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アリの世界で女王ライフ  作者: 小田鶏助
俺、女王になる。
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女王になるとは、

 翌朝、いつもより身体が重い感じがして目を覚ました。

 インフルエンザにでも罹ったかのような倦怠感が身を包んでいた。

 いつもより大きな部屋で寝ている訳だから、寝違えることはないだろうし。そもそも、アリは寝違えるのかすら怪しい、これが原因ではない。昨日の精神的な疲れからくる肉体的な疲れなのだろう。

 人間だったころにも何度かあった冬起きるのが辛いみたいなやつだろう。

 凝り固まった身体に力を入れ立ち上がる。

 当然誰もいない。大きな部屋に一人しかいないとこんなにも寂しいのだろうか。


 まずは、コロニーの規模の調査からだ。

 女王のなったからにはコロニーがどの位の大きさでどの位のアリがいてどの位エサがあるか調べなくてはならなかった。

 女王様に聞いておけば良かったが、今となってはそうすることもできない。


 いつも五人と集まっている大部屋に一人早く来て考えて事をしていた。

 俺は転生してなんの問題もなくアリ生を全うしてきたため、ケビンの様な話を聞くとアリやこの世界の本当の姿という物を目の当たりにした様な感覚になる。

 これから先人間の俺なんかに予想も出来ない事が沢山起こるだろう。それでも負けないようにアリ達を導かないといけないのである。

 まるで戦国時代の武将にでもなった気分だ。

 しかし、明らかに違うのがそれがアリであること俺はそれを良く分かっていた。


 一番に来たのはギハールだった。

 彼女自身では一番乗りで来たつもりだったのか入ってきて申しわけなさそうにこちらまで音を出さずに歩いてきた。

 お陰で少し気まずい空気がながれてしまった。


 それを切り裂くように勢いよく入ってきたのは、サントスだった。先に来ていた二人の空気を全く無視してやって来て、「うっす」と小さく頭を下げた。そしてその様子を目を丸くしている二人を不思議そうに首を傾げ座った。

 何時もだったら少しイラッときたが、この時ばかりはサントスに感謝である。


 そして、リンダとグレーテルが話しながら入って来た。どうやら、仕事のことについてリンダがグレーテルに質問しているらしい。真面目なものだ。よく見るとグレーテルの影に隠れた少年がいた。それは、ケビンではない。誰だろうか。

 最後はケビンが昨日より元気な足取りで入ってきて全員が揃った。


 俺が女王になって初めての会合始まり始まり。


「まず……」


 と俺がいいかけた所をグレーテルが遮った。


「この間言っていた彼女の事なんですけど、彼女がミゲルです。

 私ももう先が長い訳ではないので早めに紹介をした方が良いと思いまして、」


 そう言われてミゲルはこくりと頭を下げ、こちらを細い目線で見つめて来た。

 ミゲルとは、グレーテルが教官の後任に選んだ人物だった。


「私がミゲルです!これからよろしく!」


 グレーテルとは百八十度違う性格のようだ。何でこいつを後任に選んだかはまだまだ未知だが、これからの大切な仲間だ。

 また、フランクな性格な奴が二人になると少し厄介だが。

 無意識に俺はサントスのほうを向いていたらしく、サントスが不思議そうな顔で見つめていた。


「ミゲル!宜しく私はユートだ。今が一番大変かもしれしれないが宜しく!分からないことがあったら誰でも聞いてくれ!」


 また、五人が改まったて一人ずつ自己紹介をしていった。


「さて、本題に入ろう。リンダ、ケビンこの間言っていた調査はしてあるかい?」


 するとリンダがニコニコとして一つの事柄について流暢に言いあげていく。

「今のありの数が465匹、残っているエサは一人10日分、今残っている卵ちゃんの数は62匹、幼虫が28匹です」


 リンダは気を利かせて内容を要約してわかり易く伝えてくれた。

 今すぐ巣の存続の関わる危機にはならないだろう。


「ありがとう。よく調べてくれた。次にサントス、今の兵士達の様子はどうだい」


「順調にみんな強くなっています。団結力も上がってきて良い感じです」


 こちらも大丈夫な様だ。ならば、安心である。

 よし、これなら俺の女王ライフも右肩上がりで進むぞ!

 

「よし、ありがとう。じゃあリンダとケビンは引き続き調べるのを続けてくれ、サントスとミゲルは兵士達の訓練を実践的なものをとりいれてくれ。ほかのアリに攻められた時や、ほかの虫が襲って来た時の為に、お願いだ」


「はい!」


 というサントスの短い返事でこの会話は終わった。


「後ギハール、私に小さな部屋を用意してくれないか」


「はい、わかりました」


「これにて会議を終了する。解散!」


 と短い会話をして無事に会議が終了した。


 まだ大きいままの部屋で一人また、物思いに耽っていた。


 俺がやりたかったのは戦国武将みたいな事でアリ達を訓練させて軍隊を強くする的なものが、俺の眠っていたはずの何かをずっと刺激するのである。

 まずは敵に攻め込まれないようにする為に一人一人(一匹一匹を強くすること。次に実践的な事をして、いざというときに的確な判断でコロニーを守る。

 あとは、兵士団の階級をより細かくする事や組織の心得を作ったりなんかをしてみたい。

 考えれば考える程やりたい事がひろがっていく。


 もうひとつ考えなくちゃならないことは、アリ達の組織を把握する事だ。

 それで兵士の数や休んでいるアリの数、幼虫の育成にあてる数などをコントロールできる。


 卵の数62、幼虫の数28か…………………




 まずい!もしかしてのもしかして俺が卵産まなければならないのか!

 どうしよう、まさか出産を経験するとなんて思ってもみなかった。

 どうすれば良いんだ、これこそ女王様の聞いとけば良かった!


 グレーテルさんなら知っているかな、もしかしたらケビンが知ってるかもしれない。


 聞くしかないな……


 順調に始まったかのように見えた俺の女王ライフはまさかのスタートとなるのであった。


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