越えるべきは
年末の休みには入ると体調を壊して寝込むのが恒例なのですが、今年もやらかしました。
すいません 大人として恥ずかしいです(*/□\*)。
松明の灯りが空間を照らし、部屋の全貌が明らかになった。壁の上には、何千人単位で収用できる観客席まで備えられた広い闘技場であった。
脩司が通った扉は、選手入場口なのだろう。
対面にも大きな扉があり、その前に鎮座するようにして、ローブを着た高齢の男がこちらを見据えている。
「ほぅ─ここに足を踏み入れたものは貴様が初めてだ」
「・・・あんたは?」
「我はダレス、主を見定める者だ。到達者よ、名はなんという?」
「・・木幡脩司だ」
「キハタシュウジか。変わった名だ」
「ここの生まれじゃないもんでね」
「うむ。ならばシュウジよ。うぬの力を見せてもらおう」
「ちょ…ちょっ……」
脩司の言葉も待たず、ダレスは詠唱を始めた。
脚に一点突破を使い、距離をとろうとして自分に変化があったことに驚きを隠せない。
(嘘だろ!?一点突破が使えない)
脩司にとって唯一といっても過言ではないアビリティが突如として使用できない。ここに至るまで、数々の魔物を屠ってこれたのは、このアビリティを前提に考えたものだったからだ。
「来ぬならこちらから行くぞ!スプリッツァーニードル」
ダレスの呪文が発動されると、彼の後ろに渦巻く大きな空間が広がり、その中から無数の紫色をした棘が襲い掛かってきた。
なんとか地面を転がるようにして回避できたももの、一点突破が使えず狼狽える脩司に、地面に突き刺さった棘が蛇へと変化し、更に襲いくる。
(なにがなんだかわっかんねぇ)
思考が追いついて来ていないが、このダンジョンで急激に伸びたステータスと身体が、無意識の内に迫る蛇から逃れていく。
「ほほぅ上手く躱すものだ。ならば、これはどうだ!」
ダレスがふんっ!とばかり全身に力を込めると蛇達の動きが速くなり、なんとか回避していた脩司に噛みついた
「ぐぅぁ─いてぇ」
無理矢理に噛みついた蛇を引き剥がし、地面に叩きつけると元の棘となり消滅していく。
噛みつかれた痛みで、なんとか冷静になれた脩司だったが、襲ってくる蛇を祖母直伝の合気道でなんとか捌いていくのに必死だ
(これは本当に魔法か?触ってみてわかったが、蛇のそれと一緒だろ)
蛇の数を減らしていき、少しずつ余裕ができ、魔法が変化した蛇を観察していく。
脩司は気づいていた。この魔法の特徴が彼の使うアビリティにそっくりであることに
「・・・あんたのソレはオリジナルなのか?」
「なんのことだ?」
「誰かから奪ったものなのか?」
「これは元から我のアビリティだ。他の誰の物でもない」
「そうかよ・・なら遠慮なくブッとばせる!!」
蛇を捌き終えると同時にダレスに一直線に突っ走って殴りかかる。
「ふんっ!甘いわ」
殴りかかってきた脩司へ腕を向けると、ローブの隙間より数本の薔薇の蔦が飛び出し、脩司の両腕、両足、胴体に巻きつくと、その棘が突き刺さり動きを封じる。
「ぐあぁぁぁ」
「なんと直線的なヤツだ。捕らえるなど雑作もない。よくこのような男が、ここに辿り着けたものだ」
脩司も、なんとか蔦を引きちぎろうともがくが、動いた分だけ棘が深くめり込んでくる。
「くそ…がぁぁ」
「勝ち気だけは認めてやろう。だか、実力がそぐわぬ者にあの方の力は与えられん」
「んなもん知るかぁぁ!俺はこんなとこで負けらんねぇんだよ!」
「弱いヤツほどよく吠えるとはよく言ったものだ」
ダレスは蔦を手にとると、脩司ごと豪快に振り上げ、地面へと叩きつける
「がはぁ」
「どうした?先程までの勢いがないぞ?」
「ちく…しょうが……」
「この薔薇は我が育てた特別な植物でな、ちょっとやそっとではちぎれんぞ?ホレホレどんどん行くぞ!」
何度も持ち上げられては叩きつけられ、脩司の肉体が赤く染まっていない場所は殆どなくなってきていた。
(…マジでやべぇ…痛みが麻痺してきた……やっぱり無茶だったか……こりゃ廻に怒られるやつだな……これで終…わ……)
これ以上は・・と諦めて眼を閉じ、真っ暗な世界へ墜ちそうになった時
《──日本へ戻ったら改めて告白します》
自分が好意を寄せている女性に向けて言い放った言葉が鮮明にフラッシュバックしてきた。
(死ねねぇ…俺は死ねねぇんだ!……戻って早乙女さんに…想いを伝えきるまでは……死ねるかぁぁぁ!!!!!)
地面に叩きつけられる直前に足を動かし、なんとか踏ん張ると、全身で蔦ごとダレスを引っ張りバランスを崩させた。
その隙を逃さず緩んだ蔦を振りほどき、少しだけ距離をとる
「ぺっ!!散々…いたぶってくれやがって…覚悟しろよ?こっから第二ラウンドだ!!!」
口に残る血を吐き出し、自身の気力を奮い起たせダレスに向け高々と布告した。
今年はこれが最後の投稿になります
もうすぐ年が明けますので、皆様良い年越しをお過ごし下さい。よいお年を(^∀^)ノシ
読んでいただきありがとうございます