これが現実でありますように……
ここは世界の中心と言われる国ファニール。決して緑豊かでもなく目立った産業があるわけでもないが、この国の民は毎日を平和と祝福に包まれ幸せに暮らしている。
そんなファニールのある宮殿の、子供部屋にしては大きすぎる部屋で、一人の少女が鉛筆を握りしめ考え事をしていた。金色の髪の毛はまるで晴れた日の夕方のように美しく、夜の星空を写したような深い淡青色の目、そして、年齢はまだ九か十といったところだがどんなものも魅了するであろう白い整った顔を持つこの少女は、数十分ものあいだ顔にしわを寄せ同じ問題とにらみ合いを続けているが、答えは分からないどころか、解法も閃かない。
カーンカーンと遠くから夕刻を伝える鐘の音が聞こえる。
「もうやんなっちゃう……」
そんな事を呟くとあっという間にその問題を諦め部屋を出た。
長い通路の天井には美しい光が散らばっており、床には赤色のじゅうたんが敷かれていて少女は慣れた足取りでその上を歩く。昔は『魔法』と言うものを人間たちは使えたので光はもっと美しく輝き、人は空を自由に飛ぶことができ文明は今より発達していたというが、ある日その『魔法』を悪魔に取り上げられてしまい人間は『魔法』を使えなくなったのだという。そんな昔聞いた授業を思い出しているとそこに顔見知りの女官が歩いてきた。
「おばあちゃんどこにいるか知ってる?」
「フーク様ならお庭をお散歩していましたよ。」
そう女官は答えると少女は一言ありがとうとだけ伝え、せっせと階段を降り小走りで庭へと向かって行ってしまった。
「お勉強は終わったのラフィ?」
そう質問されると少女は気まずさそうにした。少女、ラフィアの祖母のフークはこの国の王女でラフィアと同じ金色の短めの髪に赤色の右目、緑色の左目、そして、年相応の美しさを持ったラフィアの自慢の祖母である。
「ちょっと休憩中」
そうラフィアが答えるとフークは苦笑いを浮かべ、ちゃんとやってくださいねとラフィアに伝える。ラフィアは頷くと、フークに長いこと待っていたことを聞いた。
「おばあちゃん、明日は私の誕生日だよ。約束覚えてるよね? 今年の誕生日の前日に面白い話をしてあげるって。」
フークは微笑みながら、
「もちろん覚えてますよ、寝る前に話てあげますよ。」
と言うが、いま教えてほしいとラフィアの目が訴えかけている。この目にフークは弱く、そして、彼女はつくづくラフィアの好奇心旺盛なところと自分を見つめる淡青色の目が自分の死んだ母に似ていると思う。もうこれ以上何か言っても意味のないことはわかりきっている。フークはため息をつくと、
「しょうがないですね。でもこの話を聞き終わったらちゃんと勉強に戻ってくださいね。」
そう伝えるとラフィアは嬉しそうに短い髪を激しく振りながら頷く。もちろん勉強に戻る気などないが言いつけを守らないという罪悪感など皆無で祖母の話に耳を傾け始めた。
「この話が現実でありますように。」
そう静かに呟くとフークはラフィアに話を聞かせ始めた。
はじめまして、HANA BEEと申します。小説を書くのは初めてなので皆さんにはこの話は面白いのやら。。。友人には恥ずかしくて聞けないのでぜひ感想をください。