狩り
転移先は小高い崖の中腹にある洞穴だった。洞窟をでくると森林で、遠巻きに湖が見えたので、そこを目的に歩き始めた。
「やっぱり鍛練と言えば定番の山籠りだよな」
『なにが定番だってんだぁ』
「・・なんか不機嫌だな?」
『んなこたぁねぇ』
言葉が通じる相手がいる場合では一切の口出しをしないベルガだったが、あからさまに機嫌が悪い
「はは~ん─さては、アビリティが貰えなかったことが不満なんだろ?」
『うるせぇ─とっとと歩きやがれ』
へいへいと適当な返事を返しながらも目的地へ向け数十分歩いた頃ソナーに反応があった。
「・・10・・いや20か・・・多いな」
『気配遮断も使ってンだろ?』
「ああ─だが、どうやら向こうさんには気づかれてるぞ。やり過ごすのは無理そうだ」
『ちっ─どんな相手かわかんねぇ。一旦姿を隠しとけ』
「…だな」
ベルガの提案に乗り、樹木の上に身を隠してこちらに向かってくる相手を待つ
次第に近づいてくる黒い影、それを認識できた
「あれは狼か?」
『ウォーウルフじゃねぇか─集団で獲物を襲う厄介な相手だ。その上アイツらは鼻が利く、誤魔化すのは困難だぜぇ』
「1体の強さはどれくらいだ?」
『ホーンラビットが主な獲物とだけ伝えてやる』
「まじかよ!?─うわぁ笑えねぇ」
そんなやり取りをしているうちに、ウォーウルフ達は脩司が隠れている樹木のしたにまで到達していた。その様子を少し観察し
「登ってはこれなさそうだ。なら一匹ずつ確実に減らすだけだ」
脩司は構えると獲物へ狙いをつけ、樹木を蹴り一気に急降下してウォーウルフに襲いかかる。
「ウラァ!」
ドゴン
一匹を殴ぐが、直ぐに別のウォーウルフ達が襲ってくるので、それを躱わし樹木の上に駆け登る
「ちっ─少しひっかかれた…予想以上に俊敏な動きをしやがる」
『噛みつかれなかっただけマシだぁ』
殴ったウォーウルフも仕留められず、若干動きが遅くなっている程度でしかない。
『妙だぜ─アイツらはそんなに耐久力はねぇ。てめぇの攻撃力で仕留められねぇはずがねぇんだ』
「どういうことだ?」
『なんかやられてんじゃねぇか?他に反応はねぇよなぁ?』
慌ててソナーを発動されるが、ウォーウルフ以外に反応はない
「とにかくコイツら何とかしなきゃどうにもならねぇな─やるぞ!」
何度も樹木から襲い、登りを繰り返していく。倒すまでには至らないが大分ウォーウルフの動きは遅くなっていた。
「はぁはぁ─ったくまだ倒れねぇのか…」
『武器が使えたら終わってたろうぜぇ』
「誰のせいだよ!だ・れ・の!!」
『くっくっまだ余裕あんじゃねぇか』
「くそったれめ!」
ベルガの煽りを受けウォーウルフへ襲いかかった
『後ろだ!!』
「なっ!?」
ベルガの警告で振り向くと目の前に鉄の塊が迫っていた。
ズゴン!!
回避が間に合わず、咄嗟に腕でガードをしたものの吹き飛ばされ、樹木に衝突させられてしまった。
「ガフッ」
「かわいいペット達が戻ってこないかと思えば、こんなヤツに虐められてたのか。可哀想に」
ソナーを使っていなかったにしても警戒を怠っていなかった脩司とベルガの網を掻い潜ってソイツは現れた。脩司よりも縦にも横にも一回り大きな身体をしており、手に持つ鉄の棍棒で脩司を吹き飛ばしたのだ。
「お前!覚悟しろよ?ペット達と同じ痛みを味わわせてやる」
『来るぞ!!』
(やべぇ…まだ身体が……)
未だ衝撃で身動きがとれない脩司へその身体からは想像もできないスピードで迫ると棍棒が雨の様に降り注いでくる。脩司も何とかガードしているが、隙間を縫って棍棒が幾度もめり込んでくる。
着こんでいた皮の鎧もガントレットもボロボロにされ、骨は軋み腕も上がらない。
「ゼェ…ハァ……ゼェ…」
「しぶとい!まだ息があるのか─ならば、こいつで終いだ。くらえ『剛棍擊』!!」
放たれた技が為す術もなく直撃し、放物線を描き飛ばされていく
それに合わせて脩司の意識もとばされていった。
第一章はここまでになります
少しの閑話をいれてから、第二章に入ります
お陰様で一昨日2000PVを越えました。自分でもびっくりしています。めちゃめちゃ挙動不審になりました
正直ここまで読んでもらえるとは思っていませんでした。
読んでくださっている皆様本当に有難う御座います。
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