序
わかりやすい主人公最強物を書いてみたくなったので始めてみました。
陰陽術の設定などはかなりオリジナル解釈が入ってますので、そういうものとして楽しんでいただければと思います。
――目を覚ますと、目の前には見知らぬ天井があった。
知らない天井だ、などとお馴染みのセリフを言うつもりはない。なぜならそんなことくらいは想定内だからだ。
次に自分の右手を見る。小さい、まるで赤子の手のようだった。
まず間違いなく見慣れた自分の手ではない。けれど、思った通りに動くこの手は、間違いなく自分の手なのだろう。
――けれど、そこにも驚きは感じない。なぜなら、それも想定内だったからだ。
『転生』、昨今では創作でよく見るようになった設定、それが今自分自身の身に起きた、そういうことだ。
これが物語の主人公なら、ここで慌てふためいたりもするのだろうが、生憎私はそうならなかった。
これはただ私が冷静な性格だとか、図太い性格だとか、そういう意味ではない。先程から言うように、全て想定内の事だからだ。
(そういえば、私は死んだんだったな・・・)
死因は病死だった。現代医学でも治せない病気というのは、やはりあるものなのだと改めて実感した。享年26歳、現代日本の感覚で言えば早すぎる死だった。
しかし、それは現代日本の感覚で言えばの話だ。例えば日本ももっと昔は人生50年なんて言われていた時代もある、そう考えればまぁまだ長生きしたほうだろう。
それに、そもそも私にとっては享年などというものに意味は無い
(前世と合わせればそろそろ110歳にはなるのだしな・・・)
そう、この『転生』という物自体、私にとってはすでに経験済みの事だった。今回は、3度めの生になる。
(ともあれ、やはり術式はまだ効果を失っていないみたいだな・・・望んだ事とはいえ、何時か死ねる時は、来るのだろうかな・・・)
――泰山府君祭、そう呼ばれる陰陽道の秘術によって、私は輪廻の輪から開放された。死した後生まれ変わる時、私だけはその記憶を保持したまま生まれ変わることになる。
前世の名は安部春秋、そしてさらにその前世の名は、――「安倍晴明」
天才と呼ばれた陰陽師の、第三の生が、今始まる――
1章は書き終わっているので、そこまでは連続で更新予定です