7 外界旅行 女神との出会い。昔の思い出。
お待たせいたしました!
ブックマークが増えてニヤつきが止まりません。
どうぞお楽しみ下さい!
初の実戦授業から数日が経ち、ついに外界旅行の日になった。
勿論、里の約束事を破りかけたミリオス先生は学園長と爺さん(長老)に散々怒られたが、旅行先がヴェストグロウだったため、危険度が低いということで不問になった。
ちなみにこの里は、ヴェストグロウから東にちょっと行ったところにある空間魔法がかかっていて高い魔力を持つ者で無ければ抜け出せないと言われる魔の森にある。里へ入る鍵は竜魔法になっているので、存在は伝説や幻想、お伽話のような里になっているらしい。
とまぁ、安全地帯の魔の森からさらに人間の住む東の大陸とは真逆の西端にあるヴェストグロウに行くので、問題はないだろうということだった。
「カイトー、早く行こ!」
ベルはいつもの白いワンピースに薄いピンクのサンダルを履いている。サンダルで歩くとか大丈夫なのか?サラさん、しっかりしてくれよ・・・・・。
「・・・・・分かった、分かったから。だから急かすな。」
俺はマウリッツさんに作ってもらったインナーとズボンを着る。靴は爺さんから貰ったブーツを履いた。なんと、爺さんからもらったブーツは術式が刻んであり、魔力を流すと動きが軽くなったり、空を蹴ったり出来る魔法靴だ。
どうして爺さんがそんな物を持っていて、それを俺にくれたかというと、魔素災害で起こった戦争時に爺さんが倒した国家騎士の遺品だそうだが、爺さん自身、靴を履く趣味など無いと言い、物置に眠っていたのを最近思い出したそうだ。
使っていないので俺にくれたと言うわけだ。
・・・・・呪われてなきゃいいけどな。
魔法靴を履いた後、マウリッツさんの力作であり、俺の中二心を擽るコートを羽織った。暗めの白いファーに白銀の生地、背中には複雑な魔法陣が刻まれている。この魔方陣は温度調節、強度変更ができ、竜化することが出来る。
つまり、俺が竜化するための魔力をコートに流すと、コートが鱗を纏うことになる。全く、どこまで中二病全開なんだか。
兎も角、ベルをいつまでも待たせるわけにもいかないので、おまけでマウリッツさんに貰ったバッグに荷物を詰める。バッグには俺が空間魔法をかけてあるので、容量などほぼ無制限だ。取り出すのが面倒だが。
荷物を入れ終わったバッグを肩に掛け、ベルと一緒にミリオスと待ち合わせた里の入り口へ向かった。
「やっときたか、さっさと行くぞ。」
俺たちが着くとミリオスが急かし、竜魔法を使って森へ出た。
森は特に深くもなく、道もちゃんとあったが、モンスターが居た。俺は初めてのモンスターに興奮しながらも、ミリオスに聞いた。
「ミリオスさん、殺っちゃっていいですかね?」
「カイト、お前、セリフだけ聞いたら危ない奴だぞ?」
「初めてのモンスターでドキドキしてるんですよ!」
・・・・あ、そういや人間の時に会ってるか。でもそんときは死なないように逃げるのに必死だったからなぁ。
「まぁ練習ついでだ、やって来い。っとあいつは・・・・・下級オーガだな、いきなり強い奴だが大丈夫か?何なら俺も・・・・」
「結構です!」
・・・・あ、フラグ立ってないよな?
そう思いながらも下級オーガの方へ駆け出した。ってか下級か。亜人(獣人や人間と獣人のハーフ。竜人族、エルフ、ドワーフ等)やモンスターには下級、中級、上級とあり、亜人は中級以上が知性や理性があり、モンスターは上級が知性や理性があると授業で言っていた。下級亜人ってなんぞ?と思ったが、爺さんに聞いたところ、亜人の姿をしたモンスターらしいが、魔素災害の後は中級以上の亜人しか存在していないそうだ。本能に従順な下級亜人は、魔素災害で出た異常な魔力を自分の力にしようとして自爆したらしい。馬鹿なのかと思ったが、奴らには知性がない。
まぁとにかく、俺の目の前に居るのは下級モンスターのオーガ。俺が向かっているのに気づくと、4メートルはある巨体を信じられない程の速さで動かし、左手に持っていた棍棒を・・・・・投げつけてきた。
「投げんのかよ!」
まぁ、化け物ステータスである俺は必要最低限の移動で避けた。しかし棍棒を止めたわけではないので後ろに吹っ飛んでった。
「きゃあああああああ!」
響くベルの悲鳴。後ろを見るとベルに向かって棍棒が吹っ飛んでいく。ベルは、いきなりの出来事に腰を抜かして動けないでいたので悲鳴を上げることしか出来なかったようだ。
「しまっ・・・・ベル!」
俺は急いで空間魔法を使ってベルの側へ行こうとした時だった。
「ったく、そうなると思ったから俺も行くかと言ったんだ。」
呆れ顔で出てきたミリオスさんは飛んでくる棍棒を片手で掴むと”俺”の方へ投げ返した。
「化け物かよ!てか何で俺狙うんですか!」
「お前に言われたくないな。・・・・いや、ちょっとした罰だ。だが、どうせ避けれるんだろう?」
「分かってるなら俺に投げないでくださいよ。」
俺は飛んでくる棍棒を殴り、地面に軽く叩きつけた後、オーガに向かって右フックをお見舞いした。
バシュ!!!
爽快な音とともに、フックを受けたオーガの頭は爆ぜた。
「なんでっ!?」
思わず俺は声をあげてしまった。竜化どころか、魔力さえも込めてない一撃でオーガの頭が爆ぜてしまったからだ。
「ふっ、化け物め。」
なんでだろう、さっきまでからかい合ってたのに・・・・。すごい心が痛い。
「すごい!すごいよ、カイト!」
あぁ、ベルが天使に見える。
「まぁ、力加減を間違えないようにな。俺はあのオーガみたいになりたくない。」
「そんな事しませんて!」
・・・あれ?でもミリオスさんに一撃当てた時、倒れもしなかったよな?あの人マジで化け物じゃねぇか・・・・。
「まぁいい、行くぞ。日が落ちるとモンスターが活発に動き出すからな。歩いて数分でヴェストグロウに着けるはずだから心配は要らないが、今日も店を見たいなら急ぐんだな。」
「服屋!服屋に行こカイト!さぁ行こ!」
ベルは竜化で翼を生やした。
・・・いや、飛んで移動するんですかベルさん?
「何やってるんだカイト?さっさと翼を出せ。さっさと行くぞ。」
「・・・・えっ?あっ、あ、はい。」
俺は竜化で翼を生やすと2人に続いた。
そういや、空飛ぶの初めてだな。すぐに飛べたけど案外簡単なもんだな。・・・・でもさ、
「歩いて数分って言いましたよねええええええええええ?」
翼を出してすぐに行ってしまった2人を追いかけながら叫んだ。
「とうちゃ―く!」
「うむ、久々だが変わらんなぁ。」
「うぅ、多分酔った。」
ベル、ミリオスさん、俺の順に声をあげる。俺はというと、初めての飛行で調子に乗って回転したりしていた結果、目が回って酔った。
俺は2人と宿を取るために移動した。宿に着くと、部屋を3つ取ろうとしたが、あいにくと3人部屋しか残っていなかったので、宿は3人部屋になった。
「カイト!服屋行こ、服屋!」
「悪い、酔ったから寝るわ。ミリオスさんと行ってきてくれ。」
「しょうが無いなぁ、ミリオスさん行こー。」
「そうだな、俺も行きたいところがある。それとカイト、1人で外出するなよ?ここは冗談抜きで広いからな。迷子になっても知らんぞ。」
「こんな状態じゃ無理ですよ、大丈夫です。」
「そうか、それじゃあ行ってくるぞ。」
「いってきまーす!」
「あいさー。」
2人は部屋を出て行った。俺は気分が悪かったのですぐに寝た。
--------------------------
「戒斗!何やってんだ!いくぞー!」
「・・・・・え?あ、あぁ、待ってくれ日高。」
なんとなく返事をしたが、気が付くと京都にいた。中学の友達、日高光樹に呼ばれていた。
俺は日高について行くと、同級生2人が居た。俺を含め4人で中学時代は過ごしていた。
・・・・・そうだ、これは修学旅行だ。明晰夢ってやつかな。よりによってこの思い出かよ。”あれ”の前に終わってくれりゃいいんだが。
「戒くん、遅いよー!何してたの?」
「悪い、夏樹。ちょっとな。」
俺に声をかけてきたのは柏原夏樹。小さい頃から近所の腐れ縁だ。
「柏原。こいつ、道に迷ってやがったんだぜ。」
「えっ、戒くん迷子だったの?でも日高くんだめだよ、馬鹿にしちゃ。」
「でた夏樹ママ。馬鹿にしてませんよー?説教は要らないであります。」
「もう、またからかって!」
「ほらほら、いい加減にしなさい。行くよ3人とも、だんだん集合時間なんだから。」
2人のからかい合いを止めさせたのは狭山亜依だ。日高の彼女。
狭山に言われて俺たちは集合場所である清水寺に向かった。
向こうでバスに乗ると、宿に向かう。
「ねね、戒くん。夜間外出あるでしょ?ちょっと話があるんだー。」
「俺も言いたいことがある。」
「そ、そっか。じゃあ夜に宿の玄関でね。」
「おう。」
俺は夏樹と約束を交わすと、丁度宿についた。俺は日高と温泉に入った後、夜間外出のための許可を取って、玄関で夏樹を待った。
「さぁ戒くん、行こうではありませんか!」
「妙に張り切ってるな。」
夢の癖に、夏樹からは風呂あがりのシャンプーなどのいい匂いがした。
・・・・そう、この後俺は夏樹に告白する予定”だった”。
俺と夏樹は夜の商店街を歩く。俺は軽く買い物を済ませた後に、帰り道で告白する予定だった。
「あ!戒くん、ちょっと待ってて。買い忘れたものがある!」
そう、たまたまだったんだ。夏樹の生理用品が切れていなければこんなことには。
「いや、一応1人じゃ危ないし俺も行くよ。」
そうだ、俺!ついて行け、絶対夏樹から離れるな!
「えっと・・・・ほら、あれを買うんだよ。女の子の物だよ。」
それがどうした!ついていけよ俺!
「あ・・・・いや、えっとすまん。分かった、気をつけてな。」
何やってんだ!ついていけ!取り返しがつかなくなるぞ。行くな、行くな夏樹!
「ごめん、すぐ戻るから!」
夏樹いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!
「あぁ!!・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、ふぅ。」
ったく、何て夢だ。
既に夜になっていて、俺の身体は汗でびっしょりになっていた。あの後、夏樹が帰ってくることは無かった。夏樹は買い物をした帰りに、たまたま通り魔に襲われた。性的暴行をされたわけではないが、遺体はバラバラになっていたそうだ。犯人は捕まったが、俺のモヤモヤは晴れなかった。日高と狭山は俺のことをずっと気にかけてくれていたが、高校に進学してからは音信不通だった。
そもそも、馬鹿な俺がエリートの中に入ったのはツテがあったからだけではない。そもそも勉強についていくことが出来ないことくらい一目瞭然だ。
俺がツテで入ったというよりはツテで入らされたというのが本当のことである。夏樹が殺されてから抜け殻同然のように過ごした俺は勉強も手につかず、酷い有様だった。青春というものが嫌になった。俺は大切な人を失うのがこれほどまでの精神的な苦痛となるとは思わなかった。大切な人を失うのが怖くなり、そもそも大切な仲の良い人を作らなければいいじゃないかと思った俺は中学時代の友達が一切いないエリート校にツテで入学した。俺はその記憶をわざと忘れていた。覚えていると、どうしても夏樹が頭から離れないからだ。あの時こうしていれば・・・。なんて事を何度思ったことか。
しかし、全てさっきの夢のせいで思い出してしまった。
心臓がうるさく、すごい速さで脈を打っている。
頭が痛い。
吐き気もする。
何より心が痛い。
「・・・・・・・・夏樹。」
俺は、そう呟き、ベッドを出ようとした。すると袖口の辺りが引っ張られた。
「ベル?」
俺は思わず声に出してしまったが、隣にはベルが俺の袖口を掴みながら寝息を立てていた。
ベルの頭を軽く撫でると、起こさないように手を袖口から離す。
はだけた服を直してやり、俺は外に出た。
宿のそばに大きな木があったので、俺はそこにもたれかかると、空を見上げた。そこには地球と変わらぬ月が光り輝いていた。
「はぁ。この力を前の世界で持っていたらな。・・・・なんでっ、あ゛んで今なんだよ゛っ!!うぅ・・・ぐぅぅぅ。」
必死に泣き声を殺しながら涙を流した。勿論、人生なんてそんな上手くいかない。あそこで助かっていても別のところで死んでいたかもしれない。
でも、でも俺は夏樹が好きだったのに、思いを伝える前に消えてしまった。
「・・・・寝ればまた夏樹に会えるかな。」
そう思った俺は木に背を預け、目を瞑った。
「・・・・なんだ?また明晰夢か?」
俺は何もない真っ白い空間にいた。しかし、感覚も冴え、つねっても目覚めることはない。
「やっと会えました!」
「ふぇっ!?」
いきなり声をかけられ、驚いた俺は変な声をあげたあと、声のする方を向いた。
すると、そこには眩しいほどの白銀色の長い髪をした美しい女性が立っていた。
「なんだ、女神か。」
なんとなく呟いてみた。ラノベでこんなシーン見たことあるし。てかもう何が起きても動じない。俺はもう死んで生き返って、さらに異世界にまで転移してるからな!
「なっ・・・・なんだってなんですか!そうですよー、私が女神ですよーだ。」
何この女神、可愛い。
「で、女神さんは俺に何の用ですか?」
「えっとねぇ、私ってこう見えて元々創造神だったのよ?この世界の唯一の神だったの!でもねでもね、なんかつい最近、別の世界から変な干渉があってね。その別の世界から来た人間が干渉にまぎれて私の神界に入ってきたの。そしたら!私追い出されちゃったの―。」
「あんた女神だろ、神の力とか無いのかよ。」
「その言い方ひどー!あの子何でかしらないけど私の上回る権限持ってたのよ!ひどくない!?その子チートとか言って騒いでたけど何なのチートって!酷いわよ!私の権限返してよ!」
「で、結局何がしたいんですか?何で俺なんですか?」
「そんなに軽くあしらわないでよー!それでね、神の力を手に入れちゃったその子は私が神界を消したから一緒に消えたんだけどね、あの子この世界に神託送っちゃったのよ。」
「消したんすか!その子消えちゃったんすか!」
「しょうが無いじゃない。あの子はどうでもいいのよ。でもね、その信託が魔素災害で起こった戦争の続きだったのよー!有る事無い事言った挙句に再戦争よ!?私じゃどうにも出来ないのよ!もおおおおおおお!」
「・・・・・俺、何万との軍勢相手になんかしたくないですよ?」
「戦争したいと思ってる人なんてごく僅かよ。今は亜人と仲良くしたいと思ってる人が殆どなの。でも、ほら、人間の方の国王がその殆どから外れてるせいで未だに続いてるの。簡単にいえば国をどうにかすれば解決なのよ。」
「俺に国王を殺せと?」
「違うわよー、そんなことしたら壊滅よ。帝国もあなたに牙を向くわ。貴方は亜人なのだから、ギルドで上手くやって国王に謁見する権限を手に入れて亜人代表として話を解決して欲しいの。」
「長くなりそうだな―。てか俺元召喚者だぞ?」
「そんな事誰が信じるのよ。」
「・・・・・ですよね。」
「まぁそんなところよ。貴方がこの世界で最強のステータスを持っているからお願いしたのよ、かなり無理を言ってるけど、その代わり願いならなんでも1つだけ叶えてあげる。」
「願いか。・・・・・夏樹、夏樹を、前の世界に居た夏樹を此処に呼び出すことは出来ないのか?もう死んでるんだけど・・・。」
「夏樹?・・・・・あぁ!あの子ね!バラバラに殺されちゃった子!あの子告白する前に殺されちゃったのよねぇ、可愛そうだから随分前に転生させてあげちゃったけど。ここに呼び出す?」
「・・・・転生!?夏樹は生きてるのか!?」
「まぁ前世の記憶を持ったまま生きてるわよ、人間じゃないけど。・・・っと、でもあれよ?呼び出しても願いってほど願いにならないわよ?そばにいるし。」
「そばだって?・・・・誰だ!誰が夏樹何だ!」
「ちょっ、怖いわよ!落ち着きなさい、貴方の側にいる竜人の子よ。」
「ベル・・・・なのか?ベルが夏樹なのか!?」
「そうよ、ほら、願いはどうするの?」
「っと、そうだった。俺と夏樹を元の世界に戻してく・・・」
「無理!」
「ですよね。じゃあ治癒魔法下さい。最強の、死者蘇生も出来るように。」
・・・・もう誰も失わないために。
「それくらいならお安いご用よ。・・・っとほら、もう使えるようにしたわ。私に会いたいときは貴方の使えるテレポートでここ念じてくれれば会えるわよ―。夏樹ちゃんとも話がしたいから今度連れてきてね!・・・・その頃にはもう、ウフフ、良かったわねぇ、夏樹ちゃん。ウフフフフ」
・・・・なんか自分の世界に入っちまった。
「とりあえず女神さんよ、元の世界に戻しておくんなまし。」
「はいはいーっ。じゃ、またね!夏樹ちゃんによろしくっ!」
眩しい光で目が眩み、目を開けると、寝たはずの木のそばに立っていた。
俺は急いでベルの元へ向かった。口元がニヤついているのが分かる。涙も止まらない。勢い良く宿の玄関に入ったところで女将さんに怒鳴られたが、軽く謝ると、部屋に走っていった。勿論、頭の中は夏樹一色だ。
戒斗「次回ついにっ!」
日高「夏樹に告白だな。」
戒斗「俺のセリフ取るなよ。」
日高「アハハハハ。」
戒斗「でもさ日高、お前もう登場しねぇよな。この流れ。」
日高「ふっ、それはどうかな?」
戒斗「よもやレヴォルトとか言うなよ?」
日高「どうだろうな。」
夏樹「ずるいよ、2人だけで仲良く話して!」
亜依「ほらほら、ふたりとも、夏樹を入れてあげなさいよ。」
日高「亜依ママ来たー!ママ!おっぱグボェ!」
亜依「殴るわよ?」
日高「殴った後に言うなよ。」
次回はもしかしたら何時もより早くUP出来るかもです。
ではまた!