妄想数学少女
勢いとノリで書いた。
後悔はしていないが反省はしている。
「はじめ!」
二人きりの教室に先生の号令が響く。
わたしは今、数学の小テストの再試験を受けさせられていた。
[1]1辺が5mの正方形ABCDの上を点P、Q、Rがそれぞれ1m/秒、2m/秒、3m/秒で動いている。点Pが点Cから、点Qが点Bから、点Rが点Aから動く時、点P、Q、Rが重なるのは何秒後か答えなさい。
ふむ。
一体なぜ点が動くのだろうか。
わたし的に点が動くのはおかしいことだと思う。現に今私は問題用紙に点を打ってみたわけだが、点は一向に動く素振りを見せない。
ここは動く物を変えてみようと思う。
例えばR君が好きなPちゃん、Pちゃんが好きなQ君、Q君が好きなR君が1辺5mの正方形の上でそれぞれを追いかけている。と考えれば納得がいくのではないだろうか。
わたしが笛を吹くごとに、それぞれ1m、2m、3m動いて貰えばちょうどよさそうだ。
さて、それではいってみよう。
ピィッ! と笛の音が鳴り響く。
それぞれの距離が近づいた。――いや、PちゃんとR君の間隔は広がっている。Pちゃんは心なしか寂しそうだ。
再び笛が鳴く。
それぞれの間隔がさらに狭まった。
ここに来てPちゃんが、後ろから迫ってくるQ君に対して明らかに嫌そうな態度を示し出した。
それぞれの主張はこうだ。
「Pちゃん、好きだ!」と言うQ君。
それに対して「嫌っ!! こないで!!」と嫌がるPちゃん。
「Q君、僕の愛を受け止めてくれ!!」とQ君に迫るR君。でゅふふ――っといけない。
それぞれの主張を聞きはしたが、これも問題を解くため、Pちゃんには悪いが笛を吹かせてもらう。
再び距離が縮まる3人。その時、事件は起こった。
Q君との距離が縮まったPちゃん。何を思ったのか突然の正方形の枠から外れ、Q君から逃げ出した。当然のようにそれを追いかけるQ君。そして少し遅れて出るR君だが、さすが陸上部。持ち前の脚でみるみる追いかけていく。
――ていうかまって! 問題の答えがわからなくなるじゃない!!
「嫌ぁぁぁぁぁああ!!」
「Pちゃん待って〜!」
「Q君と追いかけっこ……。青春の汗……。ふふふ」
現場は阿鼻叫喚の図となった。もうこれでは問題の解答どころではない、なんとかこの状況を解決しなければ。
と思っていたら、Q君はR君に捕まったらしい。わたしの陰に隠れて怯えているPちゃんがとてもかわいらしい。
「Q君捕まえたっ!」
「まて、おちつけR。何をする気だ」
「何って……ナニだよ。ハッハッハッ」
「おいバカやめ……アッー!!」
R攻めQ受け……おっと鼻血が。
そんなことを考えているわたしと、腐腐腐な展開のQ君とR君のことをPちゃんは軽蔑したような白い目で見つめてくる。
やめて、そんな目をしないで。
「はい、そこまで」
――え?
どうやらそんなこんなをあれこれ考えていたら、時間がきたらしい。もちろん目の前にあるのは白紙の答案用紙。
――ああ、またダメだったよ。