表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリア・ツヴァイの章
62/115

フランネルSJ30FH

たぶん、八歳くらいの女の子と思われる、ピンクのワンピースをまとった子供のCLS患者と一緒に現れたのは、フランネルSJ30FHという、金髪ロングヘア碧眼でモデル体型のメイトギアだった。彼女はその手に、日本刀のような剣を携えてた。おそらく超振動刀だ。でないと、要人警護仕様のメイトギアには小火器じゃ歯が立たないからね。


リリアテレサは一般仕様のメイトギアで、護身用の小口径の拳銃でも致命的なダメージを受けるけど、<大は小を兼ねる>ってことなんだろう。用心して武装してるんだと思う。ちなみにフランネルSJ30FH自身も要人警護仕様のメイトギアだ。だから元々、武装なんかしなくてもリリアテレサじゃまったく勝ち目がない。勝ち目がないどころか、全力で掛かられたら、一秒と掛からずに破壊される筈だ。


それくらいの力の差がある。


私達が<CLS患者の処置>を目的にしてないということで通過は認めてもらえたけど、偵察を兼ねて接近してきたというのもあるんだろうな。


「こんにちは。いい天気ですね」


フランネルSJ30FHが笑顔で話しかけてくる。その彼女の体に、子供のCLS患者が噛み付いてた。食べようとしてるんだ。でも当然、全く歯が立たない。なのに食べようとして噛み付く。ただ噛み付く。食べられないということが理解できなくてただ噛み付く。


CLS患者に知性はない。学習能力もない。ただただ食欲だけの存在だ。そんな子供のCLS患者を見詰めてフランネルSJ30FHは<お母さんの笑顔>をしてみせた。


それは、メイトギアに付与された能力の一つだった。子供をあたたかく見守る母親の笑顔を参考に作られた表情だ。これで人間の子供を安心させる。


でも、CLS患者にはそんなものは通じない。通じないけど、フランネルSJ30FHはその子供のCLS患者を人間として認識してるから、そうするんだ。


「はいはい、お腹が空いたのね。ごめんなさい、この子にごはんをあげなきゃ」


そう言ってフランネルSJ30FHは、腰に付けたポシェットから何かを取り出した。あの、ダンゴムシに似た虫だ。もぞもぞと動くそれを差し出すと、子供のCLS患者が虫を手に取ってバリバリと貪り始めた。『食べる』っていうよりやっぱり『貪り食う』って感じだ。


これを<生きた人間>と判断するメイトギアを、人間はどう思うかな……


なんてことを考えてしまった。


だけどフランネルSJ30FHは、虫を食べる子供のCLS患者から私達の方に視線を移して訊いてきた。いや、リリアテレサに視線を向けて、か。


「失礼ですが、あなたが連れているそちらの方は、どういった方なのでしょう?」


私のことを訊いてるんだとすぐに分かったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ