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ロボ娘のち少女、ときどきゾンビ  作者: 京衛武百十
リリアテレサの章
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日没

乾いた土埃の匂いに満たされた空気が、体にまとわりつくような湿気を帯びた土の匂いにすべて入れ替わった中、私はリリア・ツヴァイと共にまた道を歩き出した。


彼女の鼻でもこの匂いは感じ取れるのが分かる。


あと、気温は下がったからおそらく心配はないけれど、この湿度だと少し気温が上がれば熱中症に注意を払う必要が出てくるかもしれない。


けれど、その兆候もないまま、日が傾いてきた。気温も一気に下がってくる。もう熱中症の可能性もほぼなくなった。ペースを変えることなく私達は歩いた。


あれほどの雨だったのが嘘のように空には殆ど雲がなく、しかし太陽は真っ赤な炭火のようにゆっくりと地平線へと沈んでいった。


何もかもが赤く染まり、リリア・ツヴァイさえ真っ赤だった。同じように私の体も真っ赤だ。


「赤いね…」


ぽつりと彼女がそれだけを口にした。赤いなんて見れば分かる。それをなぜ口に出すのかが分からない。だけど、私達メイトギアは、本来、夕日を見た人間に『赤いね』と言われれば『そうですね』と応えるように作られている。人間が色の種類を問い掛けている訳じゃないことは分かるからだ。でも私達には、人間がどうしてそんなことを言葉にするのかが理解できないんだ。


でも、今は何となく分かるかもしれない。彼女は同意や共感さえ求めてない。ただただそれが口に出てしまっただけだ。そこに理屈なんかない。もっと詳細に解析すれば何らかの理屈で説明できるのかもしれないけど、それは大事なことじゃないんだろうな。ただ何となく胸の奥でまた何かが蠢いているような感覚がある。これは<寂寥感>と表現すればいいものだろうか。人間は夕日を見るとこんな反応があるということなのか。


もちろん毎回必ずそうなる訳じゃないことも分かってる。でもかなりの確率でこうなるという知識も与えられていた。


そして私も、


「うん、赤いね…」


と応えていたのだった。




完全に日が暮れてまた空が星で満ちる頃、彼女は歩き疲れてしまってリアカーに乗った。少し冷え込んできたから毛布を体に巻きつけて、ぼんやりと星を見てる。


彼女が眠ってしまった頃に次のモーテルに到着し、またそこで休むことにした。今度はあいつらは出てこなかった。覗いた部屋は綺麗なままだったから埃だけをモーテルに備えられてた掃除機で吸って彼女には先に眠ってもらって、私はまたメンテナンスルームで充電とメンテナンスを行った。もっとも、今回はまだ昨日メンテナンスしたところだったこともあって、ほぼ洗浄だけだったけど。



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