魂
リリアテレサは、モーテルの管理室に入りそれぞれの部屋の鍵を開け、中を確認していった。いくつかの部屋には服と人の形に積もった塵の山があって、CLS患者がいたらしいことを窺わせた。
その中の一つの部屋に、まだタグも外されてない服が入った紙袋が置かれてた。ちょうど私が着られそうなワンピースだった。たぶん、そこに宿泊してた客が買ったものなんだろう。しかも子供服と子供くらいの大きさの塵の山もあった。同じ部屋には、大人二人分くらいの塵の山もあって、家族連れだったんだろうなって思わせた。
『ありがたく使わせてもらいます…』
まるで人間みたいに、私は目を瞑って言葉には出さずにそう言った。
こういうのは、本来、ロボットにはない考え方だ。ロボットは死後の世界も霊魂も信じないし、そういう概念そのものが理解できない。これは人間ならではのものだと思う。
私は人間の体を持ってるから辛うじてそういう風に考えたがる人間の気持ちが想像できた。胸が苦しいんだ。死んだ人のことを考えると。
だから死んでからもどこかにいるんだって思いたいんだろうな。
量子的に考えると、量子テレポートでその人が生きていた形跡と言うか痕跡と言うかデータのようなものが残される可能性はあるとは言われてるけどね。
まだ、立証はされてないけど。
何しろ、何らかのデータがどこかに刻まれてるんだとしてもそれを取り出す方法がまだないから。そもそもどこに記されてるかも判明していないし。どこにデータがあるのか分からないのなら取り出しようもない。
それが確実にできるなら、人間が<魂>とか呼んでるものが存在すると立証できるのかもしれないけど。だけど取り出して再現できない以上は、使えない訳だからないのと同じなのかな。
ただ、量子テレポート通信の実用化はそう遠くないという話もある。これまでは量子テレポートでは任意の形で有意な量子テレポートが起こる訳じゃないとされてきてて、だから確実な情報伝達が行われる訳じゃないと見られてたのが、任意の形で離れた位置にある量子が励起される方法が確立されつつあるんだって。
そうすると、何百光年離れててもほぼタイムラグなく、しかもそれまでの電波や光を利用したものと違って、通信機同士の間にある電磁波や重力といったものの影響も受けないから、これまで電波や光、または超空間通信では届かなかったところにも情報伝達ができるようになるとか。<人類最後の発明品>とかも言われてるみたい。それが実用化されれば、また約千年ぶりの新発明ってことになるのか。
なんて、服を拝借するだけでどうしてこんな話してるのかな。私は。




