旗揚げ
パーティーを組んで早2日、今日は依頼も受けず俺達は宿の居間で一様に頭を悩ませてる真っ最中だ。
「なんでこれじゃ駄目なんですかー?」
「普通に考えてありと思わないだろ」
「貴方は人の評価を気にしすぎです。もう少し柔軟な考えを持つべきです」
「アルモはもっと評価を気にした方がいいと思うぞ。それとアルモの案も却下だからな」
「それは何故ですか?これ以上ない案ですよ?」
「アルちゃんごめん・・・私もそればっかりはー・・・」
「そんな・・・シーラ様まで・・・・・」
いつも話す相手を真っ直ぐ見つめるシーラですら視線を泳がせながら否定している。
「どうするんですかー?ぜんぜーん決まりそうにもないじゃないですかー」
「だってさコロコロ変えるのも変だろ?やっぱり納得して決めたいじゃないか!」
「ですがこれ以上時間をかけるのは無意味です。やはりここは妥協してもらい私の案を採用してみませんか?」
「「却下だ(ですー)」」
俺達の即座の拒否にガックリ肩を落としてしまったアルモだが、その案だけは絶対通す訳にはいかない。
「少し捻ってみてしっくり来るものを探すのがいいんじゃないか?」
「それもそうですがー私は分かりやすく覚えやすいのが良いですー」
「だな。『さざめく風』なんてどうだ?」
「カッコつけ過ぎて嫌ですー」
「自信過剰が溢れ出過ぎですね。そこまでの領域だと嫌悪感が出そうです」
「そこまで言わなくてもいいだろ」
八つ当たり気味のアルモはいつも以上に言葉にトゲが多くて泣いてしまいそうだ。
しか~し、ここは負けられないのだ。今後に関わる大事なパーティー名を変なものにしないためにも!!・・・だけどこの自由奔放な二人を相手にどう言えば納得してくれるだろうか?横文字?いや、四文字熟語か?はたまた詩みたいなのが良いのか?くそっわからんぞ。
「『仲良し組』これなんてどうー?」
「ないだろ」
「『絶対君主』です」
「無理」
「『ワイワイし隊』ですー」
「ギャグかよ!もっと捻って」
「『主君』は?」
「それにどうつっこめとおっしゃる?」
『『鈍感王子と気まぐれ給仕係』で決まりだ』
「ここぞとばかり荒らしに入るな!」
アカーンッ!!これ、纏まる気が全くしないぞ。シーラは幼稚すぎるし、アルモはベルガ至上主義が強いわ。もっと簡単に俺らを表すものが・・・
「あっ!」
「何か思い付いたー?」
「『ネスポルネ』ってどうだ?俺の国で奔放っていう意味がある言葉なんだが、何事にも囚われない冒険者の俺達にはぴったりじゃないか?」
「ネスポルネ・・ネスポルネ!うん、いいよー私は賛成ー」
「裏社会にありそうな感じですが、まぁいいでしょう」
ぃよっしゃあぁぁぁ!!!これで一歩前進できる。親父の会社にポーランド人のプログラマーがいて助かった。レヴァンさんポーランド語を教えてくれてありがとう
「よし、パーティー名も決まったことだし。次はリーダーを誰にするかだけど、俺はシーラがいいと思う。このパーティーを組むきっかけを創ったし、周りの気遣いなんかも上手だ。その脇を俺とアルモで補佐をしていきたいと考えているがどうだ?」
「え?わたしー?」
「私もシーラ様がいいと考えます」
指名されて驚いているシーラに追撃の形でアルモが賛同してくれたためか断りにくそうに眉をへの字に曲げている。
「わたしは皆を引っ張っていくことは出来ないよー。その点ならシュウジの方がいいと思うよー」
やんわりと拒否してくるシーラに俺が最近気がついたことをありのままに伝えていく。
「自分で言うのもあれだが、俺は視野が狭すぎる。状況判断が遅いやつにやらせてもそのパーティーは長く続かない。要するにプライドがデカくて理解が追いつかないと思ってもらっていい」
「よくわかっていらしゃいますね。明日は槍が降るのですか?」
「五月蝿いよ」
内心を話すのは恥ずかしい上におちょくられてつっこみすらまともに出来やしない。
そんな頭を掻く俺を見ていて決心がついたのかシーラが口を開いた。
「んーわかったよー。微力ながら全力でやらせてもらうねー。但し絶対に協力はしてもらうからねー」
「お任せください。このアルモがシーラ様をお助けいたします」
「おう!任せとけ」
『俺様も忘れんじゃねぇぞ?』
全員が拳を作り軽くコツンとぶつけ合い、これからパーティーが本格的に始動していくためギルドに申請しに向かったのは、この後直ぐだった




