気になる
今回は視点が三人です。
「コイツでラストッ!」
ドゴンっ
イヤーバットが壁に叩きつけれ、その命の灯火が消えた。
「うしっ!この位の魔物だったら、集団でも相手できるな」
『遅ぇんだよ。そこまでなんのがよぉ』
「安全第一だ」
『食欲に負けておいてよくそんなセリフ言えんなぁ』
「それはそれ。これはこれだ。」
脩司はこのダンジョン「ロアリッテ迷宮」の第12階層まで到達していた。10階層を過ぎた頃から単体の魔物には遭遇せず、必ず複数体のグループを相手にしなくてはならなくなっている。
「しっかし、何度見ても死体が消えて、血だけが残るのには馴れないな」
『死体処理しないだけいいじゃねぇか』
「まぁそうだな。━━なぁダンジョンの魔物ってどうやって産み出されるのか知ってるか?」
『んなもんしらねぇよ。判ってんのは一定の数よっか増えねぇこと、死んだ魔物は時間が経つと勝手に現れる。この2つだ』
「ステータス伸ばすにはうってつけの場合ってことか」
『てめぇはアビリティも狙ってんだろ?居座るもんじゃねぇ』
「わかってる。目的は攻略だ」
目をギラギラとさせ腕をぐるっと回して、次なる獲物と下層へ続く道を探し始めた。
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ロアリッテ迷宮へ向け先頭を歩く輝蒼騎士団のノラバス団長は困惑していた。
(魔物がこんな殺され方をするなんて…しかも、ダンジョンの方角へ続いている)
理由は脩司が撲殺し、放置してきた死体のせいだ。
知識がある者なら討伐の証である耳を切り取り、燃やしたりと処理をするのに、その痕跡が全くない
(やはり魔族が近くにいるのだろう。しかし、初陣の彼等に余計な情報は与えなくていいだろう)
振り返ると落ち着いてはいるものの初戦闘に不安そうにしている異世界からの召喚者たちの姿
(明日になれば他の騎士団とも合流する予定だから無理をするところではないな)
この辺りの魔物は弱いのを知っている団長は皆に早く戦闘経験を積ませたいという心境だったが、この光景を見て数人だけに絞り金崎を呼ぶ
「コウイチロウ、最初に魔物が出たらお前が倒せ!」
「はい!」
「その次はお前のパーティーメンバーだ。その後は名前を上げた者に討伐させるようにしろ。少し嫌な感じがする」
金崎に指示を出し、名前を挙げた者を隊の前線に移動してもらうことにした。
その中の藤居、早乙女の2人が入っており廻達から渋々離れていく。
「なにかあったのかしら?」
「俺が呼ばれないのは分かりますが、先生が呼ばれないのは珍しいですね」
「私もそんなに上位職じゃないからよ。ステータス見てみる?」
大谷 梓 20歳 女
職業 音楽家
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
HP:350
MP:240
STR:180
DEF:210
SP:170
TEC:190
称号:
異世界から召喚されし者
音楽を愛する者
絶対音感者
アビリティ:
異世界言語理解
異世界文字理解
音色味方(癒し、テンションUPorDOWN、安眠)
音色敵対者(弱体化、睡魔、硬直、強化妨害)
音色効果UP
有効範囲UP
肺活量UP
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「・・・俺からすれば雲の上の存在です」
「それはサポート役としてね。戦闘要員ではないでしょ?」
「いえ、どっちも俺より上です…」
「嘘!?ゴメン」
「気にしてないですよ」
誤魔化しながらも行進していき、夕方目的地のダンジョン周辺に到達するが、その間に一行は魔物にすら遭遇していなかった。
男女に別れ一人用のテントを建て、夕飯を食べる様に言われたが気になる跡が残されている。
「コウイチロウ━━この焚き火の跡をどう思う?」
「誰かがここで休憩を取りダンジョン内に入っていったのでしょうか?」
「おそらくそうだろうな。下手をすれば明日遭遇するかもしれん」
「どんな相手か想像できますか?」
「・・・想像ができんな━━ここにくるまでの死体といい、想定外のことも考えておけ」
「っ!・・・わかりました」
「明日はいよいよダンジョンに入る。今日の疲れを残さないように早めに休む様に皆に伝えてくれ」
そう言い残してノラバス団長は自分の団員達を呼び夜営に向けてのミーティングを行い始めた。
他のグループは早々に準備を終えると、消耗していたのか早めに就寝し明日へ備え眠りについていく。
脩司は着実にいってますが、廻はまだまだ弱いままっす




