やる気
今回は廻視点になります
「1人って辛いな」
午後にダンジョンへ出発する準備を終え、廻は物音ひとつしない部屋でベットに座り、壁にの垂れかかっていた。
(昨日の脩司はおかしかった。何らかの理由から偽装して自分から出ていったと考えるべきだろうな)
アビリティの思考上昇を使い、脩司の行動を振り返えっている。
(能力値が低いから…いや、アイツはそんなことで逃げ出さないな。他にこっちに来てから変わったことを探した方がいいのか…)
コンコンっ
「細谷君居るかな?」部屋をノックする音と共に藤居さんから呼び掛けられた。
一瞬なんで?っと思ったがドアを開けるとトレーに2人分の食事を持った藤居さんが立っている。
「朝ごはん食べてなかったよね?調理場の人から分けて貰ってきたんだ。私もまだだから一緒にどうかな?」
「なんですとっ!?」
カースト上位の藤居さんから2人きりの食事の誘いに思わずつっこんでしまった。それを聞いて藤居さんも困惑顔になってしまう。
「いきなりだったし、迷惑だったかな?」
「いや!そんなことないよ――少しお腹空いてきたしさ」
直ぐフォローしなければと思い空腹でもないのに嘘をついてしまった。
「よかった。それじゃ入らせて貰ってもいいかな?」
「・・どうぞ」
思春期と人見知りに嘘をついた罪悪感をプラスされ、現在の状況が廻の頭の中をぐるぐる掻き回す。
(なにか…なにか話題を…会話をしなくちゃ)
「・・そういえば早乙女さんは?」
始めに出てきたのはコレだった…
(バカか俺は…もっと違うことあるだろうに)
「智枝ちゃんはね。今、訓練所で一心不乱に的を射抜いてるよ。」
「そうなんだ。藤居さんと早乙女さんはいつも一緒ってイメージが強くてさ」
「あははっ だって親友だもん――――あっごめんなさい」
「大丈夫、気にしてないから。それより冷めちゃうから食べよ」
食べ始めるが空気が重い。再び会話、会話と頭の中で思考していく廻を藤居さんは面白そうに見つめている。
「細谷君さっきから落ち着かないようすだけど、どうしたのかな?」
口が裂けても貴女のせいです。なんて言えるはずもなく
「親以外の女性と2人きりで御飯食べるなんて初めてで緊張してる…」
「ということは、異性としてちゃんと意識してくれていたんだね」
照れを隠そうとするが、藤居さんには筒抜けであり追い撃ちが飛んでくる。廻は顔を赤く染め無言で目を背けるのがやっとだ。
「あははっ冗談だよ。実は私も親以外の異性と2人きりで御飯食べるの初めてなの。やっぱり緊張しちゃうね」
「えっ?藤居さんもそうなの?告白とかされてるからそういうの経験してそうなのに」
「酷いなぁ、私も皆で食べに行くことはあっても2人はなかったの。それに誰とも付き合ったこともないんだよ」
「何で告白受けなかったの?サッカー部のキャプテンは頭も顔も良いのに」
「ちょ――なんで告白した人を知ってるのかな?」
「学校では有名な話さ。自信満々でアタックしたのに玉砕したってね」
「そんな話になってるの?知らなかったよ私。」
「それで何で断ったの?」
「私だって好きな人が居るから初めて付き合うならその人がいいなって」
(おいおい、誰だよ。その幸せ者は―――爆発すればいい!!)
内心で悪態を言ってみるものの興味がそそられていく。
「ねぇ藤居さん、その好きな人を教えて貰えない?出来ることは協力するから」
「えぇ~駄目だよ」
「そっか…それは残念だ。でも早乙女さんは知ってそうだから後で彼女にこっそり教えてもらうとしよう」
「それはもっと駄目~。うぅ――そんなに知りたいのかな?」
「モチロン」
「なら、ダンジョンから無事に戻ってきたら教えてあげるよ。代わりに絶対に、ぜぇぇたい無茶しないでね?」
「りょ~かい。好きな人を聞くまで無茶しません」
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食事を終えると藤居さんは空になった食器を持って部屋を出ていき、ほどなくして集合時間となった。
訓練所に集まり、これからのことについてノラバス団長からの説明をされ出発となった。
「今日は野宿か…」
団長の説明では夕方にダンジョンまで到達し、キャンプを行い翌朝からダンジョンへはいるというものだった。荷物は馬車で運んでいるが廻達は徒歩で行進していく。
「もうすぐ魔物と戦闘になるはずだ。皆、油断なくいこう」
勇者である会長はリーダーシップを発揮し、皆を引っ張っていくまでに成長していた。そのサポートに璃子ネェの一件で騒いでいたガーディアンの上遠野、それと先生と一緒にいた女性2人日高 寧々と土屋 牧子がついていた。
おさげに眼鏡をかけているのが魔術師の日高で、高身長でショートカットの土屋は軽戦士だ。
「光一郎は気合い入れすぎだぜ」
「そうそう、肩の力を抜くのも大事よ」
「…私もそう思うわ」
「僕にとってコレが普通だよ。けど、心配してくれてありがとう」
上から上遠野、日高、土屋の順だ。
爽やか全快にそう告げる会長を廻は視界に入れないよう心掛けていた。
(眩しくて目がやられるわっ)
しかしながら、廻も男達からの嫉妬の視線を集めていた。その中には会長からの視線も含まれる。
その原因は出発前にダンジョン内は4,5人のパーティーを組めという指示があり、組んだパーティーメンバーが廻、藤居、早乙女、大谷という美女揃いだったからだ。
パーティーの理由は廻が最下位職というのが大きく、他メンバーの能力値は非常に高いもので構成されていた。
会長はいつもメンバーに藤居さんを加えたかったみたいで一番視線がキツイ
「はぁ…」
「ほら!さっき御飯食べたんだから元気出していこうよ」
「紗耶香…その理由はあなただけに当てはまるものよ」
「うわぁ~ん、智枝ちゃんまで冷たいよ~」
「ふふっ仲がいいね」
「先生~この冷えた空気に耐えられませ~ん」
藤居の冗談が聞こえてないのか、廻は視線に、早乙女は脩司のことを考えつつもダンジョンへ向け進んでいく。
職場が忙しくなっているので更新が疎らになるかもしれません。
読んでくださっている皆様にはご迷惑おかけします