それなりの価格以上の機器はすべて完璧な防水機能を備えている為、いざとなったら人間用のシャワーでも洗浄はできるんだけど、やっぱりこっちの方が負荷が少なくていい。人間風に言うなら、『落ち着く』ってことかな。


メンテナンスと同時に充電も行い、完全にリフレッシュして私はリリア・ツヴァイのいる客室に戻った。


でも、彼女はまだ風呂に入ってた。湯に浸かって寛いでいることが<心地好い>のだろう。時間を無駄にしているとしか思えないけれど、これが人間というものかも知れない。


何度も言うように、リリア・ツヴァイは厳密には人間じゃない。けれどその<体>の基になっているのは紛れもなく人間のそれだった。だから人間の五感はほぼそのまま残っているし、人間としての反応もする。


「…のぼせないうちに上がりなさいよ」


湯船の中でだらしない顔をしている彼女に、私はそう声を掛けた。意味のない行動だけど、あくまでそういう演出として、ということかな。


そんな私に手の平をひらひらさせて彼女は応えた。部分的に人間的な仕草は垣間見える。


しばらくベッドに座って待っていると、リリア・ツヴァイが裸のままで体も拭かず出てきた。未熟な人間の少女の体を滴が伝ってぽたぽたと床に落ちている。私に拭かせるつもりなのだ。


まったく。そんなところばかり人間っぽい。


バスタオルを手にして彼女の体を丁寧に拭く。彼女とは逆に、私のこういうところはロボットっぽいのか。そうすることは決して煩わしくない。これが元々の私達の役目だからだろうか。


私達メイトギアと呼ばれるロボットは、本来、介護や介助が必要になった人間や、赤ん坊の世話をする為に開発されたのだと聞く。人間に似せて作られているのはその為だ。


だからこういうことをせずにいられないのは、いわば私達メイトギアの本能とも言うべきものなのかもしれない。



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