表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリアテレサの章
23/115

リリア・ツヴァイ

いちいち墓を作る意味はないと私は思ってる。何しろ、風が吹くようなところで朽ち果てた者は風に吹かれて散ってしまうのだから。そういうのは塵さえ回収できない。そこにいたという形跡が失われてしまっては墓すら建てようがない。そういう者達についてはどうすればいいのか。


犠牲者の為の合同慰霊碑なら、既に地球や移住者達の出身惑星にそれぞれ建てられている。鎮魂の為のモニュメントならそちらがあれば十分な筈だ。


この惑星(ほし)はいまだ、ロボット艦隊によって厳重に封鎖されていて人間は近寄ることさえできない。もし近寄れば二度と出ることはできない。たとえ死体になってでも出ることはできない。遺品一つ持ち帰ることも許されてない。そんなことをしようとすれば、この惑星を封鎖している攻撃衛星やロボット艦隊による容赦のない攻撃を受けて、文字通り塵一つ残さず消滅させられる。


生き物を<動く死体>に変える病の実態を知ればそれは当然の対応だと思う。そうするしか封じ込めておく方法がないのだから。


だから私もリリア・ツヴァイも、もう二度とこの惑星を出ることはできない。私もそうだし、彼女の基になった人間も、推定される年齢から考えると元は移住者の一人だった筈だ。だから『もう二度と』なのだ。


もっとも、彼女に人間だった頃の記憶はないけれど。忘れてるとか記憶喪失とかじゃない。『物理的に記憶が存在してない』という意味だ。


何故なら彼女は、本来、<動く死体>の一つだったのだから。それを博士が<改造>して、人間のようにも見えるものにしてしまっただけだから。


彼女の頭の中にあるのは、生体部品を使った人工脳だ。人間の脳と入れ替わったカビのコロニーのような器官を除去して、そこに人工脳を入れて作られた、『人間の体を使ったロボットのようなもの』なのだから。


だから彼女は『人間じゃない』。彼女の頭の中にあるのも人間の脳じゃないから。その事実を知ってる私は、彼女を人間としては認識できない。


……


……


だけど……彼女は確かに人間じゃないけど、少なくとも<動く死体>でもなくなっている。じゃあ、彼女は、リリア・ツヴァイは何なのだろう? 人間でもなく、動く死体でもない。一番近いのはロボットだけど、彼女の体そのものは極めて人間に近いそれだ。


しかも、彼女は博士が作ったそれの中でも特別なものだった。動く死体と化したことで人間の肉体とは一部機能が違ってしまってたその体を、博士はわざわざ人間のそれに近付けたんだ。クローン培養した細胞を使って。だから彼女はトイレにもいく。


そういう実験に、彼女は使われていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ