発音がよかったので俺だけステータスオープンできた
人気のクラス召喚に挑戦します。
それは何の変哲もない、いつもの放課後に起こった。
俺たち二年A組の生徒は、突然クラスごと異世界に召喚された。
「我々は国に伝わる秘術によって君たちを……」
気がつくとどこかの城の広間だった。
俺達は呆然としながら、魔道士風の男の説明を聞いた。
話によると俺達は、それぞれ特殊な力を与えられ、魔王を倒すために呼び出されたのだという。
一通り話が終わると、王冠をかぶった王様らしき人物が仰々しく口を開いた。
「では早速だが、お主らの実力を確認したい。ステータスオープンと口にしてほしい」
なぜ英語なのか。
なぜオープンなのか。
意味がわからなかったが、とりあえず試しに口にすると、目の前に不思議な画面が現れた。
どうやらこれがステータスらしい。
周りの様子を伺うと、みんなステータスオープンと口にはしているが、何も変化はないようだった。
「なんということだ……。まさかみな、ステータスが開けないとは……。これでは話にならん、もうこの世界は終わりだ……」
「ああっ。お父様お気を確かに」
王様が頭を抱えだした。
どうやら俺以外、誰もステータスを開けることができないらしい。
場が混乱の様相を呈しだす。想定外の事態のようだ。
俺が余裕でステータスを開いているのに誰も気づいていなかった。
だが俺は目立つのは嫌いだから、自分から名乗り出たりはしない。
仕方なく何度かステータスを開け閉めしてチラチラしていると、やっと誰かが気づいた。
「あっ、ステータスが開いている!」
「わぁ、すごいわ!」
クラスメイトたちから一斉に注目が集まる。
参ったな、あまり目立ちたくはないというのに。
「一体、どうやったんだ?」
「いや、特別なことは何も……。俺としてはいつもどおり、スティラスオゥプンと言っただけだが」
「あっ、発音が違う!」
「そうか発音か!」
隠そうとしてもやはり気づかれてしまうものらしい。俺の発音の良さに。
こぞって皆真似をしだすが、本場米国仕込みの俺の発音には似ても似つかない。
結局誰一人ステータスを開けることはできなかった。
「おお、勇者よ」
そうこうしていると、王様が笑顔でこちらににじりよってきた。
どうやら俺が只者でないということに気づいたらしい。
「そんな、やめてください勇者だなんて」
「いや、お主こそが勇者じゃ。頼む、どうか力を貸してくれ。もはやお主だけが頼りなのじゃ」
「わかりました。俺がみんなの分も戦います。発音がいいんだから仕方ないですね」
「おおっ、やってくれるか。お主こそ真の勇者よ」
クラスメイトたちの歓声が上がった。
あちこちで俺を褒め称える声が聞こえる。
傍らにいた王女らしい美少女も、じっと熱い眼差しを俺の方に向けてくる。
ちょっと戸惑ったが、俺しかステータスを開けないんだからしょうがない。
なんせ発音がいいからな。発音がね。
「ではさっそく、お主のステータスを見せてくれ。さすればそれに見合った武具を与えよう。我々は全力でお主をサポートする」
「わかりました。では出来る限りのスポォートをお願いします」
王様のサポートの発音も素人丸出しだ。
それに被せる形でいい発音をしてしまって失礼かとも思ったが、自然に出てしまうのだから仕方がない。
「スティラス・オゥプン」
俺は渾身のステータスオープンを披露した。
あまりにも素晴らしい発音だったのでそれはもうすごい勢いでステータスが開いた。
わあっと再び周囲が沸き立ち、どこからともなく拍手が巻き起こる。
「素晴らしい。では少し失礼」
「ええどうぞ」
慇懃に頭を下げる王様に、俺は笑顔で答えて快くステータスを見せてやる。
王様は俺のステータスを覗き込んで言った。
「うわなにこいつ弱っ」
勢いで書くとこうなる。