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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリア・ツヴァイの章
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気まぐれの残滓

感情を持たないロボットである筈のリリアテレサが都市の廃墟を見てうずくまってしまったのは、私の思考の一部を共有しているからだと思う。私が肉体の反応から得た<感情>を彼女も受け取ってしまって、本来はある筈のない<肉体の反応>を知覚してしまったからじゃないかな。ある種の<幻肢痛>みたいな?。


「大丈夫だよ。私も大丈夫なんだから、あなただって大丈夫」


そう声を掛けながら、私はリリアテレサを抱き締めた。


しばらくしてようやく、彼女が体を起こした。


「ごめん…」


ロボットらしからぬ謝罪に、私も苦笑いになってしまう。


「いいよ。この前は私が迷惑かけたし」


それに彼女も頷いて、ようやくまた歩き始めることができた。一度思考が整理できると、対処法を確立できたのかそれからはもういつもの彼女に戻ってた。


でも、彼女も私とリンクしてる限りは<感情>の影響を受けるんだろうなとは思った。


だけど、私達はそれでいいんじゃないかな。博士もそういうのを期待してたんじゃないかな。だってあの人、私達に感情を生じさせて自分に反逆させようとしてたフシがあるし。それ自体が実験だった可能性が高いし。


博士は、本当に変な人だった。すごく頭が良くて、すごく頭がおかしい人だった。ロボットは本来、人間のことを<頭がおかしい>だなんて評価できないのに、あの人はわざわざそういうことを言わせてた。リリアテレサに。だから私も言えるの。


もっとも、普段は殆ど口きかないようにしてるけどさ。相手がリリアテレサだといちいち口に出す必要も殆どないし。


私の考えてることは、彼女にも殆ど分かる筈だから。


それでもつい口に出てしまうことはあるけど。その辺りも、人間の体を使ってるからなのかな。口が勝手に動くことがあるんだ。機械の体みたいに完全には制御できない感じ。


こういうことも、博士が敢えてこんな無茶苦茶なことしたから分かったのかな。


そんなことも考えつつ、私達は再び歩き出した。この惑星の光景を記録する為に。


博士の最後の地を記録する為に。


アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は死んだ。あの人の<思考>はまだ生きてるかもだけど、人間としてのアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士は間違いなく死んだ。今残っているのはあの人の残滓。


CLSを発症しなかった人間を使って、人工的にCLSを発症しないようにしたクローンを使って、私と同じようにメイトギアを本体とした人間の体を持ったロボットを使って、この惑星にまた人間の社会を作ろうとしてる博士。


でもそれも、あの人の気まぐれの残滓なんだよね。


だけど確かに、この惑星には人間の社会が生まれつつある。今はまだまだ小さいけれど。



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