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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリアテレサの章
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看護

夜通し歩いて<都市の残骸>を迂回し、私は元の道路へと戻って再び東へ東へと歩いて行った。リアカーの中では、毛布にくるまってリリア・ツヴァイが眠っていた。


おそらくこれからも、都市の近くを通ることにはなるだろうけれど、次からはあらかじめ迂回ルートを選ぶだろう。彼女に無闇にストレスを掛けたところで得るものはない。


ただ、あれが、この惑星(ほし)の現実の一部であることには違いない。それを目の当たりにしたこと自体には、意味はあると思う。


でもそれと同時に、彼女にとっては想定以上のストレスだったようだ。リリア・ツヴァイの体温が上昇し、彼女の体が小刻みに震えだすのが分かった。寒気を感じているんだ。過剰なストレスにより、肉体の方に異変が生じたものと思われる。


私はリアカーを路肩に寄せて立ち止まり、改めて彼女を見た。顔が赤く、呼吸が浅く早い。すぐに深刻なダメージとまではいかないにしても、このままにしておくのはマズいと判断する。


そこで私もリアカーの荷台に乗り、彼女と一緒に毛布にくるまった。機体温度を上げ、保温する。


しばらくすると体の震えが収まってきた。寒気がマシになってきたのだろう。彼女のバイタルサインを常時監視し、その時々に応じて最適と思われる温度を維持する。寒気が治まってくると今度は暑くなってきたようだ。体温がさらに高くなり、発汗も見られる。私は部分的に機体温度を下げ、手の平を彼女の首筋に差し込む。体温が上がりすぎないように、太い血管が通っている部分を冷やして余分な熱を奪う。


現在の体温は三十九度。この状態があまり長く続くようでは解熱剤などを用いて熱を下げる必要があるかもしれない。しかし今は、その持ち合わせがない。都市には既にいかなる店舗も残っておらず、医薬品を手に入れることは無理だった。だからこうやって熱を奪っていくしかない。


太陽が正中を過ぎたあたり、リリア・ツヴァイの体温は下がる傾向を見せ始めた。どうやら峠は越したようだ。結果的に大事には至らなかった。しかし、今後どこかで解熱剤などの一般的な薬品を手に入れておく必要があると実感した。今回のように冷やすだけでは間に合わないこともあり得るだろうから。


モーテルで毛布と一緒に回収していたタオルを飲料水で濡らし、彼女の服を脱がせて汗を拭く。これもまた、私達メイトギアの通常の役目だった。看護や介護の現場では私達の姿を見ないことはない。


ジャージに着替えさせ、毛布を掛けると、彼女はスー、スー、と落ち着いた寝息を立てて眠っていたのだった。



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