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我が儘に異世界を  作者: かでぃー
第二章 脱獄
32/66

何事も使い方次第②


此処に至るまで長かったような短かったような複雑な心境だ。ギガントタートルとの戦闘から早1ヶ月は経過していた。

探索は順調に進み二人はようやくロアリッテ迷宮の最下層に到達し、眼前の門の前に立っている。


あの日バティアに看病してもらった翌日には体調も良くなっていた。しかし、あることをするために下の階層へは向かわずに今までと同じ階層で必要な素材を集めに勤しんだ。


その中で一番肝心な素材が、追い回されたアルマジロだった。奴は警戒心が強く、見つかれば体を丸めて強靭な鱗甲板で防御ないし転がってきて押し潰そうとしてくる。おまけに素材にするため爆破して吹き飛ばすことも不可能なことが難易度を上がってしまった。


そのはずだったが、思いの外楽に討伐は完了してしまった。転がってきたアルマジロは壁に衝突した際にめり込んでしまい、じたばたもがいている所を仕留めた。

そのままにしておくとダンジョンに処理されてしまうので二人で抱えて上げて拠点へと持ち帰り、泉へと浮かべた。何故だか地面だと処理されるが、水の上や水中だと処理されずそのままの状態が可能だった。


生物から亡骸になれば物質変化の対象となるため、それを利用して素材を剥ぎ取った。


「うっし!そんじゃやりますかね」


それらの素材と物質変化を使い試行錯誤の末に近代兵器の1つである重火器つまるところリボルバー式の銃を模したマリンベートル(武器)を造り上げた。


通常の拳銃は銃弾を弾き出すものだが、マリンベートルは廻の作り出す水弾のみを撃つことができる代物である。もちろん弾を撃つのに火薬も使用しないもので、使うのは廻自身の魔力だけだ。火薬を使用しない分、消音効果もありバンッという音はせずに湿ったドシュというのが特徴になった。


銃身は圧力を逃さない様に太いロングバレル仕様に長方形のバレルカバーがしてあり、見た目はオートマチック拳銃にシリンダーがついている感じになった。

リボルバー式にしたのは物質変化を使用した水弾を撃つ際に弾薬に干渉を少なくするためと変化させた弾薬が他に影響与えないための二点であった。


試し撃ちの段階で誤爆、射撃精度、ジャムなど問題があったものの、その度に改良し実戦で使えるまでに精度を上げた。


水弾には水魔法を圧縮したものが使われる。約10m3の水が凝縮されており、着弾、破裂というチート仕様の特別製になっている。

水中破裂実験をした時は寝ているバティアを起こすほどの爆発を作り出せる威力なのだ。

他にも防具やバティアにせがまれて、爪と鱗甲板を使った扇なども作成した。


これ(マリンベートル)が完成してからは先も述べた通り順調かつ安全に下層へ降りられたのはいいが、歩く散水者という不名誉な称号まで増えてしまっていた。



◇◆◇


「‥‥これ絶対ボス部屋じゃん」

「廻様と私のペアなら楽勝ですわよ。もしかして怖いですの?」


どこでここまでの信頼を得たのかはわからないが、明らかに茶化されてるのだけは理解できる。それでもボスの部屋に入るということは俺とバティアの命もかける必要があった。


「気を引き締めて挑んだ方がいいぞ。どんな相手かも想像できないんだ。舐めて掛かると死ぬかもしれない。‥‥俺はこんなとこで死にたくないし、バティアとも別れる気もないからな」


バティアは目を見開いた後に少しはにかみ


「うぅ廻様は卑怯ですわ。そうやって私を‥ごにょごにょ‥」


最後の方には顔を紅くして俯いたためかうまく聞き取れなかった。

数回の深呼吸の後に覚悟を決め


「いっちょやってやるか」


気合い一番に門を開けた。

門の中は壁に複数の松明があるコロシアムになっていた。その中央に2つの人影を確認できた。


「のうバレズよ。次の輩は何時来るものだろうか。もう少し下に貼ってくれ」

「少なくとも数年は現れんだろうさ。全く年甲斐もなくはしゃぎおって、体を労らんか!」


ダレスは愚痴を言いながらバレズに背中に湿布らしきものを貼ってもらっている最中だった。じぃさんがじぃさんに湿布を貼っている姿はとてもシュールで二人は唖然とした表情で見ている他なかった。


「植物たちの世話をするのもままならん。それもこれもあやつがぼこぼこ殴るのが悪いのだ。ジジィ扱いしよって次に()うたら説教の1つでもしてやらんと気がすまん。──ん?んん?バレズよ。儂は本当に老いたかもしれん。彼処に人の幻影が見えよる」


ダレスこちらを向き俺達に気付くが、此処に人が居ることが信じられないみたいだ。


「なにバカを言っておるのだ貴様は、そんな訳なかろうに」


やれやれとばかりため息をつきながらも此方を振り向いたバレズと目が合った。


「ど、ども、こにゃにゃちわん」


苦笑をしながらも折角なので肩ほどまで右手を上げ挨拶をしてみた。


「「なんじゃとぉぉぉ」」

「き、貴様何時からそこに居たのだ」

「馬鹿者違うだろ。ここは「よく此処まで辿り着いた」だろうに」

「この格好でそれは威厳の1つもないではないか」


驚き、怒り、狼狽える、なかなか面白いじぃさん達だな


「ぬぅ、しかし締まらんぞ。それもこれも」


「「貴様(お主)のせいだからな」」


うん、前言撤回しよう。





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