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隠し事は結構強いこと  作者: HANA BEE
第一章『白髪と赤髪の舞』
3/10

出勤初日

「似合わない」


そんなことを呟いたのは卒業式のときよりも白髮が増え黒髪が減っている青年、レイスである。レイスは体質上魔力が強い日ほど白髪が増えるが今日は特に魔力が強いのか、鏡の前では黒髪が一本も見えない。年に3、4回しかない白髪増加デーが今日とはなんともついていないとレイスは心の中で本気で思う。なぜならば今日は軍入隊の日である。

すなわちレイスの初出勤日なのだ。

それなのに、黒髪が全く見えないせいで今日の彼の髪はかなり目立つし、軍用の魔法着が絶望的に彼に似合わないときた。また、レイスは炎魔法を専門としているので魔法着は赤色のローブのようなものであり、今のレイスの髪の色とでは全く不釣り合いである。


「どうすればもっと似合うのか誰か教えてくれ。それとも初出勤日は魔法着が似合わなかったので欠席、または遅刻...... それもいいかもしれないな。」


そんなことを一人でブツブツ行っているとドアがノックされ誰かが入ってきた。


「レイスー あがっていいかー!?」


家にあがった後にそんなことを聞くとは相当頭が残念なのかと思いながらも、そいつよりも頭が残念な自分は一体何なのだろうと一瞬気になるが、それはいまは頭の片隅においておくことにし、入ってきた青年を真っ直ぐに見つめると、


「アルク、頼みがある!! どうしたらこの不格好な状態から脱出できる?」


廊下から顔をひょこっと出したレイスの親友アルクにそれを聞くと、アルスはまったく似合っていないレイスの格好を見て大笑いし始めた。


「なんだそのへんてこな格好は!! 等身大のろうそくみたいだな!!」


腹が痛いと思いながらもアルクはこの笑いはいま、この瞬間だけは治まりそうにないと一人で納得すると、


「おい、そんな腹が痛いならもう痛みを感じれないようにお前の体を塵にしてやってもいいんだぞ?」


そう火を吹きそうなほど顔を真赤にした等身大のろうそくに言われるが説得力ゼロだとアルクは心のなかで思う。そして、その行為がさらに笑いを増大させてることにレイスは気がついていない。


「おい笑いすぎだぞ!! 本気でいま悩んでるんだから真面目に答えてくれよ!!」


そう言ってもさらに笑いが大きくなった様子のアルクに、これは本気で今日は休んでしまおうかと考え始めるレイスだったがそうはいかない。力を抜き、


「サイレンシオ!!!!!!」


とレイスが沈黙魔法をアルクへかけようとするが今日は魔力が強い日だったと気づいたときにはもう沈黙魔法はアルクの目の前まで迫っていた。しかし、間一髪で笑いを止め、


「サイレンシオ!!」


と同じ魔法をアルクが唱える。すると、魔法は交互作用によりお互いが打ち消し合い光の粒となり消える。アルクの全身に一瞬冷や汗が出たのは冗談ではなく、この魔法を受けると少なくとも三十分は喋れなくなる。(また、精神が荒れている人ほど沈黙魔法も効きやすいとアルクは昔、書物で読んだことがあった。)初出勤日の朝に喋られないというのはかなりの痛手であるということは人間、悪魔、そして、魔術師もよく分かっていることであるとアルクは思う。よく授業中うるさくしていると、教師がこの魔法をアルクに向かって放ちそれをアルクは打ち消していたが、まさかこんなところで役に立つとは意外であった。


「あぶねーな! 出勤初日に沈黙魔法はマジで笑えねーぞ!!」


「だったら俺の相談にちゃんと答えろ。」


レイスは沈黙魔法がアルクにかからなかったことに胸をなでおろしながら、へいへいと頷くアルクにもう一度おなじ質問を聞くとアルクは


「それでいいんじゃね!?」


と適当に答え外へ行ってしまったのである。


「はっ」


小さくない悩みをアルクに伝えたはずだが、その答えはあまりにも適当なものだったため、レイスは呆気にとられて外へ向かうアルクを見つめることしかできなかった。



 ドアの前に立つとレイスは大きく深呼吸をし、精神を集中させる。あのアルクとの会話の後、レイスは自分の不格好な格好をなんとかしようとする気も失せてしまい、アルクと軍本部へ向かったのである。軍本部はファニール国の宮殿であり最上階には王と王妃が住んでいるということもありセキュリティーはかなり強固である。そして、今日から自分も宮殿の、国のセキュリティーの一つになるという高揚感がレイスを包んでいたが、


「なんだあいつ、魔法着似合わねーな」


という誰かが発した心無い言葉でレイスは我に返る。いつもなら言った本人を探し出して八つ裂きにでもしてやろうかと考えるが、今だけは感謝の気持ちでいっぱいである。これから自分も軍の一人になるのだからしっかりしなければとレイスは心の中で自分に言い聞かせ、ドアの前までやってきたのである。


この先にレイスが希望した『デスクワーク』という仕事が待っていることに胸を膨らませながら。



 静かにドアを開けるか、勢い良く開けるかを少し悩んだ末、静かに開けることを選んだレイスは自分で決めたとおりに静かにドアを開けると、


「はじめまして、今日からここでお世話になりますレイス・ラ・カンデロドです!!よろしくお願いします!!」


勢い良く下げた頭を上げ周りを見るとそこはどう見ても『デスクワーク』をする部屋ではないと一瞬で理解し。もしや入る部屋を間違えたかと思い部屋番号を見るが、そこはたしかにレイスに行くよう指定された部屋である。


「いったいどうなってんだ......」


と小さい声でつぶやく。すると目の前で、


「よろしく、君が新人のレイス君ね!! ようこそ炎魔術精鋭部隊第一班へ、私はフィリノ・オムリオよ!」


そこには小柄で童顔だが、それに似合わずしっかりと女性らしい弧を描いた赤髪の少女が立っていた。


『隠し事をしています。実は結構強いです。』の第三話です。

質問ですがこのptってなんですかね?よく分かりませんが、増えると面白いですね(笑)

次話も全話もよろしくお願いします。

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