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我が儘に異世界を  作者: かでぃー
第三章冒険者
44/66

シーラの実力


食休みもほどほどにトミナへ向け出発した。アルモの話ではトミナには明日の昼辺りには到着できるという。


それまでにシーラ達の実力を見極めなくてはならない。俺的には連れていきたくないというのが本音ではあるが、理由もなしに断ることはできない為にその理由作りには丁度よかった。只1つ懸念があるとすればシーラが職業を固定された人物だということだ。どんな職業に固定されたのかをあの時に疑問視していなかったことを少しばかり後悔していたりする。


移動を始めて数時間、日も高くなり草原を抜けてトミナに続く街道に出ることはできていた。その事はいいのだが一人だけ機嫌が悪くなり、とてつもない負のオーラを周囲に放っている。


「もうーなんで魔物がでてこないのー。これじゃあ私の実力が証明できないじゃないですかー」

「こればっかりは運任せなんだ。遭遇するときはとことん遭遇するしどうしようもないだろ?」

「うぅー・・いや、絶対に探し出してみせますよー」


苦笑いを浮かべてシーラを諭すも逆効果になってしまい、風で草むらが揺れる度に「そこですかー」「こっちですねー」など過剰なまでに反応する様になってしまった。


昼食を作ろうと休憩を提案してもそれより魔物を探そうとするのを宥めるのには苦労した。なんとか食べ物の臭いで寄ってくるかもと言いくるめ朝食と同じメニューを食べた。食べている最中もキョロキョロしながら周りに魔物が来ていないか確認するシーラに俺は少し頭が痛くなってきていた。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





魔物とは遭遇しなかった。これが今日の結果だ。

休憩を済ませ出発し、日も落ち始めた頃に野営には丁度いい場所を見つけたので、そこで休むことにした。一日中気を張り続けていたシーラは「こんなはずではー」と完全に意気消沈して今は焚き火の近くで寝息をたてている。


「夜になれば夜行性の魔物も出てくるので遭遇しやすいですから今日は私が火の番をしますー」っていってたのになにもしないで焚き火の炎を見ている内に寝落ちしたみたいだ。脱獄するまでずっと繋がれたままだったし疲れたんだろう。


俺はというと魔力具現化の質を高めるため訓練に励んでいる、もちろんソナーを使って魔物の探知をしながら。日中も球体を手に出して転がしたり、投げたり、お手玉やったりとふざけているようにしか見えていなかっただろう。

俺的には至極真面目に取り組んでいるつもりなんだけどね。


それはさておき問題はシーラだな。翌日も朝から気合いが道溢れている。うっかり寝てしまったことが更なるやる気を駆り立ててしまったようだ。


「もう時間もありませんしー。出てきた魔物がどんなものであれ全力ですよー」

「あ、あの~シーラさん。出来ればお手柔らかにお願いしたいんですが・・・」

「ダメですー。もうちょっとでトミナなんですよー?私はシュウジとアルちゃん、ベルっちとパーティーを組みたいんですー」

「・・・さいでっか」


口からでかかったタメ息を無理やり呑み込んで鼻息を荒くしてズンズン進んでいくシーラの後を追っていく。


「なぁおい」

『なんだ?』

「アルモの実力ってどんなもんなんだ?」


旦那様に付いていくとしか聞いてなかったし、ベルガ(こいつ)の使用人だったこともあって聞けずにいた疑問をぶつける。


『んなことかよ。アルはあぁみえても強ぇぞ。槍に関しちゃ右に出るものが居ねぇくれぇだ。他にも優秀なアビリティを持ってるが、それは後々わかんだろうから今は言わねぇ』

「へぇ~オメェに()()と言わしめたんだ。見かけによらず相当な実力者なんだなアルモは」


なんて話をしていたら前を歩くアルモが振り返り軽蔑の視線が飛んできた。

俺・・なんか悪いことでも聞いたか?なんて思っているとスカート越しにおしりを抑えて


「そうやって後ろから私の揺れるおしりを堪能するなんてホントに変態なのですね」


そう言い放つとプイと前を向いて歩いていく。実力者なのは間違いないだろうが、そっちの実力は隠したままで結構ですから・・・・・・マジで・・・

ガックリ項垂れて額に右手を宛がうとさっき呑み込んだ分と合わせて増大なタメ息をついてしまった。


「見つけたー」


はいはい次はシーラね・・それで何を見つけたの?多分ゴブリンかイヤーバット辺りかな?


「うおっ!?デケェ」

『久々に見たなヒッポボア』


その予測は検討違いで顔をあげて見てみたらそこには体調が2メートル位はありそうな猪1体が足場をならして今にも突進しようとしていた。話に夢中でソナーを発動していなかったことを悔やむ。


プギーーーーーッ


猪が大きな鳴き声をあげると真っ直ぐに突進してきたので、サッと横に躱して周りを見渡すと同じく横に逸れて回避していたアルモは居たがシーラの姿が見えない。まさか・・・・


「シーラ!!」


予想外のことにパニックになっているのか自分でもビックリするくらい大声を張り上げる。


「シュウジ心配しなくても大丈夫ー。私もちゃんと躱してるよー。それよりちゃんと見ててねーあっという間に終わらせるからー」


()から声が聞こえて、そっちを向くと不覚にも言葉を失ってしまった。


「よーし頑張っちゃうよー『フェザーアロー』」


技の名前と思わしきセリフを言って腕を振るうと無数の白い()()がヒッポボア目掛け飛んで行き次々刺さっていく。その内の何本かが目に直撃したヒッポボアは鳴き声を上げ逃げ惑う。それを見越していたシーラは狙いを定めて急降下


「ウィンドスラッシュー」


その技を口にしてからほどなくしてヒッポボアの大きな体から首だけが先に落ち、胴体も後を追うように崩れ落ちていく。


「どうですーシュウジー。ちゃんと見てましたかー」


満面の笑みでこっちに近づいてくるシーラ


「・・・・ミテナイヨ」

「えぇーなんでー?あんなに頑張ったのにーヒドいー」


まさか・・あぁなるとは思ってなかった。


シーラの腕と足が鳥が持つそれと全く同じ構造に変化していた。その腕を使って空を優雅に飛んでいただけなら良かったのだが・・・シーラの服装が問題だ。彼女はコドドから毎日違う淑女が身に纏うような綺麗な服を用意されていた。それをそのままの着ている為に下からは下着が丸見えになってしまっていた。


その事実を知らないシーラが脩司を問い詰めている所にアルモがやってきてシーラに何かを耳打ちをするとみるみる内に顔が赤くなっていき、その眼も涙目になっている。


「し、シーラさん?」

「シュ・・シュウジのエッチーー!」


その後トミナの街に到着した脩司の頬にはくっきりと紅葉マークが浮かんでいた。

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