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アリの世界で女王ライフ  作者: 小田鶏助
俺、女王になる。
29/31

忠誠

身体中に妙な違和感を覚える。

しかし、それは体が動かないというわけでは無く、むしろ動かせるのが不思議である。

がさごそと活動音が地面を伝い聞こえてくる。

やっと開けられるようになった眼をゆっくりと開ける。


いつからこんなことになっていたのだろうか。

もしかして、夢でも見ていたのだろうか。

ツチアリの女王に殺されかけていた事は覚えている。しかし、そこからはモザイクがかかったようでいつここに来たかも分からない。他のみんなは大丈夫だろうか。

特にギハールはあんな姿になっていた訳だ。

俺も大概なのだが、心配は拭いきれない。


「やっと目が覚めましたか。」


んッ

身体中に虫唾が走る。

まるでその、虫唾という表現が妙に言い当てた言い方をしているのが不思議なくらいだ。それが違和感の原因だった。


目を開いた先にあったのは()

二つの目があった。


否、二つではなかった。

たくさんの眼が俺を見つめていた。


「何をしていれ!」


「何をって死にかけていたので舐めていただけですけど。」


__は?


まるで何を言っているのかわからない。

死にかけていたって理屈になっていない。というか、動揺で語尾がおかしくなってる。おかしいのは俺じゃないだろう。

取り敢えず落ち着こう。

ここでは俺の常識は通用しない。


「それはどういう事だ?」


「女王様に死なれては困るので、助けようと皆で必死に救助活動を続けていました。それで__」


「わかったわかったわかった。もうわかった。もういいからもうわかったから。ごめん!」


やはり俺の常識は全くもって通用しない。通用しないと言うより違い過ぎて話になっていなかった。アリは舐めることで治療をするということなのだろうか。だとしたら俺は筋違いなことを言ってしまったようだ。

それにしても初耳だった。アリが衛生部隊持っていてこんな凄い医療技術を持っているなんて。なぜ今まで知らなかったのだろうか。女王失格である。


「女王様は酷い後遺症で記憶でも失っているのよ。」


こんな時にひょこひょことやってきたのは、例の女神だ。本当に今まで何もしていたのだろうか。気づいた頃には居なくなり、当然俺の救助もしなかっただろう。

それに、心做しか睨みが強い。


「そうですね。」


アリ達は納得したように口々に言う。確かにこのことに関してはナイスフォローと言うべきだろう。確かにこのフォローがなければどれだけ気まずい空間になっていたか分からない。結局女神がどんな奴なのかがまだ掴みきれない。小さな優しさが心地よいのも事実である。


こんな体になっているというのにも関わらず、隙もなく女神は言った。


「ギハールさんの所に行かなくていいの?」


忘れていた。状況としては俺と変わらない筈だか。

ということは、ギハールは今__


「隣の部屋よ、」


急ぐしかない。一歩踏み出してから改めて後悔する。今の体では回復したとはいえたかが知れてる。身体中針を刺されたように感覚が鈍っており普通に歩くことも困難である。脚がもげたりしていない事は、不幸中の幸いも言うべきだろうか。


しかし、女神は何もしてくれないのだろうか。

二歩目三歩目と足を踏み出す。

四歩目を踏み出すところだった。


後から体を支えられるのが分かる。


「あなたの力で行かなくてどうするの!ギハールはあなたを命を掛けて救ってくれたのよ!」


そんな自分が不甲斐ない。

悔しいが認めるしかない。俺のせいでたくさんの命が。

だからこそ最低限の責任は追わなければならないということだろうか。


他人に頼っていていけないのだ。文句なんて言ったってしょうがない。肝心なのは自分だ。



案の定とは行かなかった。

片脚がもげそれでも尚、そのままでは死んでしまうというのにも関わらず。


「私は大丈夫だ。気にしないでくれ。女王様の所に行っていくれ」


そんな言葉はどこからやってくるのだろうか。アリというものはどうもこうなのか。女王信仰にも程があるだろうに。自分の生命よりも女王を仲間を優先する。

やめてくれ、俺にはそんな事されるような価値はない。


「ギハール!私は大丈夫だ!」


「女王様!大変お見苦しい姿、大変申し訳ございません。」


そう言って体を起こそうとするのだ。俺だって、仲間を失いたくなんてない。


「ギハール、その気持ちはありがたいが大切な仲間を俺だって失いたくない。無理するのだけはやめてくれ。今はその傷が良くなるまでは安静にしてくれ。これは命令だ。」


ここまで念を押さなければ納得してくれないだろう。こんな所が人間との大きな違いなのだろうか。人間はあくまで自分のことしか考えずに人に優しくすればお節介だと言われ、そんな世界とは対照な世界なのかもしれない。


「有り難きお言葉。甘えさせてもらいます。」


今までの疲れがボロボロの体に大きく響いたのだろうか。体を支えきれず、水平を保てない。そのまま揺らいだ体は地面に打ち付けられた。

無理したのは俺だったかもしれない。取り敢えずギハールが無事で良かった。


力が抜ける感覚はまだ覚えている……

更新が遅く申し訳ございません。

少々お待ちください。

頑張ります。

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