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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリアテレサの章
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とりとめのない思考

この惑星(ほし)は、見れば見るほど<地球>に似ている。もっとも、私自身は地球を直に見たことはない。地球にいたことのあるロボットが集積したデータを私も持っているだけだ。人間が映像や言葉でそれを見聞きするよりもはるかに具体的で濃密で、と言うより、私自身がかつて地球にいたのとほぼ変わらないくらいに記憶としてあるけれど、それでも<私自身は地球にはいなかった>という事実は変わらない。


まあそれはいいとして、とにかくこの惑星(ほし)の環境は、確率的にはおよそ有り得ないほど地球に似ている。まるで、どちらがオリジナルでどちらがコピーか分からないけれど、それこそコピーでもしたのではないかというくらいに。


でもそんなことも些細な問題だ。そんなことを考察するのは人間の学者がやればいい。もっとも、それを調べる為にこの惑星(ほし)に降り立てば、早ければ数十分で死に至るけどね。


もちろん人間達もそこまで馬鹿じゃない。今のこの惑星(ほし)に自分達が降り立つなんて愚かなことはしない。そんなことをするのは、博士くらいだ。あの人は狂ってるから。人間基準で言えば。


なんてとりとめのない思考を行ってしまうのは、他にすることがないからだな。


疲れて歩けなくなったリリア・ツヴァイをまたリアカーに乗せて歩く。すると私の地図情報に、モーテルが引っかかってきた。あと十キロか。今のペースでも三時間と掛からずに着けるな。今日はそこで休んで、毛布か何かを手に入れて、私も充電して、明日に備えよう。


日が落ちて、また資料写真のような星空の下、私はただリアカーを引いて歩いた。リリア・ツヴァイも何も言わない。リアカーに寝ころんで星空を見上げているだけだ。


何をするでもなく、単に呼吸して代謝を行っているだけの存在。私にとっては<足枷>でさえある。けれど見捨てることもできない。それは私がそのように作られたロボットだから。


人間ならばこういう時、どうするのだろう。何の役にも立たないお荷物を、見捨てないのか、見捨てていくのか。


私がそんなことを考察しても意味はない。意味はないけれどついそんなことを考えてしまう。だから私も、かなり壊れてきてるのだろう。ロボットとしては。


でも今はまだ、機能としては問題ない。故にこの旅もまだ終わらない。十年か百年か、それとももっと先までか。


それさえまだ分からない。きっと、終わった時に『これで終わりだ』と分かるんだろうな。


そう考えていた私の視界の先に、誰も客が来る宛てもないにも拘らず煌々と闇の中に浮かび上がったモーテルの看板が見えてきたのだった。



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