表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリの世界で女王ライフ  作者: 小田鶏助
俺、女王になる。
17/31

結婚飛行

 私の誕生を祝う式は一日中終わること続けらた。

 本当だったら、今はまだ産まれたばかりの赤ん坊だったはずなのに。



 俺は、何故だがわからないがいつの間にかアリの世界に飛ばされていたようだ。

 よりによってアリって何だよ、アリって。

 おまけに背中には邪魔な羽みたいなものまでついている。


 しかし、それが何を意味しているのか俺はまだしっかりと理解していなかった。


 俺は別に死にたかった訳じゃない。

 生きている中で生きる価値を見いだせなくなって、、

 死ぬしかなかったんだ。


 俺はイジメを受けていた。


 その理由は身勝手なもので皆俺の容姿の事を馬鹿にした。

 自分自身でも決して自分が格好よくない事ぐらい嫌と言うほどわかっていた。

 大して変わらない容姿の奴も一緒になって俺を馬鹿にした。

 それには言い出したい言葉を歯を食い縛って抑えるしかなかった。

 ただただ冷たい言葉を浴びせられる毎日だった。

 だからこうなっているのだ。


 勿論親にだって相談した。

 母は俺の事は可愛いできの良い息子だと思っているのか、俺の話を冗談だとしか思っていなかった。

 だから俺もそれ以上母に苦しんで貰いたくはなかった。


 学校の問題なのだから先生にだって相談した。

 担任は五十位の中堅の社会教師だった。

 普段の先生同士のやり取りを見ていれば分かるが、担任の野郎の地位は案外危ういようだ。

 そんなときにクラスでイジメが横行している事実が校長にでもしれ渡ったらどうなるかは俺にでも分かる。

 無論担任の野郎は事案の解決を先送りにしてあやふやにした。

 イジメは社会的な問題だとか何とか言っていた事は記憶違いだろうか。


 そんな状況におかれた俺は誰も信用できなくなった。

 人は一人一人違うだからこそ支え合える何て綺麗事を吐く奴がいるがそんなこと夢の中のはなしだ。

 人は一人一人違うからこそ自分を優位にたてようとし、誰かを犠牲にし、自分を守る。

 世の中皆そうなんだ。

 母親だって担任だってイジメてた奴らだって皆そうだ。

 俺を犠牲にし、自分の存在価値を確認する。

 自分の事を信じ込み責任から逃れる。

 自分に都合の良いところだけ摘まみ取って、都合の悪い事は無かったことにしていく。

 俺はその為の道具でしかなかった。


 せめて次の人生では平和をと願った。


 目が覚めたときには、この姿だった。

 アリの世界にそんな幸せがあるとは到底思えない。

 どうやら、女王様の誕生だか何だかを祝っているらしい。

 俺は何故か女王様の隣の席で祝いの 儀式?行った。


 それより驚いたことがあった。

 アリ達は皆顔も同じで体格は二つ位に分かれているが、皆文字通り"同じ"だったのだ。

 それは単純に俺がアリの顔を判別出来ていないだけなのかも知れないが、各各が大きな違いを持っている訳ではないことは確かだった。

 俺は心の底から黒く溜まった塊の様なものが体中を廻って何処かへ出ていくみたいな感覚に襲われた。

 当然、そこにイジメの様な陰湿ものはあるはずがなかった。

 アリは人間とは違っていた。

 人間何かよりアリの方がよっぽど平和を重んじている。

 そして俺が数多く奪ったであろうアリ達の命を悔やんだ。


 アリ達は涙を含ませながら女王の誕生を喜び狂っていた。


 すると、何故か俺が前に呼ばれた。

 俺は只の兵士かなんかでこんな式に何か関係ないはず。

 訳はわからないが、呼ばれたで行くのが筋だろう。


 元女王らしきアリに俺の名らしきものが呼ばれ、緊張が深まる。

 そしてその緊張を打ち壊す様な一言が女王の口から発せられた。


「貴方を新たな女王の旅の付き添う男として新たな道を共に切り開いていくことをこれより命じる。」


 何故俺がそんなことをしなくてはならないのだろうか。

 俺みたいな生まれたばかりの赤ん坊より適任な奴はいくらだっているだろう。

 たとえアリの世界だとしても折角生まれ変わったのだからゆっくり人生を過ごしたいものである。

 正確に言えばアリ生だがそんな事どうでも良い。


「はい!解りました。慎んでお受けいたします!」


 丁寧語てこんなもので良かったけ。

 ろくに関わりを持たずに過ごしていたものだからちゃんとした話し方というものを忘れていた。


 しばらくして、無事式は終わった。


 しかし、アリ達は女王様と復唱したり、過去の話をしたりして静まることはなかった。


 そして、俺はアリの世界に来て初めての朝を迎えた。


 それから一日何をしたわけでもない。

 アリの世界は不思議な事ばかりだった。

 とにかくみんな働き者で、楽しそうに仕事をしていた。

 働かされているという感じは一切しなかった。

 アリは働かされていると思ってたのが申し訳ない。

 俺だけ働いていないのはなんだか居心地が悪かった。


 やはり何度見てもみんな顔が同じなのだ。

 女王様に聞いたら、

「そうよ、みんな私の娘よ。」

 と言われた。

 謎が一つ解けた。

 しかし、みんなメスならオスは何処にいるのだろうか。

 それがわかるのも時間の問題だろう。


 あとは、自分に名前がないことに気が付いた。

 他のアリ達はそれぞれで呼び合っているが俺は何とも言われないので、もやもやした感覚を覚えた。


 今日得た情報はそんなものだった。

 アリの世界ではイジメられる事はなさそうだ。

 それだけで良い平和さえあれば良い。


 次の日も特に何もしなかった。

 ただただアリ達を眺めるだけで何もしなかった。

 出来れば一緒の働きたかったが、女王様に辞める様に促された。


 新しい女王様は少し変わった人のようだ。

 突然俺を指差して、

「おい!そこのブラックドラゴン。食べ物を持って来なさい!」

 なんて指図してきたんだ。

 女王様だからって偉そうにしないで欲しい。

 そもそも俺達はブラックドラゴンなんかじゃなくてアリなのに。

 変な冗談を言うアリだ。


 そんな毎日が

 そして、只々日にちが経っていった。


一週間が経った頃ぐらいだろうか。

遂に俺は旅立つことになった。


女王様と俺とあと二人のアリでの旅だった。

旅と言っても新しい女王様の移住先を決めるための下見だという。


俺は役目を果たせるだろうか。

変な虫に襲われて死ぬなんてことにはなりたくない。


沢山のアリ達に見送られて旅だった。

ただの下見だというのにアリ達は 涙?を浮かべていたり、頑張ってなんて声を掛けていた。

アリはそういうものなのだろうか。


俺は時間が経ち硬くなった翼をはためかせ蒼い春風の吹く優しい空へ飛び立った。


半ば不登校になっていた俺には春の優しい太陽も鋭く尖って見えた。


面白かったら

ブックマークをお願いします!

面白くなくても

感想でご指摘お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ