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キーンコーンカーンコーン
「やっと終わったー。早くサッカーしにいこー」
「なーなー。今日はあやとりとおはじきどっちにする?」
「やっとお昼寝の時間……」
2時間目の授業が終わり、中休みのチャイムがなった途端クラスメイト達がわちゃわちゃと今日の遊びをどうするかとおしゃべりを始める。
気の早い子などは既に校庭の方へ駆け出していき、どうやらいつも通り男子と女子でそれぞれサッカーとあやとりをすることに決まったようだ。
転校してきたばかりの僕は早くクラスメイトの皆に馴染めるようにと、男女の隔てなく色んなグループに混ぜて遊ばせてもらってる。
今日はどちらに参加しようか……と、うんうん悩んでいると隣の席の子に話しかけられた。
「ねえねえ塔屋くん、今日はわたしたちとあやとりしよっ?」
僕の席のお隣さんである豊橋さんは端的に言って、とてつもなくかわいい。
ふわふわとした長い髪にパッチリとした目はお人形さんのようで、東京の学校にいた頃もたくさん可愛い子はいたけど、それでも豊橋さんほど愛くるしくて抱き締めたくなるような女の子はいなかった。
「ええと、昨日も豊橋さんたちとのあやとりに混ぜてもらったけど、いいの?」
「うんっ、塔屋くんなら大歓迎だよ!」
ぱあっと、まるで花が満開になるような笑顔を見せる豊橋さん。
うん、2日連続になるけど豊橋さんたちと遊ぶことにしよう。
決して豊橋さんの笑顔に釣られたわけではないけど。
……考えてみたら豊橋さんと知り合ってから、彼女の微笑みを前にして提案を断れた試しが無い気がする。
優しい豊橋さんは明日も誘ってくれるだろうけど、飛鳥くんたちとも遊びたいし明日こそは外でサッカーを―――
「ちょっとまって塔屋くん」
後ろからがしっと肩を掴まれて振り向くと、誰であろう今思い浮かべていた飛鳥くんの姿があった。
飛鳥くんは僕が嫉妬しちゃうくらい凛々しくてキリッとした顔立ちをしていて、サッカーを始めとした球技全般がとても得意な上、テストではいつも満点というちょっと卑怯なくらい完璧な子だ。
「塔屋くん、君は昨日も豊橋たちと一緒に遊んでいたよね。今日はボクたちと一緒に外に行かないかい?」
「む、アスカには残念だけど、塔屋くんは私たちと遊ぶの!」
「豊橋さん、飛鳥さ……飛鳥くん、ええと、ちょっと待って」
唐突に始まってしまった豊橋さんと飛鳥くんの言い合いになんとか介入しようとするが、気づけば左右それぞれの腕を二人に絡め取られ現代の大岡裁き状態になっていた。
「塔屋くんはわたしたち『男子』とあやとりするの!」
右腕を可愛らしい男の子に。
「いや、ボクたち『女子』とサッカーするべきだ」
左腕を凛々しい女の子に引かれながら、僕は一人ゴチるのであった。
「二人とも、中休み終わっちゃうよ……」