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次の日の朝、小学校に登校するために家をでると目の前の道を昨日知り合ったスカート姿の子が歩いていた。
「おはよう、北条さん」
「おー、おはよ。そっか、ここに越してきてたんだな」
僕たちの家族が引っ越してきたのは団地の一角にある一軒家だ。結構安く借りられたらしい。
北条さんもこの近所に住んでいるそうだ。
「今から登校するんだろ? 一緒にいこーぜ」
学校までの道のりは覚えているけど、慣れない道をひとりで歩くのは不安だったので北条さんに誘われたのは嬉しかった。
しばらく並んで話しながら歩いていると、北条さんがしきりに自分の服装を気にしているのに気づいた。
「……なあ」
「うん?」
「女装しないのな」
「僕が着られる女の子ものの服を持ってないからね。校長先生も学校に慣れてからでいいって」
近いうちに街に出てお買い物をしなきゃいけないだろう。僕がちょっとワクワクしてると、「なんでそんなに前向きなんだよ……」とため息をつかれた。
「由宇は、都会の普通の学校からきたんだろ? 正直キモくないか? オレみたいなのがスカート履いてるの」
言われてあらためて北条さんの姿を見る。
明るい色のスカートにショートカットがマッチしていて、どうみても活発な女子にしか見えない。よく似合ってるよ、と言うと北条さんは少し顔を赤くした。
「あのな、オレらは別に心まで女子になってるわけじゃねーから。あんまし変なこというなよ。あと呼び名、さんづけはやめろ。葵でいーよ」
「わかった。じゃあ葵くんで」
女子扱いすんな、と肩に軽くパンチされたので呼び名を変えることにした。しかしバッチリ着こなしているのに、葵くんは女装があまり好きではないようで、すこし不思議だ。
「スカート嫌いなの?」
「嫌いっつーか、ヒラヒラしてて動きづらいしな。外で遊ぶときも邪魔だし」
「でもホントに似合ってるし、可愛いよ」
「んなっ」
しまった。男子に可愛いって言うのは良くなかったかな。
葵くんは顔を真っ赤にさせている。怒らせてしまっただろうか。
「変なこと言うなっつっただろ! つーか知り合ったばっかのやつに、んなこと言うな! たらしかお前は!」
はて、「たらし」ってなんだろう。みたらし団子のことかな。
「僕は甘すぎないやつが好きだな」
「何の話だよ! ……オレも男に言われたぐらいでなにムキになってるんだ……」
結局その後、葵くんは学校に着くまでうんうんと唸っていたのだった。