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我が儘に異世界を  作者: かでぃー
第三章冒険者
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招かざる来訪者③


ここなら死角からの不意討ちはないと踏み、自らをエサとして釣り上げて森林地帯から草原まで誘導することができた。


通常なら大群相手に単独で挑む際は、開けた場所を避けるのが定石だ。そうでなければ包囲され、嬲り殺されるのが明白であるのにも関わらずに脩司はこの場所を選んだ。


いや、選ばざる得なかった。


トミナから引き剥がし、この場所に留めさせる策としてはこれ思い付かなかった。





━━かといって勝機が無いわけでもない。


『こっからはてめぇのデキ次第だ』

「うるっせぇ、もっとマシな激励の一つくらい言えねぇのか」

『口を動かす前に手ぇ動かせ!ほれ来んぞ?』


ベルガに言われて恐る恐る振り向くとある程度の距離をとったゴブリン達は既に俺を取り囲み、弓を持っているゴブリンが狙いを定めて射る寸前であった。


何匹か近距離戦を挑んで来ると見越していたが、ゴブリンキングが統率しているのか無駄に突っ込んでくるゴブリンはいない。ここで相手を盾に矢を防ぐ選択肢は外れた。


「ちっ、こりゃぁフェイズ2だな。魔力がごっそり無くなるがしょうがねぇ」


だか、予想外というわけでもない。脩司は森林を抜けてくるまでの間に魔力を練り上げており、対応策を用意している。

その魔力を一気に解放しすると脩司の身体から蒼白い靄を放ち、構築していく。


これまでの訓練を経て魔力具現化は己のイメージが重要ということは理解できてた。その詳細が詳しければ詳しいほど強度も高く、構築も早いということもだ。


「だりゃぁぁぁぁ」


子供の頃よく祖母の家で一緒に作ったそれは瞬時に構築され、それを見てあわてて放ったゴブリンの矢をすんなりと防ぎきった。透き通る蒼色でできたそれの一部にぽっかり空いた入り口からしてやったりの脩司は笑みを見せつけてからその入り口を狭めた。


「グゴォァ」


矢を防がれ、脩司の余裕の表情に怒りに震えるゴブリンキングは振り上げた手を脩司に向け振り下ろしゴブリン達を突撃させてきた。

なんとか障壁を突破しようと剣や棍棒で叩いたり突き刺したりしているが多少削れる位でびくともしておらず、深く削れたと思えば即座に脩司が補修を行い未然に防いでいく。

漸く一部のゴブリンが入り口が閉まりきっていないことに気づいたらしく狭まった所を抜け中に侵入してくると待ってましたとばかり脩司の拳が襲い、侵入者を撃退していく。


脩司がイメージした防御壁は言うなれば特大のかまくらだ。かまくらは強度を高める為に雪に水を含ませ固めるそしてなにより分厚い。そう易々と壊せる代物ではないのだ。弱点といえば密閉空間になってしまうため空気口が必須なのと熱に弱いということのみと言ってもいいくらいだ。

そのかまくらの入り口を狭めたのはゴブリンがなだれ込んで来るのを防止するためだ。唯一入り口である空気口が小さいと中の人が酸欠になってしまうので元の面積と同じくなるように高さを出して対応させた。

これで一度に入ってこられるゴブリンは5匹で、それなら脩司一人でも楽々狩れる。


そうやって少しずつゴブリンの数を減らしていくうちにゴブリン達は中の状況も外からまる見えだからかゴブリンキングに強化されているにも関わらず戦々恐々としている。


入ってきたホブゴブリンの最後の1匹を蹴り飛ばして息を整える。俺の方は順調に事が運んでいて、こんな状況に陥るとは露にも思っていなかったという顔をしているゴブリンキングを見ると痛快だが


「はぁはぁもうすぐ出てくると思うか?」

『できりゃもっと数を減らしてからがいいが、そうも言ってられそうにねぇな』

「様子見が終われば畳み掛けるか・・・当然と言えば当然か・・・・」


いくら恐怖にかられているとはいえ未だに100を越えるゴブリンに囲まれている状況で楽観視はできない。逃げ切るにしても、倒すにしても奥に控えるゴブリンキングの実力が測れていないことからだ。


『残りの魔力はどんくれぇだ?』

「まだ半分よりちょいある。最低でも3割くれぇはゴブリンキング(アイツ)に残しとかなきゃしんどい」

『だったらこんな策はどうよ?』

「どんな策が─っておいごらぁタイミング悪ぃぞ。クソッタレ共そこでステイしてろや」


策を聞こうとしたところに次のゴブリングループが入り口を抜けて出てきた。脳内会話に切り替え撃退しながらベルガの策に耳を傾けていくとその表情から血の気が引いていた。


「おめぇは俺をなんだと思ってやがる。分かってる死地に飛び込む奴がいるかよ」

『気にすんな。死地とは越えるために存在するものだ』

「いきなし詩人になんじゃねぇ。やるこっちの身にもなれ。タイミング外しゃ即死もんだぞ!?」

『他になんかあんのかおい?』

「・・・・・・ねぇよ・・・いつかおめぇに右ストレートお見舞してやっからな」


その後も虚しい去勢がかまくらの中に反響したのはいうまでもない。

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