新春
「皆様は今日でこの学校ともお別れです。しかし、いつでもこのファニール国立魔法学校に帰ってきてください......」
桜は美しく静寂を保ちながら舞い降りる、そんな四月の昼、ここファニール国立魔法学校では卒業式が行われていた。ファニール国は三大魔法大国として今年創立四百年目を迎え、それと同じくしてファニール国立魔法学校も今年で創立三百年目を迎えていた。
そんな節目の年の卒業生、自然と背筋が伸びる思いをいだきながら少し目立つ外側は白、付け根付近は黒色の髪に長いまつげ、そして、夜空のようでついつい吸い込まれそうになる目、整ったイケメンとも言える顔立ち。そして、決して筋肉質ではないがバランスの取れた体型に勉強もできると思いきやそうでもない中間付近の成績で卒業することになった青年は、静かに校長の祝辞に耳を傾けていた。
「はぁー 本当にうちの校長はなんでこうも話が長いのかな?」
隣で他の人には気づかれないように青年に愚痴をささやきかけてきた彼は青年の親友である。
「静かに校長の話を聞けよアルク。」
青年がそう注意をするとアルクは目を細めニヤリと微笑むと、
「でも話が長いと思わねーか、うちの校長?」
「校長だからな」
そうレイスがそっけなく返すと、アルクは嫌味をたっぷりこめて
「レイス、お前は本当に真面目だな。そんなんじゃこれからの人生楽しめないぞ。それに真面目なやつは損するように社会はできてるんだぜ!!」
「......」
どうだとばかりにどや顔をしてくるアルクに言い返したい気持ちを我慢し、レイスは校長の言葉に耳を傾ける。彼、アルクアルバートとはもう十年ほどの付き合いになる。茶髪の髪に彫刻家が彫ったような整った顔。少し目はつり気味だがこれこそまさにイケメンと言えるのであろう。怠惰の塊のような男だが成績はなぜか優秀。彼女いない歴が実年齢のレイスとは違い何人もの女性と遊んできた彼はさぞかし経験豊富なのであろうとレイスは思っていた。
「......」
「なんだよ?」
そんな事を考えているうちにアルクを見つめていたことに気が付きレイスはアルクから目を離しもう一度校長の長話に耳を傾けた。
「やっと卒業式終わったな!!」
嬉しそうに喋りかけてくるアルクをレイスは適当にうなずく。ここは卒業式が行われていたホールの目の前で、桜は満開で人がいなければ花見ができるであろう隠していない隠しスポットなのである。アルクとレイスも幼いときはよくここで二人で魔術の練習をしていたが、ここ数年は魔法軍入隊訓練のため二人で魔術の練習をすることは少なくなっていた。
「今年も俺たちの学校が最多軍入隊者だってな。」
「もう俺たちの学校とは言えないけどな。」
レイスはそんな皮肉じみたことを言うがアルクは気にもとめない。これがこの二人の会話の仕方なのだ。だからあまり二人のことを知らない人は二人の仲が悪いと思いかなり気を使うらしいが、それも彼らは慣れっこである。実際レイスもなぜアルクとはここまで仲良くできているのか分からない。
穏やかな風をレイスに例えるのなら、アルクはまるで暴風のようなやつだ。
アルクは成績はいいが、授業のサボりの常習犯で性格も荒く一度校舎を炎魔法で全焼させそうになったりと何度も事件を起こしたことがある。
しかし、レイスは真面目で勤勉家、それでいて正義感も強くどんなときも冷静でいられる。そして学校でもあまり目立つようなことはせずアルクの影のようになり過ごしてきた。なぜこんな二人が親友でいられるかは二人共分からないし、そんな事は何百回も考えた。もういいやと頭から疑問を消し去ると、レイスはいつものようにアルクと帰路につく。レイスにとってもアルクにとってもそんな疑問はどうでもいいことなのだ。
なぜならば彼らは『親友』なのだから。
読んでくださってありがとうございます。2話なんとか書くことができました!! 三日坊主の僕がどこまでこの話を書くことができるのかは僕自身にもわかりませんが、これからはできるだけ頑張ります。
あと、書き終わって読んでみると自分の文章下手ですね(笑)少しだけ文章の書き方を勉強したいと思う今日このごろです。